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NHK改革の失敗

銀行出身の経営者が会長となってNHKでは今かなり大掛かりな改革が進められているようだ。何のための改革か、1つだけはっきりしているのは、50代を中心とする年齢の者を現場での活躍から引き離し最終的にはリストラさせる方向に持っていこうとしているらしい。若返りか?なぜ?簡単に言えばNHKのサイズダウンを狙っているようだ。どうしてそんなことをするのか?
今の日本経済の低迷の中で、NHKもそのレベルに引き落としていこうと言う「国民感情」からということか?コストを落とし、できれば受信料を落としてウケを得るか、デジタル領域に展開する資金と了解を得たいというところか。

一方、放送、報道などの内容自体に関しては何を目指そうとしてるのか。一言で言えば、視聴者の皆様に役立っているのだと言うことを見せつけようとしているらしい。番組の中での自社宣伝も目立つようになった。しかし、ジャーナリズムのことも放送のこともわからない会長であるから、新しい番組を!とか言う位で具体的なイメージが伴っていないようだ。

現在進められている組織改革は、ひとりひとりの職人的な個性からの発想を潰し、経営(といっても利益を生み出せない公共放送にどんな経営があるというのだろうか?今回のように「思いつき自由の検証しようのない発想」くらいしかNHKには経営領域などないであろうに)のトップ指導集団と放送内容を管理チェックする管理集団とその下で放送を作る労働者集団と言う3層の組織構造に編成しようとしていると聞く。しかし、ジャーナリズムと言うものは、社会に対する批判性を失ったらジャーナリズムではないわけであり、その批判性は、職人的な個々の発想からまずは生まれるてくるのだ。そしてその個々がときには連帯したり組織化して力を出していくというのがジャーナリズムを成り立たせる原理なのだ。合理的無駄のない分業で職人を無くした組織は、ジャーナリズムと最も縁が遠い。
今回のNHK改革では、そのジャーナリズム原理が崩壊させられる。極めて普通の会社の原理が完結するのである。ジャーナリズムでない企業でも製造業など自身の足元から価値を作り出してゆく企業は、現場を持ち、職人、研究者をどう育て、活かすかが会社の成長の帰趨を決める。最も、現場を切り離された下請けに任せることに慣れている企業は、そうした思考がそもそもないのかもしれない。今の会長も銀行上がり。「現場」を持たなかった者に現場をどう扱うかという知恵はないだろう。

NHKは今後も報道し、コンテンツを作り続けるであろう。しかしそれはジャーナリズムの匂いを薄めた単なる消費物になるだろう。会長と一緒に政府も喜ぶのかもしれない。
すでにNHKニュースは、ネットで2日前に見たようなものばかりがラインアップに並ぶようになり、その事件の背景はどうなっているのだという一番の興味を押さえることもできていないような内容が多い。

会長は「消費されるコンテンツ」のどこが悪いのだとうそぶくかもしれない。
経済の中でしか思考した経験がない者に対しては今更言う言葉も無いのである。

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