やる気、体の芯からの。
自宅療養47日目。7:15起床。炭水化物ばかりの生活が続いているせいか、体が重く、調子が出ない。おそらく体重も増えているだろう。入院生活でリセットされて喜んだのもつかぬ間。節制しなければ。人生は常に小さな二択の連続だ。歳をとると選択するのが億劫になる。体の各機能も悪くなり、脳も劣化して、社会からズレていく。加齢とは何だろうと思う日々。そんなに強く絶望しているわけではないが、加齢に対してもっと前向きなトピックがほしい。
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今日は役所まで外出。前回はタクシーだったが、今回は電車で行く。杖が1本になったことで片手が空き、転倒のリスクも減った。恐怖感は多少あるがこれもリハビリの一環。気を引き締めて向かう。
人混みにうんざりしながらも何とかたどり着いた。帰り際突然の豪雨。天気予報だと2時間後からの雨だったので、時間を合わせて行ったのだが残念。健常時だったらクソっ!とか舌打ちでもしてそうだが、松葉杖なのでどうにもならず。しょうがないかーと諦めがつく。タクシーで帰宅。
今日の外出でわかったのは、駅のホームから改札までエスカレーターがないと詰むこと。駅の階段は段数が多いのと、人が多いため、波を止めてゆっくり登ることに罪悪感があること。エスカレーターですぐ後ろに人が並ぶと、降りるときに少しもたついたときに迷惑がかかるから、人が少なくなるまで待ってから乗らないとプレッシャーになること。などなど、あらためてわかった事がたくさんあった。
車椅子や妊婦さん、体が不自由な方々の外出は、また別のプレッシャーもあると思う。とにかく自分の怪我が治ったら、そういう方々に敏感に反応し、何か助けられることがあれば、その大小を問わず積極的に手助けしていこうと決める。
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『キッチンで読むビジネスのはなし』(一田憲子)より、北欧暮らしの道具店、佐藤友子さんとの対談より。
この本は「11人の社長に聞いた仕事とお金のこと」というサブタイトルがついている。物作りをしている方やお店を開いている方を中心としている。「ビジネス」という言葉がこそばゆい規模の社長さんたちは、みな楽しそうに語っている。
自分らしく楽しく働いて充実すること。それはある意味理想に過ぎない。でもそれを叶えている人は社会にどれだけいるのだろう。意外と多いかも知れない。ならば自分でもやってみようか。すぐにはできなくとも、その気持ちの明かりは一日中灯していよう。そんなふうに思わせる優しい対談集。
「体の芯からのやる気」。自分はそう思えたときってあるかな?記憶を辿る。小さなやる気なら軽い記憶がよみがえってくるが、体の芯からとなるとなぁ、、、なかなか思い浮かばない。これを書きながらダラダラと煙草を吸って記憶を辿る。しばらくして30年前が浮かんできた。18歳の頃。初めての一人暮らし。
高卒で就職し、そのタイミングで一人暮らしを始めた。6畳二間の木造アパートに4人、ときには5人で暮らし、エアコンも無く、暴力に怯えながら押入れで寝ていた身としては、本当に天国だと思った。自分だけの小さなアパート。誰にも侵害されずにいれる場所。
勤めていた会社の先輩にすこぶるカッコいい人がいた。ひょんなことから可愛がってもらい、夢中になった。いつもついて回って、社内でも有名になるほど、露骨に付きまとった。当時の自分は高卒の18歳。同期は大卒や専門卒で、高卒は僕一人だけ。だからマスコット的に、こいつは若いからねー、と色んなことを免除してもらってたと思う。
その先輩Nさんは芸術関係に異様に詳しく、文学、音楽、映画、アート、各ジャンルを網羅していた。僕はその頃ただの18歳で特に興味があるものもなく、毒家庭育ちで何も知らず、何も持ち合わせてなかった。
そんなカラカラのスポンジみたいな存在だから、一気に吸収した。Nさんみたいにカッコいい男性になりたくて、真似しまくった。その結果、芸術の素晴らしさを心から感じることができた。ああ世界は素晴らしい!と心から思えた。ある意味生まれなおしたのだろう。
そうなると自分でもやってみたくなる。見よう見まねで描き始めた。下手くそで誰にも褒めてもらえないたくさんの絵を。当時夢中になっていたポップアート、コンセプチュアルアートの模倣だ。特に横尾忠則が好きで何度も画集をめくっていた。
夜から朝にかけてひたすら描いていた。R.E.Mやコステロの音楽を聴きながら、間違いなく世界の中心にいた。
しばらくすると人に見てほしくなり、近くの喫茶店に飾ってくれとお願いしにいったり、公募展に出したりしたが、全く相手にされず、落選続きだった。あっけなく挫折したが、でも少しでも人にみてほしい気持ちもあった。
そこで思いついたのが、ベランダに絵を飾ることだった。ベランダを覆うような特大の作品を描いて、道ゆく人に見てもらおうとしたのだ。当時住んでいたのは駅近の道路沿い。区役所の真向かいで人の流れが相当あった。道路に面した4Fは絶好のキャンバスだった。
キャンバスを張り合わせてフックを付けそれを物干し竿にかける。ロープを通してブロックを重しにして飛ばないようにする。それでも心配だったので、物干し竿を紐で固定し、フックと竿も固定して、台風がきても飛ばないくらいガッチリと止める。
雨が降るまでの3日間。道ゆく人へのささやかな個展。たった一枚の。今から思えば何て幼く拙いことだろう。しかしあの時の自分は心の底から夢中になっていた。体の芯から、一直線にやる気が出た。とにかく描き上げる、そして多くの人に見てもらう。ただそれだけのために。
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加齢によって、知らぬ間に自分が変わってしまうこと。それを恐れる。過去の自分を思い出し、その時々の行動や感情、空気感を追体験するこは、加齢への反抗になるのだろうか。せめて心は、感情は、劣化してほしくない。ただその一点だ。
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