掌編小説 | ダンサー
すえた臭いが鼻を突く。アリスは顔をしかめた。たった今、男が一人暮らしをする部屋に、合鍵を使って入ったのだ。
部屋には大きなベッドがあって、その横にはベッドサイドランプがある。暗闇でもアリスには、部屋の状況がよくわかっていた。この部屋にある物のことは、すべて知り尽くしているのだ。
アリスは、ここを訪れた時には、いつでもそうするように、ランプを灯した。部屋はランプの灯りでぼんやりと色を持った。
何度も訪れたことのあるこの部屋が、今日はまるで知らない場所のようだ。なにかが変わって