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魔女のハーブは、あんまり甘くない

<あらすじ>

港町に住む16歳の少女アカリは、<ハーブ&魔女の店>を営んでいた。そして最近、港の空にかかる美しい虹を見て、アカリは、これは魔女が創る奇跡と信じていた。すると、ある日、リサという美女が店を訪れる。
アカリは、リサが魔女と思い尋ねてみると、リサは自分が魔女であると答える。アカリは喜ぶが、リサはもうすぐ魔女を引退する気だと告げる。
ならば、アカリは自分が魔女になり奇跡の虹をかけてみせると伝えると、リサは<魔女のきまり>という本をアカリに渡す。
これを3ヶ月以内にマスターすれば、魔女になれるというのだ。
こうして、アカリの魔女になるための修行の日々が始まる。
だが、1ヶ月後、海のはるか向こうから、セーラという、もう一人の魔女が現れる。
セーラが教えてくれた言葉に、アカリはがくぜんとするが、やがて一番大切なものはなにかをアカリは気づき始める。

エピソード 1 奇跡の虹

○おしゃれなストリート
おしゃれな雰囲気のストリートの奥に、小さく可愛らしいお店が見える。
<ハーブ&魔女の店>とレトロな看板が掲げてある。
ショーウィンドウには、たくさんのハーブの瓶と魔女の人形と本がならんでいる。
中には、女性が座っているのが見える。

○お店の中
カウンターに、若い女性が一人。
小さな厨房に、若い女性がもう一人。

ユイ「すっぱああああい!」

アカリ「(厨房から)え、ユイちゃん、どうかしたの?」

ユイ「アカリ。だから、このハーブティー、すっぱいって!」

アカリ「(すまし顔で)そうかなあ、すっごい美味しいけど。なんせ、当店オリジナルのハーブティーですから」

ユイ「(困惑顔で)アカリ、あんた、どーゆー舌をしてんのよ?」

アカリ「でも、香りは、いいでしょ?」

ユイ「ま、まあ、香りはいいけど・・」

アカリ「(ドヤ顔で)ね、このあんまり甘くないのが、いいんだから」

ユイ「(苦笑い)っていうか、すっぱいんだって・・。 あれ?」
ユイ、窓の外を見て驚く。

ユイ「アカリ、出たよ!」

アカリ「?」

ユイ「ほら、あの虹!」

アカリ、窓の外を見る。
港の空に、大きな虹がかかっていた。

アカリ「(おどろいて)わあ、すごい!」
アカリ、厨房から出て、ユイと並んで外を見る。

アカリ「今年に入って、もう3度目だよ!」

アカリ「あれは、きっと魔女が創った虹だよ」

ユイ「え、魔女?」

アカリ「うん、ほら」

アカリ、奥の本棚から<魔女の奇跡>とタイトルされた本を取り出してくると、ユイに広げて見せる。
魔女が創りだしたとされる、さまざまな奇跡がズラリと描かれている。

ユイ「(苦笑い)ん〜。だけど、魔女とは、関係ないんじゃない?」

アカリ「(首をふって)ううん、ゼッタイ魔女の奇跡だよ、あれは」
アカリ、ページをめくり本に夢中。

ユイ「(見回して)・・にしても」

ユイ「いったい、このお店、何冊の魔女の本が置いてあるの?」

アカリ「(苦笑い)いや、自分でも数えたことないな・・」

アカリ、指でほっぺたをかく。

ユイ「(両手を広げて)やれやれ」

壁の時計が3時をさす。
それと同時に、 店の扉が鈴の音を立ててゆっくり開く。
二人とも、扉の方を見る。
女性が立っている。
アカリ、ハッとした表情。

女性「こんにちは」

アカリ「いらっしゃい・・ませ」

アカリ、なぜか、かたまる。
ユイ、(?)と不思議な表情。

女性「(目をつむって)とっても、いい香りがするんですね、このお店」

アカリ「(ややつまって)は、はい」

女性「(目を開いて)魔女の本やグッズも、こんなにたくさん・・。ああ、このハーブティーをいただけます?」

女性、メニューに目を通しながら言う。

アカリ「は、はい、かしこまりました」
アカリ、ぎこちなく厨房へもどる。
女性、ユイの隣に座る。

ユイ「(小声で)すっげえ美人・・」

アカリ、指先が震えながらハーブティーを入れる。
ユイ、不安な表情で、アカリと女性を交互に見る。
壁の時計が、3時5分をさす。

アカリ「おまたせいたしました」

アカリ、ハーブティーを女性の前におく。
女性、一度、匂いを嗅いで小さく微笑む。
やがて、 ティーカップを持ち、ゆっくりと口に運ぶ。
アカリとユイの緊張の視線。

女性「(笑顔で)まあ、おいしい。あんまり甘くないんですね。私、こういうの大好き」

アカリ「ほ、本当ですか、ありがとうございます」
女性、幸せそうに、一気にのみほす。

女性「ごちそうさま。とても、おいしかったわ」

女性、お代をカウンターにおくと、にこりとしてお店を出て、ストリートに消えていく。
アカリ、ぽーっとした顔で女性が消えた方角を見ている。
ユイ、わけがわからないといった表情。

ユイ「アカリ、さっきからどうしたの?」

アカリ「(力なく)うん・・」

ユイ「なんか、急にソワソワして」

アカリ「・・あの人が、魔女だよ」

ユイ「え?」
ユイ、ぽかんとする。

○港がよく見える丘公園(夜)
 アカリ、港がよく見える丘公園のそばをスキップしていると、ぴたっとスキップをやめて港を見る。

 アカリ「あー、港がキレイ」
 アカリ、指で四角形をつくり、港をズームする。

アカリ「あれ・・?」
アカリ、公園のベンチに四角形を移すと、人が横たわっているが見えた。
         
アカリ「あれって、まさか・・?」

アカリ、走ってベンチのそばに行くと、昼間の女性が横たわっていた。
 アカリ、女性の苦しそうな表情を見ると、自分の手を女性の額にあてる。

アカリ「すごい熱・・!
アカリ、スマホを出してタクシーを呼ぶ。

アカリ「なんで、こんなとこに・・」
アカリ、女性の胸になにかキラリと光るものに気づく。

アカリ「・・・・?」
      
まもなく、タクシーのライトが近づいてくるのが見えて、アカリは手を挙げる。

○店の前
タクシーがとまり、ドアが開く。
アカリが女性をかついで、でてくる。

○店の二階
ベッドで寝息をたてる女性。
そばで、魔女の本を読んでいるアカリ。
女性が目を覚ます。

女性「ん・・」

アカリ「(うれしそうに)よかった、大丈夫ですか?」
アカリ、女性を顔をのぞきこむ。

女性「(おどろいて)あ、あなたは、昼間の・・」

アカリ「これを飲んでください。元気出ますよ」

アカリ、ハーブティーを女性に出す。
女性、体を起こしてカップを手に取ると、小さく微笑んで飲む。

女性「おいしい。甘くなくて」

アカリ、にっこり笑うと、女性も笑う。
女性、カップをアカリに渡すと、また眠りにつく。
アカリ、毛布を女性にかけると、窓の外を見て目を開く。
港の空に大きな虹がかかっている。

アカリ「あれ、いきなり空が・・、虹・・、え・・?」

アカリ、ベッドの女性の胸から小さな光が放たれているのを見て尻もちをつく。

アカリ「え、ええ?」
女性の体から、さらに強い光が放たれている。

アカリ「ひ、光ってる・・?」

アカリ、虹と女性を交互に見てがくぜんとする。

アカリ「や、やっぱり・・!」

                             エピソード1    END

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