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男と云う男は、皆なお前の肥料になるのだ【読後感想】『刺青』谷崎潤一郎
前の記事でも書いたが、また書きたくなったところに、語りたい小説に出会った。ということで久しぶりの小説レビューだ。
の、まえに背景から語ることにする。
この小説は、職場でいちばん綺麗な、25歳の女性がオススメしてくれた。で、谷崎潤一郎だって言うから、まずそれに驚いた。とんだ大物だ。そして調べれば分かるが1910年の小説だっていう。驚いた。115年前の小説だってさ、で、谷崎ってどこかイメージは三島に近く、そして三島まではわかる。でも、彼のもっと前で、背表紙にはこう書いてあった。「耽美の祖」。期待したし、こんな風に記事にしたことには理由がある。すごくよかったんだ。痺れたんだ。
と、その前にもう少し話す。彼女がこの『刺青』より先に紹介してくれたのは、綾辻行人の『十角館の殺人』だった。ミステリだった。聞いたことはあるが、たぶん自分からはアプローチしなかった類だっただろう。でもね、これもよかったんだ。分厚く見えたけど、6時間で読み終わって、85点。
どうしたって純文学ばかり読むし、次はSFで、言葉では幅広に読むようになったとは言うが、それでもまだ。この綾辻ミステリのようなものは初めてだった。とにかく先が気になって、ラストに期待し、ちゃんと裏切られた。いい読書になった。教えてくれてありがとう。
そしてミステリを読んで、着想が湧いた。簡単な構成と、いわゆるオチ? を考えてメモに残した。これまで純文学縛りをしていたが、最近SFじみたものも書いたし、次はミステリ(らしいもの)も書いてみようと思った。
けっきょく、完全な脱線。でも、嫌いじゃない。読み手を無視した、日記か記録に近い。
今回は、あくまで『刺青』の記事だけど、何が言いたいかって、まだまだ知らない本は山ほどある。それでね、こういう所謂人からのオススメってのは、かなり効率がいい。なにぶん、そうそうハズレは引かない。もちろん、こっちだって人を選ぶ。たとえば好きな人や、信頼できる人からの話に限るってこと。その人のことをもっと知りたいと思って読むこともある。でも、もうその段階であれば期待がある。読みたくなっちゃうんだ。あとね、理路整然としていなくても、ただ情熱。熱く語るんだ。別に言葉数は少なくたって、伝わるということも知っている。そういうプレゼンを聞けば、僕はそれを確かめる、とかそんな態度なわけじゃなくて、ただそわそわする。
一人でもくもくと読書してもいいが、ほんとうは、話したい。これは、映画の方が顕著だけど、でも読書でも同じだ。面白かったことを、共有し、話したい。きっと新しい発見もある。これは経験から言えることだ。
それとね、読書にはハズレが山ほどある。だからこの方法はほんとうに効率がいい。たぶん面白いと、約束された読書体験は、いいよね。
関連で、
前の前の2月の話だ、このnoteでも記事にしたけど、信頼できる読書家から伊藤計劃を進められた。『虐殺器官』と『ハーモニー』は最高だった。
この時もそうだった。なんの疑いもなかった。むしろ、その時読んでいた何かの長編も全部放り出して、早く伊藤計劃に触れたかった(こんなこと書くんだ、きっとその時の本はハズレだったに違いない)。とにかくそのくらい、そわそわした。信頼できる読書家とは、初対面だったけど、酒の席で、周りを置いてきぼりにして3、4時間は話し込んだ。たぶん、あの時、はじめてあんなに小説の話を、誰かとした。楽しかった。
ほとんど小説の話だったけど、オススメのマンガも聞いた。そのひとつが『BLUE GIANT』。これも、そうだった。すぐにTSUTAYAでコミックレンタルした。最高だったよ。映画もね!
