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フレームワークを押しつけないで /ファシリテーション一日一話

合わない靴では歩きにくい

組織にはいろんな段階がある。立ち上げ期や、成長期、踊り場期や第二創業期といった、節目節目で会議ファシリテーションのご依頼をいただく。これまで通りの組織運営では、どうにもいかなくなってきたぞ、という時にご依頼頂くことが多い。まるで成長する体のサイズに靴が合わなくなってきた時のように「これでは、どうにも歩きにくい」と感じたころにご依頼を頂く。

今回お手伝いさせていただいた会議では12名の組織中枢メンバーが集って、組織がこれからどういう社会の実現を目指すのか?の明確化にチャレンジした。同時に、そういう世界を志すなら、自分たちの組織はどうビルドアップしていく必要があるか?を話し合った。都内のレンタルスペースを借りてがっつり1日話す時間を終えたあと、依頼主である団体の代表者がこぼした言葉が印象に残っている。

「今日は、メンバーが楽しそうに話しているのがよかった。自分が会議進行したのでは、こういう感じにはならない」と。こういう感想を頂くのは、率直にありがたい。もう少し話を聞いていると「なんだか自分たちが大切にされているな、って感じるんだよね。」という声も聞こえた。なんでも、以前も一度、組織変革ファシリテーター的な方に依頼したことはあるのだが、あまり楽しく話せなかったらしい。「どのあたりが、あまり楽しくなかなったのでしょう?」と伺うと「前のファシリテーターは、このフレームワークで考えましょう、というのを押しつけてきた。我々がまごまごしていると、どうしてコレで考えられないの?みたいな感じに問い詰められて、皆、苦しそうだった」とも。

フレームワークというのは便利なもので、組織のあり方とか、事業の見直しとか組み立てに、とても役に立つ。メジャーなものだとPDCAサイクルとかSWAT分析とかが、それにあたる。この枠組みで考えると、組み立てやすいよ、という補助線のようなものだ。使い勝手いいフレームワークをいくつか持っておいて、会議や組織に応じて、それらを提案するのは、ファシリテーターの役割のひとつ、と言ってもいいと思う。

売りたい靴の押し売りをしてないか

ただ、フレームワークを提案するのと、それを押しつけるのとは、ちょっと違う。残念ながら前回のファシリテーターの提案は「押しつけ」のように感じられたようだ。実際のところ、僕も若いころは「このフレームワークがオススメですよ。お宅の組織もこれで考えてみましょう」とゴリ押ししていた(笑)。そして、そのフレームワークが、どうにも組織やメンバーにフィットせず、でもファシリテーターが強く押してくるので受け入れざるを得ず、結果のところ苦しみ、のたうちながら必死に書き込んでいるシーンを何度も見てきた。その様子を見るにつれ「これは何か違うな」と僕は感じ、以降フレームワークの押しつけをしないよう、気をつけるようになった。

まるで、ハイヒールを履きたくない人に「これがカッコいい靴なのですから、あなたほどの方なら、ぜひ履いた方がいいですよ」と押し売りしている感じが、気になったのだと思う。仮にその場でハイヒールが売れたとしても、あまり履かれず下駄箱の肥やしとなる。ファシリテーターのいる前では、そのフレームワークで話が進むが、いなくなった途端に使われなくなってしまうようでは、何かが違うのだ。

疎外感が気になっている

もう少しだけ、押しつけられるフレームワークに感じる違和感について、書いてみようと思う。たぶん、僕が気にしているのは「そこにいる人が疎外されている感じ」もあるのだと思う。フレームワークは便利なものなので「このやり方でやれば、誰がやってもうまくいく」みたいな威力を発揮することもある。でも、逆にいうと「あなたじゃなくても、誰がやっても一緒」みたいな感じにもなりうる。フレームワークに合わせて考えるのが行き過ぎると「その人らしさ」が消えてしまったり「その組織ならではの味わい」が、見えなくなってしまうのが、ちょっと残念なのかもしれない。

なので、仮にフレームワークを提案するときも、なるべくシンプルなもの、その組織の味わいや、そこにいる人たちの個性を消さないようなものを、提案したいと思っている。

あと、ファシリテーターとして、謙虚さを持ち合わせていたい。「これが鉄板のフレームワークですからこれで考えてみましょう」では、ちょっと尊大な感じがするのだと思う。「例えばこんな風に考えると、皆で話しやすいかな、と思って提案するのだけど、どうでしょう。乗れそう?」ぐらいが、ちょうどいいのかもしれない。「乗れないよ」って感じだったら、提案をひっこめ、違うチョイスを出せるぐらいで、ゆるやかに動きたいところ。現場からは以上です。

2024/6/26朝 新宿ゴールデン街近くのビジネスホテルにて


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