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青豆の自己満足

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自作のショートショート・短編小説の中で、気に入っているものを纏めます。 他人の評価は関係なく、自己満足のためにここに集めていきます。
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記事一覧

掌編小説|透明ドロップ|シロクマ文芸部

 夏は夜のうちに済ませたいことが多いのだと、本田は申し訳無さそうな、だけど見ようによって…

青豆ノノ
11日前
85

創作大賞2024 | ソウアイの星①

 ああ、あの日は。  空はグレーで、体を抜けていく音は澄んでいて。  胸の奥に小さな不安…

青豆ノノ
3週間前
134

短編小説 | バースデーバルーン | 創作大賞2024

 妹の頭が徐々に大きくなっていく。病気じゃない。  わかっているんだ。家族の誰もが。だけ…

青豆ノノ
1か月前
217

掌編小説 | 銀ノ月 |#君に届かない

 せっかくの月夜にあなたは来てしまった。女はそう思った。  ひとり静かに湯に浸かり、ガラ…

青豆ノノ
2か月前
88

掌編小説 | 家族

 インターホンのカメラに映らないように顔を隠した。 「だれ?」と姉が訝しむ。 「わたし」と…

青豆ノノ
2か月前
142

掌編小説 | レディー・キラー

 〝花 吹雪〟と書かれた名刺を渡された。綺麗な名前だねと言ったら、左隣に座るその女性は僕…

青豆ノノ
3か月前
124

掌編小説 | わたしの石

 小さな船の冷たい床に寝転がり、空に浮かぶ男の人を見ていた。  わたしは船に乗せている大きな石が、片方の足を潰してしまっていることも忘れて、スーツを着ているその人を目で追っていた。彼はサラリーマンなのかな、なんてのんきに思っていた。わたしの目に映るのは、青い空、白い雲、そしてサラリーマンだった。 いつだったか、わたしはこの船に乗り込んだ。着の身着のまま、後先を考えずに、この小船に身を隠すようにして海へ出た。 小船を漕いでいくためのオールはなく、あるのはわたし

掌編小説 | 儀礼

※暴力的な表現を含みます。  平日の昼間だ。早朝から江の島観光をした帰り、新宿までの普通…

青豆ノノ
3か月前
97

掌編小説 | 出獄

 はじめて夫に触れたのは、彼の心臓が動きを止めて、およそ、三時間ほどが経ったころだ。  …

青豆ノノ
3か月前
112

短編小説 | スタートライン

 集合場所に集まった全員、メガネだった。夜行バスだからね、こうなるわなと最初に言ったのは…

青豆ノノ
4か月前
179

掌編小説 | わたしの青

 あるとき、目に映る世界がすべて青になった。それは、幼かった自分がはじめてつくり上げた、…

青豆ノノ
5か月前
161

掌編小説 | 梅の花 | シロクマ文芸部 

 梅の花がいいと言ったら、渋いねと言った。その女は、オフショルダーのカットソーを着ていた…

青豆ノノ
5か月前
130

掌編小説 | リリー

マキは機嫌がいい。それは誰が見ても明らかだった。中途半端に伸びた髪が肩にあたり、はねてい…

青豆ノノ
5か月前
121

掌編小説 | ダンサー

すえた臭いが鼻を突く。アリスは顔をしかめた。たった今、男が一人暮らしをする部屋に、合鍵を使って入ったのだ。 部屋には大きなベッドがあって、その横にはベッドサイドランプがある。暗闇でもアリスには、部屋の状況がよくわかっていた。この部屋にある物のことは、すべて知り尽くしているのだ。 アリスは、ここを訪れた時には、いつでもそうするように、ランプを灯した。部屋はランプの灯りでぼんやりと色を持った。 何度も訪れたことのあるこの部屋が、今日はまるで知らない場所のようだ。なにかが変わって