見出し画像

『ママはキミと一緒にオトナになる』を読んで

私は、シングルマザーという言葉にちょっぴり敏感な人間だ。
今がどんなに幸せでも、どうしたって辛い過去を思い出してしまう。
「おかあさーん、いかないでー!!」
と泣いても泣いても、聞き入れてはもらえず、私と妹を置いて出て行ってしまったお母さんのことを思い出す。
シングルマザーって、お母さんが子どもを引き取って育てているってことだもの。
私は愛されなかったんだな、と痛烈に感じてしまうから、シングルマザーという言葉には胸の痛みがくっついてくる。

佐藤友美(以下:さとゆみ)さんの著書『ママはキミと一緒に大人になる』(以下:ママキミ)の中には、ご自身が離婚するときのお話も書かれている。息子さんの様子はどんな状況だったのか、その場にいるような臨場感で読めてしまう。
私は、どうしようもできない子どもの立場だった自分と、息子さんの状況に共感する部分があり、なんとも言えない複雑な気持ちを抱えて読んだ。

私も親が離婚した当初は、幼すぎて親の気持ちが全くわからなかった。大人になっても、心は子どものまま、あの当時の自分から抜け出せていなかった。
けれど、さとゆみさんの親視点での文面を読むと、今は親の気持ちもわかるようになったのだとちょっぴりホッとした気持ちになる。
私は前に進めている、と思った。

私にとってのさとゆみさんは、とんでもない角度のボールを投げてきてくれる人だ。豪速球で、ストライクを取りにくる。
「これも、アリなの?」
「それも、アリなの?」
と、私が想像も付かなかった球筋を見せてくれるので、最初は怖気づいてしまう。
「折角ですが、私にはそのプレイを見せてもらってもヒットを打てそうにありません」
と丁重にお断りするようなところを、全く間髪入れずにとんでもない角度の豪速球を次々に投げてくるので、段々と「これは、絶対にアリだ」と確信に変わってくる。

それが、この『ママキミ』の中でも存分に発揮されていた。
私の価値観を、さとゆみさんの文章でいとも簡単に変容させてしまう。
言葉の力、とはこのことか。

私はさとゆみゼミ出身だが、さとゆみゼミの課題で、さとゆみさんにインタビューをして記事を書くという課題があった。
そのとき、どうしても気になっていたさとゆみさんの根明思考の原点を伺ったのだが、『ママキミ』を手に取って驚いた。私が知りたかったことがそのまま掲載されているではないか!と。
「自分を守る言葉」という単元に、私がインタビューで質問したときに答えて下さったエピソードがそのまま書かれているので、是非手に取ってみてもらいたい。
私は、このエピソードを知って、目から鱗が100枚は落ちたと思う。
稲妻に打たれたような衝撃で、私の人生を170度は変えたと言っても過言ではない。このエピソードを読むだけでも、この本を買った価値は取れすぎる。

『ママキミ』を読むと、日々の子育てが少し丁寧な視点で取り組める気がするし、子どもとの会話の最中も、頭の片隅に『ママキミ』とよぎる。
なんとなく、私が『ママキミ』のさとゆみさんになって子育てができているんじゃないかと錯覚を起こして、ホクホクしている自分がいる。
読後感、読んだ後にちょっとレベルアップしたお母さんになれている気がする。
そう思うだけで、毎日の育児が楽しくなる。

あぁ、また明日も頑張ろう。


この記事が参加している募集

#読書感想文

188,902件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?