見出し画像

通関業者の立替問題

今回は悩ましい話題です。

貿易で輸入時に許可を取得するには関税、消費税の納付が条件となっています。
海外から荷物を受け取るには税金の先納付が絶対なのです。この税金を多くの通関業者、フォワーダー、輸送業者が建て替えているのをご存知でしょうか?

この問題について考えてみたいと思います。


なぜ立替が発生するのか?


なぜ関税の立替が発生するのでしょうか?

もちろん荷主に先に入金して貰えばいいのですが輸送業者の立場上、これは訴えにくいものです。言えば荷主の担当者に面倒と思われ業者変更をされるかも知れません。さっと通関・納入してお客様にいい印象で取引をしてもらいたい、と思うのが心情です。

荷主の中には関税法を理解していない人も多いです。「法律はよく分からない」「何でもいいから早く納入してくれ」、「支払いは請求書でまとめて後で払いたい」というのが本音です。

この関係になると輸入関税・消費税は輸送業者側で立替ておき、早く納入して輸送費と含めて請求するスキームが完成してしまいます。

電子的な納付が出来なかった過去の時代では、荷主による直接の納付では通関を代理している意味がなく、通関業者が立て替えるしかなかったという事情もあったと思います。これが商習慣として根付いている面もあるかもしれません。もし、これを引きずっているとしたら少々時代遅れかもしれません。

立替の問題点


この立替で問題なのが輸送費に比べ関税・消費税が圧倒的に大きい点です。輸送費よりも大きい金額を立て替えて、支払いが遅れるとかなりの負担になって行きます。

輸送費が小さければ輸送業者の利益も小さくなります。通関だけ行っていれば通関費用は1万円程度で利益は殆どありません。それにも関わらず、高額な税金の立替で、支払遅延だと金利が軽く利益を上回ってしまい、仕事をしない方が良かったという事も起きます。

「先に支払って下さい!」と強く言う通関業者さんがいるのも仕方がないと言えます。

債権回収


一方で輸入貿易を生業とする荷主の存続率はあまり高くありません。残念な事に倒産が多数あります。

支払いが少しずつ遅れ、まったく入金されなくなり、催促の電話をすると「今日中に支払うから!」と必ず言われます。
それで安心してしまうと、そのまま支払われない日が何日も続き、仕方なく催促に事務所へ行くと、会社が無くなっている、社長が夜逃げしているというのも、よくあるケースです。

残念ながら私も何度か経験しました。どの会社も資金繰りに行き詰まっているので、ズルズルしていくのは全く同じです。
せめて夜逃げせず、誠意を持って対応して欲しいと思っていましたが、お金がない人の行動は皆さん同じなのです。

こうなると債権回収に入るのですが、気が付いた時には後の祭りです。そもそも財産らしいものは担保で銀行に差し押さえられています。輸送業者で差し押さえられるのは、せいぜい輸送中の貨物です。これも残念ながら売れないものが多く二束三文です。(売れる物なら資金繰りに苦戦しないですから)

関税制度を振り返る


多くの自転車操業の輸入者を見てきました。小規模の事業者が多く体力はありません。

輸入時に納税が先にくるのは資金繰りの観点から苦しいと思います。利益が上がってなくとも先に税金を納めないといけない制度で中々厳しいと感じます。法人税なら利益に対して課税ですが、関税はそうではありません。

ただ規制するのにも理由はあります。海外の安価な製品が国内産業に打撃を与える可能性があります。これらを保護するためには関税を課さないといけないと言うのも理解は出来ます。
そもそも利益が出たら徴収するという種類のものでは無いのです。

疑問が残るのは輸入消費税です。消費税は消費者が支払うべき税です。ところが輸入時にこの消費税を事業者が先に支払わなければいけません。これは産業の保護ではなく、どちらかというと簡易な徴収が目的のように思います。もちろん消費者が輸入しないとも言い切れません。ただ多くは業務通関と呼ばれていて事業者向けのハズです。この制度が本当に産業の発展に貢献するのか?と個人として感じています。

通関業者は自衛を


制度がすぐに変わることはないので通関業者は自衛するしかないです。方法としては以下の3点です。

  1. 税金の先払いの依頼

  2. リアルタイム口座の開設依頼

  3. 延納担保の提供依頼


1.は通関の準備をして税額が算出できたら金額を荷主に連絡し入金されてから、申告をすれば間違いないです。税額は為替や審査で多少前後する事を伝えておけばいいでしょう。差額は大した問題では無いです。入金確認に時間が掛かりますので、振込明細を送って貰う事で早めの申告に協力してあげてもいいと思います。

2.小規模な事業者であればリアルタイム口座は有効な手段です。荷主の口座から引き落とされるので通関業者のリスクはありません。この口座を作る営業は積極的にするべきです。

3.規模が大きい会社であれば延納がおすすめです。原価管理にも向いていますし、最大3ヶ月後の支払いでよいためキャッシュフローも良くなります。規模が大きい企業でも担当者がこういった制度を知っている人は意外と少ないです。会社として知っていても大きい組織がゆえに共有されてないという事もあります。通関業者は是非、営業してみて下さい。リスクを減らして手続きの手数料も貰えますし、延納手続きをしている通関業者とは関係が長く続く可能性が高いです。

もし3つ提案しても拒否する荷主であれば取引停止が妥当でしょう。支払い能力が全く無いと言えます。荷主も債権が増えるだけなので毅然とした対応がお互いのためです。

まとめ


少々辛口になりましたが、実際に立替をしている方の代弁的なところがあります。この状態に陥っている方はおそらく手を挙げれません。信用不安を招く訳にも行きませんし、荷物を止めると倒産して溜まった負債が払えなくなると脅されます。やはりビジネスの基本を押さえて最初から毅然とした対応をしたいものです。

荷主の方も前例はいくらでもあるので、同じ道を歩まないように、十分に確認して取引をして欲しいものです。倒産する会社の特徴はパターンがありますので参考にして下さい。

  • 事前の輸入調査が不十分

  • 一度当たって需要を読み間違える

  • 予想外の外的要因に耐えられない

貴社の事業が健全に発展する事を願っています。

以上、今回はここまで。
皆さんの反応がモチベーションに繋がります。ご意見、ご感想、リクエストお待ちしております。またフォロー、スキも是非よろしくお願いします。


物流の価値向上のための物流DAOを運営しています。記事のネタを事前に公開もしています。興味ある方はお気軽にご参加下さい。

↓関連書籍です。活動支援のためコチラから経由して購入頂けると助かります。
https://amzn.to/43e7y7j


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?