Coccoの原画展
Coccoが描いた新しい絵本『みなみのしまのはなのいろ』の原画展が、表参道の山陽堂書店ギャラリーで開かれていると知って、見に行った。
地下鉄の出口からすぐの所にある、歴史を感じさせる小さな書店の二階の小さな小さなギャラリーには、繊細で精密なクレヨン画が何枚も飾られていた。
Coccoの絵本『南の島の星の砂』は持っているが、今まで、Coccoの絵本はちょっとどぎつい色と絵の印象で、好きにはなれなかった。
今回、見に行って良かったのは、Coccoの息吹が感じられたこと。
私は想像力が乏しいのか、CDを聴いても本人が歌っている実感が持てないことが多い。ライブで歌を聴いて、やっと歌から本人が立ち上がるようになる、歌っている姿が思い浮かぶようになる。今回もそんな感じだった。
小さい絵の精密な無数のニードルの跡を見た。印刷ではわからないが、肉筆で引いたニードルの線は数万はあるだろう。狂気に近い真剣さを感じた。彼女の創作は、趣味や遊びではなかった。元々はバレリーナを目指していたことや、音楽活動の空白期間にイギリスの大学にアートを学びに留学していたことから、表現活動への造詣が深いことは想像できる。しかしそれ以上に、この表現を突き動かしているのは、Coccoの沖縄の海への思い、海が本当に大好きで大切に思い、命と引き換えにでも守ろうとする気持ちなのだろう。
絵の額のまわりの壁には、一面に数百のブリキの魚のチップが貼られていた。その一枚一枚には、象徴的な英語の言葉が手で打ち出されている。
三階には、少しのグッズと手書きのメッセージが飾られていた。この壁にはさらに多くの、折り紙を切って作った海の生き物たちが貼られている。
海の匂いがした。
乾いた珊瑚が触れあう音がした。
空間はCoccoの思いでいっぱいだった。
私は、Coccoと話しているようなあたたかい気持ちで満たされた。
2019年10月4日
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本稿 Ⓒ2019 青海 陽
画像 ⒸCocco『みなみのしまのはなのいろ』
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