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青豆の自己満足

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自作のショートショート・短編小説の中で、気に入っているものを纏めます。 他人の評価は関係なく、自己満足のためにここに集めていきます。
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記事一覧

掌編小説 | 家族

 インターホンのカメラに映らないように顔を隠した。 「だれ?」と姉が訝しむ。 「わたし」と…

青豆ノノ
3日前
116

掌編小説 | レディー・キラー

 〝花 吹雪〟と書かれた名刺を渡された。綺麗な名前だねと言ったら、左隣に座るその女性は僕…

青豆ノノ
2週間前
124

掌編小説 | わたしの石

 小さな船の冷たい床に寝転がり、空に浮かぶ男の人を見ていた。  わたしは船に乗せている大…

青豆ノノ
4週間前
210

掌編小説 | 儀礼

※暴力的な表現を含みます。  平日の昼間だ。早朝から江の島観光をした帰り、新宿までの普通…

青豆ノノ
1か月前
97

掌編小説 | 出獄

 はじめて夫に触れたのは、彼の心臓が動きを止めて、およそ、三時間ほどが経ったころだ。  …

青豆ノノ
1か月前
113

短編小説 | スタートライン

 集合場所に集まった全員、メガネだった。夜行バスだからね、こうなるわなと最初に言ったのは…

青豆ノノ
2か月前
170

掌編小説 | わたしの青

 あるとき、目に映る世界がすべて青になった。それは、幼かった自分がはじめてつくり上げた、わたしだけの世界だった。  誰の悲しみにも触れたくなくて、水に浮かぶイメージを持ち、ゆっくりと体を丸めて青に沈んでいく。静けさと、冷えた感情だけに包まれるその世界では、目を開けても視界はぼやけている。ただ、濃淡のある青いグラデーションが目の前に広がっていた。 耳の奥でクジラが鳴く。実際には聞こえないその声は、現実ではない。現実ではない音と、現実ではない目の前の風景。だけど、その中に

掌編小説 | 梅の花 | シロクマ文芸部 

 梅の花がいいと言ったら、渋いねと言った。その女は、オフショルダーのカットソーを着ていた…

青豆ノノ
2か月前
131

掌編小説 | リリー

マキは機嫌がいい。それは誰が見ても明らかだった。中途半端に伸びた髪が肩にあたり、はねてい…

青豆ノノ
2か月前
122

掌編小説 | ダンサー

すえた臭いが鼻を突く。アリスは顔をしかめた。たった今、男が一人暮らしをする部屋に、合鍵を…

青豆ノノ
2か月前
96

小説でもどうぞ、の結果でました。

以前書きましたが、11月に「小説でもどうぞ」という公募に一作送りまして。本日結果がでました…

青豆ノノ
3か月前
106

ショートストーリー | 膿

かつて記憶の裏側に追いやった切り傷から、今になって膿が溢れてきた。 透明な液が流れ出して…

青豆ノノ
3か月前
91

短編小説 | 眠らない

 雨。  三人がけのソファをベッド代わりにしている。薄い毛布にくるまって目を閉じる。  足…

青豆ノノ
3か月前
117

短編小説 | Message~私はあなたを許す~

どこかの、やさしい、だれかは わかっているよ。 あなたが、こどもをあいせなくて くるしんだこと。 そのことを、だれにも、うちあけられずに くるしんだこと。 こどもから、にげるように トイレにこもったこと。 SNSにいぞんして、げんじつから にげていたこと。 ゆうがた、なきさけぶ、こどものこえに みみをふさいで、ないたこと。 こどもの、ねがおに なきながらあやまった、ひび。 どこかの、だれかは そんなあなたを ゆるしてくれるって。 ✧  「お父さんとお母さん、ち