泉鏡花『高野聖』読書感想文

2019年9月20日信州読書会さん読書会の様子

『高野聖を読んで』

あらすじ
若狭へ帰省する私は、
高野山に籍を置く旅僧と汽車で親しくなり、
共に敦賀で一泊するということで同行の約束をした。私は上人(旅僧)顔見知りの宿に共に宿泊し、夜が更ける迄の床で上人の諸国行脚の話を聞かせて欲しいとねだる。
上人は若き日の身に起きた不思議な体験を話し出す。

泉鏡花の小説を初めてよみました。
最初、佐藤慶さんの朗読を聞いていたのですが、音声だけでは言葉の意味が分からないところが多かったため聴き終えてからもう一度書籍で読みました。漢字仮名の並びの独特さが美しく感じられたので実際に読んでみて良かったです。心の中の欲望は誰にでもあるのに、獣になってしまう人とならない人とに道が別れてしまうのは何故だろうと不思議に思います。理性によって欲望を露わにしないこと、又は無垢であることだけが、そこの境目とは思えないからです。 若き日の高野聖は、女の美しさの奥にある侵しがたいものを早い段階で感じ、彼女に対する自分の欲望が育つより先に畏敬の念が生まれていたように思います。その時、畏れが感じられるかどうか、それが、獣にされるものとされないものの境目なのでしょうか。また修行をしている者とそうでない者の違いもそこなのかなと思いました。
白痴の夫が歌うところで聖がハラハラと涙を流すシーンは、読んでる自分も心が揺さぶられました。

また泉鏡花の他作も読んでみたいと思います。

青乃


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