また、会いたい。また、話したい。が、いかんせん遠い所にいて、なかなか機会がない。でも、また、会って話がしたい。もっとオススメを聞きたい。
さて、いいかげん本題だ。……本題?ww
1910年
シビレル本
純文学
90点
20min(ただし『刺青』のみ)
![](https://assets.st-note.com/img/1717944112541-o7JrO8P1Tf.jpg?width=800)
ね、短編だったのよ。わずか20分! が、これがなかなか凝縮していた。極力無駄を削げ落したように、洗練されていた。そしてどうにもどろどろとした何かがあったし、さいごは怖かった。
前半部から少しだけ引用する。
すべて美しい者は強者であり、醜い者は弱者であった。誰も彼も挙って美しからんと努めた挙句は、天稟の体へ絵の具を注ぎ込む迄になった。芳烈な、或いは絢爛な、線と色とがその頃の人々の肌に踊った。
刺青師の心には、人知らぬ快楽と宿願とが潜んで居た。彼が人々の肌を針で突き刺す時、真紅に血を含んで膨れ上がる肉の疼きに堪えかねて、大抵の男は苦しき呻き声を発したが、その呻きごえが激しければ激しい程、彼は不思議に云い難い愉快を感じるのであった。
彼の年来の宿願は、光輝ある美女の肌を得て、それへ己れの魂を刺り込む事であった。
もうね、どこかエロく、尖っていた。そして美しい。こういうのを、耽美と呼ぶのかもしれない。
でね、
あのラストを、どう解釈すればいい。蜘蛛……。 断っておくが、前と同じで、僕のレビューは、考察記事じゃない。
そしてタイトルで書いたが
「男と云う男は、皆なお前の肥料になるのだ」これだけじゃあ分からない。だろう、でも、この言葉選びですよ。
もしくはカッコいい。という言葉をあてるのがいいのかもしれない。うーん難しい。すぐに読み切れるので、もう何度も読み返したが、そのたびに引き込まれる。魅せられる。
ひとつの仮説だけど(考察じゃないよ!)、「美しさ」の輪郭もしくは正体を探るような、しかしそれでいて語り過ぎない粋がある。ような気もする。
なんだか何を書いているのか段々分からなくなってきたが、ただ、とめどない。血が、流れる。止血の方法が分からないと、たぶん死ぬ。そんな、
危うさがあった。怖い。
のみ込まれる気がする。した。正直なところ、後半はよく分からなかった。繰り返すが、あのラストもそうだ。でも、中毒性がある。
ここまで書いて、また読んだ。
燦爛。これは、もはや記事、たらしめていないが、まあいい。もはや、違う話がメインかも、どこまでいっても読み手を無視した、日記か記録に近い。
という話だ。でも楽しい。別のところで、それなりに読み手を意識した記事を書いている。当然、文体も違う。だけどやっぱり自由に赴くままに書く、ここが居心地がいい。改めてそう思う。
もう、終わろう。個人的にはアイキャッチの出来が気に入った。どうかな?
でだよ、もうここからは違うが、そうなんだよ。また三島だ。時系列は逆だけど、こういう小説にあてるラベルは、「三島」なんだな。
『刺青』を読む前に、ずっと前に買っておいた文學界に掲載された創作で、『ハンチバック』の市川沙央の芥川受賞後第一弾『オフィーリア23号』を読んだのだが、そこにも三島がいた。前の小説レビュー記事も、完全に三島だったし、だいぶ前に書いた『幽玄F』も、三島だった。引きつけられている、か、惹きつけられている、いつの間にか僕も魅せられている。
三島は、ほんとうに人気だ。それと今回の谷崎、『刺青』が、どこかリンクしているようで、どこかそれも面白い。余談。
うん、いいものを読まさせてもらった。教えてくれてありがとう。と、
この小説は、職場でいちばん綺麗な、25歳の女性がオススメしてくれた。冒頭でこんなことをまず先に書いたのは、もちろんそれはただの真実なのだけど、僕がほんとうに主張したいことは、希望だった。よいものは、長く、これからも読み継がれる。時を超えて、また、容姿の話をするのは少し違うが、こんな綺麗な女性が、小説を読んでいることが、僕にはたまらなく嬉しかったんだ。だからわくわくして、すぐに読んだ。これで〆る。
最後まで読んでくれてありがとう。それではまた次の記事で!
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