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温度管理物流

今回は私が長年悩んだ物流の話です。

温度管理物流は行った事があるでしょうか?製品の品質を守るため温度を一定に保ちながら輸送や保管するものです。

これには様々な課題がありますので、この物流の難しさを説明したいと思います。

はじめに


私が温度管理に詳しくなったのには理由があります。私が管轄していた複数の温度管理倉庫が連続して空調機が故障し製品を多数損失させた苦い思い出があるからです。損失は相当な金額でした。

そこから原因分析と検証をして、ありとあらゆる対策を打った経験があるからです。是非この経験から得たものをみなさんに共有したいと思います。

温度管理倉庫のイメージ(出典:日軽パネルシステム株式会社

温度管理の目的


温度管理は、食品であれば分かりやすいです。低温に保つ事で温度による腐敗を防ぐ、もしくは遅らせるのが目的です。冷凍ピザであれば冷凍庫で長期間保管でき、好きな時に食べる事ができます。

私が扱う製品だと化学品の硬化を意図的に止めるために温度管理をします。

どちらにしてもその製品を本来の用途に必要なタイミングで使用できるようにするのが温度管理の目的です。

温度を保つ難しさ


ところがこの温度を保つ物流は現実はかなり難しいのです。

倉庫やコンテナ、トラックの荷台の温度を計測すると必ず温度が急上昇するタイミングがあります。これは扉を開閉させた時です。

輸送中の温度推移サンプル(出典:赤帽フリーダム運送

ある空間に閉じ込めるだけであれば、その様な事は起こりませんが、物流の場合は必ず扉の開閉が何度も必要です。梱包、開梱、積込、荷卸、保管を繰り返し行って物流が成立しているからです。

トラックバースのサンプル(出典:株式会社souco

つまり物流で温度を一定に保ち続ける事は、現実的に不可能なのです。


更に言うとその空間の温度分布はどうでしょうか。
扉付近と扉から離れた場所では温度変化が全く異なります。同じ場所でも床と天井でも大きく温度が違います。当然、貨物も梱包の外と中では異なります。

さて、あなたはどこの温度を維持するように要求されているでしょうか?おそらく明確なものはないでしょう。何℃で輸送、保管すれば良いのか、どの温度を基準にするのか、明確な規定がなく曖昧なものが大半なのです。

究極は段ボール1つ1つに温度計を入れて記録が必要です。かなりのコストと手間が掛かるものだと理解頂けるかと思います。

保温するには


ではどの様に温度を保っていくのか説明していきます。

まず倉庫です。最も温度管理が容易な場所です。電源も確保されていますし、外的変化も少ないからです。とは言え温度変化を軽減するには二重扉が必須です。更に扉の前後にビニールカーテンを設置する事で温度変化を防げるでしょう。ただし貨物によってはカーテンが許容されない場合もあります。それは危険物の場合です。可燃性のものを設置する訳にはいきません。

ビニールカーテンを設置した様子(出典:BXテンパル

輸送は空調付きのトラックやコンテナを使用します。ただ荷役時はどうしようもありません。リフトやクレーンで作業している間は外気にさらされます。1時間程度は温度管理されない事があると覚悟した方がいいでしょう。コンテナであれば電源確保も困難な場合もあります。そのため梱包で温度を保つ必要があります。

それには断熱材を用いた梱包です。輸送時間も考慮して保冷材やドライアイスを梱包内に入れます。ドライアイスも使う場所の考慮が必要です。密閉された空間で大量に使うと二酸化炭素で窒息による死亡事故のおそれもありますので気をつけましょう。

保冷梱包材のサンプル(出典:グリーンエイト株式会社

更に荷役中の日光の照射を避けるため断熱シートを被せるなどの配慮も必要です。


冷やすだけではない


もう少しレベルを上げていくと、世の中には常温帯の温度管理要求が存在します。20℃前後の温度を保つものです。

一見簡単に思えるのですが、そうではありません。夏場は冷やせば事足りますが。冬場は加熱しないといけないのです。

冷やすよりも空間を温める方が難しくなります。外気の影響も受けやすく要求温度帯も狭くなる傾向にあるからです。

保冷材、ドライアイスではコントロール出来ずエアコンなどのハードが必要になります。航空輸送であれば電源が取れません。海上輸送でも陸上輸送でも中々温度を一定に保つのは困難です。

航空機へのコンテナ積込の様子

トラブル対策


温度管理倉庫も機械ですので故障は付き物です。その際にも製品への影響は最小限に留める対策は必要です。

まずは異常を直ちに検知する必要があります。温度計から警告を発して、担当者にメールが飛ぶ仕組みが必要です。このようなシステムやサービスを販売している会社はいくつもあります。もちろん休日、夜間の故障も想定されますので出勤体制や手順も同時に整える必要があります。

また電源喪失がお手上げになりますので予備電源も確保したいところです。こちらは費用も高額になり予算との相談になります。

そして記録可能かつ独立した電源の温度計の設置です。設置場所も倉庫内の異なる場所に複数設置して電池切れや故障でも製品救出の根拠作りをしたいものです。

更に分散保管も可能であればしておくべきでしょう。自然災害もありますので異なる地域に保管して、万が一の全損を防ぐのが目的です。

まとめ


過去の経験があったため温度管理スペック、要求仕様は製品検討段階から入り込むようにしています。無理な要求仕様が非常に多く対策に苦慮したからです。

そして輸送中、保管中に温度変化が発生する事を知らない人が多いです。温度管理要求の緩和に納得しない設計者に、前述の難しさを説明して、この部屋の温度を要求仕様通りに保たせてみてと説き伏せた事もあります。無理な要求はせず、現実に合わせるのがベストです。

是非、これを参考に温度管理物流を極めてみて下さい。

以上、今回はここまで。
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