すいか1/6
今日は喉が渇いていた。
ペットボトルの麦茶をちょうど飲み終わって10分くらいで家の最寄駅に着いてしまい、新しく買うのには少し躊躇があった。
飲み物を買うべきか、否か。
自分の中で答えが出ないまま、駅の改札から出ていく人の波に乗って、駅直結のスーパーに流れ込む。
新作のハーゲンダッツが出てないか確認したあと、飲み物コーナーを流し見し、辿り着いたのはお寿司のコーナー。
19時を過ぎると値下げのシールが貼られ始めるので、どれどれと眺めに行ったら西瓜があった。
「半額」と書かれたシールが税抜き598円の表示に半分ほど覆い被さるように貼られていた。
「糖度12度」とデカデカ書かれていて、それが基準と比べてどのくらい甘いのだろうかとぼんやり考えた。
100円しないペットボトルを買うか、300円で西瓜を買うか。
今日、最大の難問を前に5分立ち尽くしたが、結局すいかを手にレジに向かった。
ペットボトルなら500mlだが、すいか1/6なら1L分くらいは水分量もありそうだ。
しかし、西瓜は疲れた体にはずっしりとくる重さで、持って帰るか公園で食べるか脳内会議が始まった。
帰りたい僕「早く家に帰って水分補給!それから西瓜を味わうべき」
公園に寄りたい僕「それなら今すぐ公園に行って西瓜を食べれば、水分補給もできて一石二鳥だ」
寄り道したくない僕「夜の公園で一人西瓜を食べる不審者を見たくはないだろう?」
西瓜を半分個したくない僕「でも、家に帰ったら自分が食べる分も減っちゃうよ?」
全員「確かに」
脳内会議を終えた僕は公園のベンチに腰掛けると、1/6カットされた西瓜にかぶりついた。糖度12度の甘さは伊達じゃない。
一口かぶりつくごとに、口の中で種をより分けて、ベンチの足元にそっと種を蒔いた。街灯の光を受けて黒々と光っている。
西瓜をかじりながら、今年はまだ夏らしいことを何もしていないなとふと考えた。
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