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vol.47 架空の交通渋滞が発生?「Google Maps Hacks」とは。

GW明けの5/11~12、日本各地でオーロラが発生しましたが、みなさんは見ることができましたか?私は残念ながら見れなかったです。貴重な機会を逃してしまいました...!このオーロラを生み出したのは、太陽フレア(太陽の表面が爆発する現象)による影響だそうです[1]。

太陽フレア、綺麗なオーロラを生み出すだけなら良いのですが、私たちにとって厄介な存在だそうです。太陽フレアは電気を帯びたガス以外にも、電磁波などを放出します。これらが地球に届くと、人工衛星やGPSに影響を及ぼし、通信障害が発生する恐れがあります。太陽フレアの活動は、2025〜2026年まで続くらしく[2]、オーロラを日本で見れるチャンスは増えるのかもしれませんが、同時に通信障害が起きるのは恐ろしいです。

身近なところですと、Google MapやUber Eatsなど、位置情報を使うアプリでは、マップ上の位置が目的地からズレて表示されるのかもしれません。

いつまで経っても目的地に辿り着けない、Uber Eatsで頼んだご飯が届かない、ということもあり得るのかも...?ご飯が届かず、お腹ぺこぺこな状態が続くのは辛いです。

それに加え、私は地図を読むのが苦手で、Google Mapのルート案内機能が使えなくなったら、家から一歩も外に出られなくなりそうです。ルート案内ですら、自分がどちらの方向に向かうべきか、たまに分からなるという重症レベルなので…。ルート案内機能のない地図だけだと、困り果ててしまいそうです。

位置情報がバグったら恐ろしいなーと思っていた時に、位置情報と関連する作品を思い出しました。Google Map上で架空の交通渋滞を発生させた《Google Maps Hacks》(2020年)です。

“架空”の交通渋滞と聞くと、作家がGoogle Mapにハッキングをして何か操作したのかなと思ったのですが、やり方はとてもシンプルでした。

作家のSimon Weckertは、Google Mapを開いた99台のスマホをカートに乗せて道路を歩きました。すると、99人が同時に移動しているとGoogle Mapが認識し、Google Map上では交通渋滞の表示となりました。Google Mapだけを見た人は、交通渋滞が起きていると思い、道路を避けたのかもしれません。

実際のパフォーマンス映像はこちらから見ることができます。https://www.simonweckert.com/googlemapshacks.html[3]

Simon Weckertがカートをコロコロ引っ張って道を歩いている姿を見て、アナログな方法でネット上の情報を騙すのが皮肉的で面白いなと思いました。データ上の情報も大事ですが、自分たちの目で実際に見ないと本当のことが分からないのかもしれません。
この作品を通して、Simon Weckertは、私たちの行動は、Google Mapからの情報に制御されていることを伝えています。地図以外にも、位置情報、交通状況、お店の最新情報など、私たちの生活に必要な情報を提供するGoogle Map。だからこそ私たちはGoogle Mapに頼り、Google Mapからの情報でが私たちの行動がいつの間にかコントロールされているのかもしれません。

Simon Weckertはこのように言っています。

…(Simon Weckert)が問いたいのは「権力」の問題だ。つまり、ユーザーの生活や企業の活動を左右する地図をGoogleが作成しているということだ。Googleマップを通じて、監視やコントロール、規制ができるかもしれないし、私たちの行動や意見、イメージを決定したり、情報をコントロールしたりするかもしれない。このパフォーマンスは、地図というものはそもそも情報や権力から生まれたものだということを伝えている[4]。

“Googleマップ上にありもしない交通渋滞をつくる Simon Weckertのパフォーマンス「Google Maps Hacks」”. AXIS. 2020.02.07.

哲学者マーシャル・マクルーハンの「われわれは自分の道具をかたちづくるが、その後は道具がわれわれをかたちづくる」という言葉を引用しながら、彼はこう言う。「いまの時代はまさに、テクノロジーがわたしたち人間に適応しているのではなく、その逆なのではないかと感じています[5]」

“99台のスマートフォンで「架空の交通渋滞」が発生!? Googleマップをだました男が、本当に伝えたかったこと”. WIRED. 2020.03.02.

私はGoogle mapでお店を検索した時、「営業中」となっていたのでお店に行ってみたら、臨時休業だったという経験がありました。「お店のHPやSNSを確認したり、電話をかけて確認すればよかったー!」とちょっぴり後悔しました。ルート案内通りに進んでみたけれど、遠回りになっていたり、目的地の入り口とは違う場所げ道案内が終了してしまったり… 。作品を通して、私の行動もGoogle Map上の情報にコントロールされているのかもしれないと感じました。

Google Mapがないと目的地に辿り着けないくらい、Google Mapに頼りっきりな私ですが、たまには自分の力で地図を見て、目的地まで辿り着くことに挑戦してみるのも良いかもしれません。太陽フレアによる通信障害も今後ありえますし、Goole Mapが使えなくなった時のために、土地勘を鍛えなくては!

ちなみに本作品について、Google社からはこのようなコメントを発表しています。

「Google マップの交通データは、さまざまなソースからの情報を基に次々と更新されています。位置情報サーヴィスをオンにしている方々の携帯端末から集められる匿名データや、Google マップコミュニティから提供される情報もその一部です。今回のようなGoogleマップの独創的な使い方も、今後さらに質の高い地図をつくるための一助として歓迎いたします[5]」

“99台のスマートフォンで「架空の交通渋滞」が発生!? Googleマップをだました男が、本当に伝えたかったこと”. WIRED. 2020.03.02.

Google Mapの機能性について触れている作品のため、Google社から作家にクレームが入るかもしれなさそうですが、このパフォーマンスを前向きに受け止めています。世界のGoogleは寛大だなと思いました。

Google Mapの品質を向上させる助けとなっている、と書いてありますが、もしまた99台のスマホを一度に運んだら、Google Map上ではどのような表示となるのでしょうか。この作品が発表されたのは4年前の2020年なので、どのようなアップデートがあるのか気になります!


<引用>
[1] ”「太陽フレア災害」ピークは来年、最悪のシナリオとは 企業や大学の研究、人も予算も足りていない”. 東京新聞.2024.05.15.
https://www.tokyo-np.co.jp/article/327078#:~:text=オーロラ出現の原因は,観測領域が拡大した。, (参照 2024-05-22).
[2] ”【太陽フレア】今後も"大爆発"は続くか...11年周期で太陽の活動は活発化 スーパーフレア発生で甚大な被害!?研究者が解説”. MBSNEWS. 2024.05.14.
https://www.mbs.jp/news/feature/specialist/article/2024/05/100328.shtml, (参照 2024-05-22).
[3] Simon Weckert. ”Google Maps Hacks”.
https://www.simonweckert.com/googlemapshacks.html, (参照 2024-05-22).
[4] “Googleマップ上にありもしない交通渋滞をつくる Simon Weckertのパフォーマンス「Google Maps Hacks」”. AXIS. 2020.02.07.
https://www.axismag.jp/posts/2020/02/167019.html, (参照 2024-05-22).
[5] “99台のスマートフォンで「架空の交通渋滞」が発生!? Googleマップをだました男が、本当に伝えたかったこと”. WIRED. 2020.03.02.
https://wired.jp/2020/03/02/99-phones-fake-google-maps-traffic-jam/, (参照 2024-05-22).

<参考文献>
[6]”第24回 アート部門 ソーシャル・インパクト賞 Google Maps Hacks”. 文化庁メディア芸術祭.
https://j-mediaarts.jp/award/single/google-maps-hacks/, (参照 2024-05-22).

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