ないない、もうアラサーやぞ

「あれ、そんなだっけ?」
ん?
「え、だって、こんなにテキパキしゃべる感じ、見たことなくて。」

まただ。ときおり指摘されるこの性格に、だいぶ飽き飽きしている。どうせ、思った感じと違う、と言いたいのだろう。このあとの展開は見えてて、癒やし系の子だとおもったのに、とか何とか言われて、フェードアウトになるのだ。出会ったときにほわほわしてたら、なぜ最後までほわほわしてなきゃいけないのだ。もうアラサーやぞ、そんな奴、おれへんやろ。2回目のデートが無駄になったな、と薄々おもいながら

えー、そうかなあ?

と、ゆっくり、ほんわりした口調で話してみる。まあどうせ無駄なのだろうけど。ほわほわしたら、とって食われてしまうような世界でぎりぎり生きてるのを知ってて、どうして、ほわほわ成分だけで生きてこれたのだと思い込めるのだろう、彼らは。きょうび希少なお持ち帰り可能なほわほわ系女子(アラサー)とでも思ったか。だいたい、ほわほわ以外を隠してるつもりもなかったんだけど、何だこの驚きようは。
仕事のグチなんか聞かされたら、普通にアドバイスをしてしてしまうでしょ。最後まで、まあ大変だよねぇ、なんて言ってればよかったんだけど、だってさあ、改善策が浮かんじゃったんだもの。そのくらい、サクッと整理したら終わりでしょうが。

「ん、あ、いや、いいなと、思って」

明らかに句読点が増えた喋り方で、なんとか褒めねば、という表情をしている。いいな、とか、そういうことは良いから、私のいった内容についてはどう思うんだね、君。結構真面目にしゃべったけど、なにかちょっとは参考になるとかはあったかね、君。参考にならぬのならどこが的外れだったかね、君。などと言えるはずもなく。

ふふ、そう言ってくれるの、嬉しいな。

と、ジンのソーダ割りをクルクル回す。緊張するとグラスに頼る、20才から変わらない部分も私。ついうっかり、テキパキとしてしまう今の私。両方、ありのままに、わかってくれればいいのになあなんて夢見てしまうのはきっと、15才から変わらず。
ほわほわ成分だけで生きてる女がいると夢見る彼らのことも、ばかになんて出来ないのだ。

彼らも私も、いつになったら夢から覚めるのだろう。

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