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料理できない母のごはんを褒める娘

私はあまり料理をしない。

一応、肩書としては私は主婦ではある。(Wikipediaによれば主婦というものは家事や育児を主に行う既婚の女性ということ、と書いてあるのでやっぱり私は主婦だ)面倒な皿洗いは食洗機、洗濯は洗濯機と自動乾燥機という文明の力の力を借りることによって日々遂行できているし、娘の宿題を見ることや娘の習い事の送り迎え、勉強の必需品準備などは私がやっている。まぁ、ぎりぎり主婦、と言えるだろう。だけど、料理だけはほぼすることがない。
朝は作らない。昼も作らない。夜はご飯を炊くくらいなら。

じゃあ誰が作っているかといえば夫である。夫は毎日私と娘のために料理をしてくれている。夫がいなければ、娘は朝ごはん抜きで学校に行くことになる。コロナで学校がお休みだったときには夫はとてつもなく大変そうだった。(夫はテレワークしている)

朝も昼も夜も作るのはいくら料理好きの人でも辛いだろう。そもそも夫は料理するのが大好きなわけでもない。結論で言えば「料理の回数を減らそう」ということで朝はそれぞれ好きな味のコーンフレークを食べた。冷凍パスタやインスタント焼きそばのお世話になった。ジャンキーな食べ物は刺激的で美味しい。当然のように私は作らなかった。

なぜ作らないのか。こんな私も実は結婚当初は作っていた。フルタイムの仕事をして、朝は6時半に家を出て夜10時に帰ってきていた頃の話。朝は炊いたご飯にインスタントの味噌汁。昼は職場で食べていて、夜は私と夫のどちらか早くに帰ってきた方が料理をすることになっていた。毎晩「私の方が後でありますように」と願いながら帰宅していた。残念ながら私の方が早いときには適当なタレで鶏肉を焼き、レタスを適当にちぎり、その横にミニトマト二個を置いて、乾燥わかめの味噌汁を作っていた。もちろん鶏肉は生だったり焦げたりした。

茹で卵を電子レンジで作る便利商品を夫に買ってもらって、たまに茹で卵を作ったこともあるけれど、電子レンジを爆発させたことがあった以降はお蔵入り。あわや火事になるところだったから本当に危なかった。電子レンジの修理代はいくらだったのか覚えてはいないが、高額だったのは確かだ。

別の時には、人参サラダを作ろうと細長く切れるタイプのスライサーでシュッシュッと削っていた時、勢い余って指までスライスした。親指に真っ赤な三本の縦ライン。大出血だ。

当時の私が何を考えていたのか覚えていないが、どくどく赤い血が流れる指を携帯カメラで写真を撮って勤務中の夫に送りつけた。夫は職場で「何が送られてきたんだろう?」とパソコン画面にその画像を開いたところ、血塗れの指がデカデカと表示されてギョッとしたのだとことあるごとに言われている。うん、それは私が悪かった。ごめんよ。

ここまで書けばいかに私が料理オンチであるかわかってもらえたと思う。もし駄目ならホッケが上手く焼けなかったときの号泣事件を追記してもいい。

さて、ようやくタイトルの話題に移ろう。こんな私でも、たまに、ごくたまに、本当に稀に料理をする。月に三度作ったら多い方だと思う。作るときは動画レシピアプリのクラシルや、『常備菜』で有名な飛田和緒さんの本を見ながら。(クラシルはいい。料理ができそうな気分になれる。)例えばきゅうりの酢の物。マカロニサラダ。チーズ入り芋もちなどなど。

でもこれは日中に作るよりも夜に娘が寝たあと作る。おそらく夕食のために急いで作らなきゃ!と焦るのがよくない。私の手際は壊滅的によくないのだ。娘が寝た後なら焦らずゆっくり作ることができる。そんな私の『料理』は翌日娘の皿の上に乗る。献立のメインじゃない、ちょっとした副菜。でも殆どの場合で娘はこう言う。

「おいしい!また作って!」

夫と娘の企てで思ってもないことを言わされているのでは、と思ったことがないわけではないが、私が暇そうにソファでごろごろしていると割としょっちゅう言われる。特にチーズ入り芋もち。娘は芋が好きなのだ。確かにじゃがいもを蒸して潰してチーズを入れて焼いてと工程が多いメニューだ。仕事終わりの夫が作るには時間がかかりすぎる。暇な私だからこそできる一品。いい感じに焼き色のついた芋もちを頬張って、嬉しそうにとろけるチーズをびよーんと伸ばしている娘を見るとやり甲斐はある。うん、やり甲斐、は、まぁ、ある。(言い聞かせている)

私の実家は小さな畑で野菜を育てていて、父母だけで食べきれないものを我が家にも回してくれる。今はまさに夏野菜三昧でナスやらきゅうりやらのおすそ分けが多い。私はもらったピーマン九個を使って無限ピーマンを作った。ピーマンを細く切って、お湯で茹でて、いい感じのタレで味付けするアレである。落ち着いて作れば私にも作れる素晴らしいレシピ。

ちなみに私はピーマンの苦味が大好きで、夫もおそらく好き。昔はナスが一番好きだったけれど、同率一位に格上げしてあげてもいいくらいだ。だけど娘は小学生の子どもらしくピーマンが嫌いだ。無限ピーマンはお気に召さなかったようで私が作った料理にしては珍しく「おいしい!また作って!」と言わなかった。嫌そうな顔をしながら白米と一緒に口の中に入れてすごい形相で食べていた。一度お湯で茹でたからそこまで苦くないかなと思ったがそんなことはなかったようだ。

冷蔵庫の中にはまだ丸々太ったピーマン五個が控えている。こんな私も一応は母だ。娘が苦しまないピーマンレシピを探す旅に出よう。

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