医療系ライフサイエンスのデータ分析の背景知識と機械学習の本
機械学習一般の本の紹介
を書いてますが、医療系ライフサイエンスの機械学習本をこちらに切り出しました。
概要
AIとして機械学習、医療データ、医療AIの市場、医療画像解析、電子カルテなどテキストデータ、医療情報連携や法制度等、医療に用いる機械学習についての概要がうまく整理されている。またそれぞれ医療の画像、テキスト解析の事例もあり全体像を掴むのによいのではないか。
医療政策
Amazon書評を濃く書いてしまった 著者は日本を変えてしまえ が
医療政策に関わる方はもちろんすべて。医療政策にものを言うプロ(政治家、マスコミ、評論家、etc)の基本知識としてほしい)。のみならず、チュートリアルに毛が生えた程度の技術で「データサイエンティスト」を名乗るようななんちゃってではなくて、因果推論等データ分析を深めたいデータ分析関連の方にぜひ進めたい。
医療・健康政策に話が及ぶときの基礎知識として。代表的なテキストとのことで。
レセプトデータを元にした健康政策の分析集。コード例などはないものの高齢者の社会的入院、通所リハビリテーションと介護費への影響、特定健診・特定保健指導、国保の財政予測など具体的な分析例となっている。
臨床研究
データ分析・機械学習は知っていて医療分野のデータ分析をするための入門としてはわかりやすい。もちろん医者の卵か若い方がこれから臨床研究をやるための手引きとは思うが。医学を知らない私のような者にもとっつきやすい。もちろん医学の基礎知識は別途身につける必要はあるが臨床研究独特のデータの扱い方はどについては必読でしょう。
飾らず臨床研究論文への初心者への導入となっている。
類書はありそうだけれど執筆者が寄せ集めでバランス感がなかったり、基礎の解説ではなく著者の独りよがり愚痴だったりが多いところさすが羊土社。
臨床研究のデータ分析での支援となれば研究論文のお作法を押さえたり、先行研究の調査も必要となり、必須の本ではないでしょうか。
医療データ
リアルワールドデータ
病院などで記録・蓄積される患者データの総称をリアルワールドデータ(RWD)と呼びその活用が進んでいる。ただそのフォーマットの独特さやデータ連携の難しさも指摘されている。それに対し、健保などの保険データベース、電子カルテなどの現状の説明と臨床研究の関係について(薄い本なのでさわりまでだが)解説がある。
電子カルテ
電子カルテはベンダーごとの仕様などシステムが複雑と聞いたことがあります。本書だけで何かすぐできるわけではありませんが、類書がほぼないので全体像を知るには良いと思います。
レセプト
医療報酬明細のレセプトデータは手に入りにくいが、それを擬似データながらPythonで扱おうという本。ほんの導入ではあるが、まず入門としてはよいのではないか。
著者は医学研究者ではなくアクチュアリーの立場なので医学研究というよりも生命保険に医療データを活かすというような立場での本。
元厚生労働省官僚そして健保組合参与も務められた著者による解説書。厚生労働省のサイトに詳細仕様が公開されているのですが、複雑でよくわかりません。医者に何回通院したか、のようなことも細かな定義があったり、分析目的によっては必要な定義が公開されてないこともあります。それらに対して何ができて何ができないかまで踏み込んで詳述されています。
画像
医用画像のディープラーニングによる分析についての入門書。最新の研究に追いつくために毎年改版すると著者の方が仰っており、類書が複数あるがこの本が一番新しそうかつ基礎・応用・事例とのことで最初に概観するのにはよいかと思う。
前半は深層学習の入門。中間は医用画像特有の基礎知識で最後はレントゲン、CTなどの画像の種類と疾患別の事例集となっている。
PyTorchの入門書だが、前半はPyTorch入門、後半半分は肺がん画像解析のベンチマーク的なLUNAデータの画像解析の演習となっている。
医療統計学
隠れた名著。バイオサイエンスと題されているがライフサイエンスを含め他の分野でも十二分に役に立つ。相関係数、p値などそれぞれが散布図だとどういうイメージなのか。また、他群検定などは類書にあまり載ってない既述が多数ある。数理的な本でイメージが取れないならば本書で散布図をざっとみるだけでかなり理解が進むと思う。
医学以外でもデータ分析をする人は必読と絶賛される方もいらっしゃいます。医療統計としての事例が豊富であり、気づきづらいところ、間違えやすいところに丁寧な解説があるので、医療統計を扱うのならば読む価値は高いと思います。ただノンパラメトリックの検定の記述についてhttps://twitter.com/h_okumura/status/1067353061310455808 こんな指摘もあり、ここは要注意。
因果推論
因果推論の方法論として重要な「傾向スコア」の提唱者の著書。入門とはあるが本格的な本で初学者には難しい。一般的な因果推論の入門書というよりも、事例が全て医療系であり、後述のロスマンの疫学と同程度の疫学の本としても読める。
疫学
(医療の)疫学
疫学及び因果推論の入門書だが前書きに「科学的に真実に近づくための原則論」とある通り、ロスマン学とも言うべきどう科学を用いるかという方法論ともなっている。初学者にはやや難しいが研究者へのデータ分析支援を行うのであればこの程度までの知識は求められると思われる。
薬剤疫学
医薬品に特化した薬剤疫学、あるいは調剤レセプト等のリアルワールドデータの解説。概観する入門書のため具体的な分析手法の解説までは至っていないが分野を鳥瞰できる。
因果推論系の本は別記事を新たに作成しました 【決定版】因果推論本の読書ガイド31冊〜『インベンス・ルービン 統計的因果推論』和訳記念!
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