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オノレ・ド・バルザック『ゴリオ爺さん』読書感想文

2020年5月30日信州読書会さん読書会の様子

とても面白いのですが読むのが遅くて途中までしか読めませんでした。
バルザックといえば、ロダンの彫刻作品でしか知らず、自分が著作を手に取る事になるとは思ってもみませんでした。読んでみると想像していたよりずっと面白く読みやすいです。笑ってしまうシーンもいくつかありますが、油断していると急に台詞で核心めいたことが差し込まれたりして、惹きつけられます。

冒頭、まだミステリアスなゴリオ爺さんは、下宿屋とその周辺の皆に詮索され噂話されています。元製麺業者、職人気質で無口な彼はその異質さのせいか、愚鈍扱いされ嘲られています。その上、大切な銀器をこねるところを見られて、気味悪がられ、女将に関してはゴリオ爺さんに対しての当てが外れた腹いせもあり、二人の娘について、ある事ない事言われます。 

パリには、「男は黙って…」という古き良き日本の男の美学は無いのだなとつくづく思いました。 

また、野心はあるが、純粋さと若さ故、危なっかしいラスティニャックがうける社交界の手ほどき、世慣れたヴォートランが彼にこの世の仕組みを説き、そそのかす長台詞は、まるで自分に訴えかけられているようで妙に心に刺さります。男も女もパリで必死にのし上がり、生き残っていこうとする姿。現代日本の一地方で、今の暮らしに甘んじている自分には想像もつきませんでしたが、全く別の世界の事とも思えず、本の外から覗き見しています。

青乃

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