薄氷の訪れ 続編2



まるでなにかに
惹かれ合うようにして
二人の目線があう



香苗は
正晴に対して
優しく微笑み
優しく会釈をする



正晴はなぜか

驚いた様子のまま
視線が固まっていた



なにか
香苗に惹かれるものがあったのか


まるで
主観的刹那を
長い時間のように感じるほどに


正晴の中で
その数秒が長く流れるのだ



その後


正晴から
香苗に近寄り
声をかける



まるで
都会から来た
これまでに
様々な女子と遊んできた青年とは
思えないほどに



たじたじとたじろいている


ただ
その光景は周りから見ても
誰も気にしないほどに自然に
見えた



だが、
唯一一人だけが
その場に立ち
赤面している



正晴だ


まだなんの
会話もしていないのに
まるで
初めて女子と話すかのように



正晴は
赤面していた


ただ
香苗は
そんな正晴の表情にも
気付かず


「あの〜、なにかありましたか〜。」と


ゆるく問いかける



正晴は
とっさに


「お、おとこは!彼氏はいるのか!」と



正晴自身が
驚くような言葉が
突拍子もなく出たのだ



香苗は



「今までそういった方は、一度も居ませんよ〜」と


また
ゆるく返答する



「そ、そぉか、そ、そりゃそうだな…。」と


なにか
慌ててつつも
嬉しそうな表情を浮かべ


香苗に返す



「っじゃ、じゃあぁな!!!」と


正晴は言い残し



香苗の前から姿を消すのだ




正晴は


内心
ここが地元ではなくよかったと
心底安心していた


なぜなら
こんなにも皆から
人気もあり
女子を扱い慣れている


正晴が
ただ一人の女子に対して
たじろぎ
上手く会話が出来ていないところなど


生涯誰にも見られたくないという
強いプライドがあったからだ




だが、
たったこの瞬間的
やり取りをしたことによって




二人の距離は縮まるのであった

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