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うあーフェスvol.2レポート④秋山 卓登


写真|伊藤幹子

他の出演者には事前に「100均で何か1品、なんでもいいので買ってきてください。」と伝えられていた。

秋山さんは自分のパフォーマンスを始める直前、それをメンバーから回収し「今から5分くらいで準備して、残りの5分くらいでパフォーマンスします。」というようなことを言う。

出演者が買ったのは、「おもちゃの大根」「洗車用スポンジ」「こたつにいながらリモコンとかが掴める伸びるアーム」「マイクのような形の何か」などなど。秋山さんは、そうしたアイテムを一つ一つ順番に叩いたり揺すったりして、音を出し、それをサンプリングして重ねていく。

写真|伊藤幹子

100均のアイテムらしい音、というのが微妙にあるんだな、と思いながら、準備を皆で見守る。しばらくして「マイクのような形の何か」をマイクにしてこちらを向き、大きな声で「はい!と、いうことでですね!私は今、とある農家さんのところにきています!実はここ、あることで最近話題になっているんですねえ!」と、情報番組のリポーターになりきって、農家さんの畑に生えた伝説の大根を引き抜く、という設定の即興のショートコントが始まる。最後はホラーのような展開で終わる。

まず秋山さんがショートコントでパフォーマンスをやったということが私にとっては素朴に衝撃的だった。会場が沸く。こんなことやっていいんだ、というパフォーマンスの枠を押し広げる勇気が確かにある。

見守る参加者たち 写真|伊藤幹子

秋山さんのパフォーマンスが、前後半に分かれていて、前半が準備であることもとても重要だろう。[準備(音響機材・物品準備)+本番[準備(サンプリング)+本番(ショートコント)]]のような入れ子構造と言えるかもしれない。「今からパフォーマンスをします。だけど準備もパフォーマンスです。」ということは、パフォーマンスの境界を、強調しているようで逸脱していく。それも「あときとた」からここに根付きつつあるテーマかもしれない。

何より「これが私のパフォーマンスです!」という宣言はとても励まされるもので、それは、このフェスティバル全体の気分に確かに響いている。

津田 啓仁
文化人類学者(秋田公立美術大学博士課程在籍)
企業で人類学を取り入れた業務の開発に従事したのち
現在は秋田を拠点に干拓地・八郎潟を取り巻く自然環境について研究しています。踊りやパフォーマンス、俳句、映像等の表現行為にも関心があります。


うあーパフォーマンスフェスティバルvol.2
2024年2月4日(日)
秋田市文化創造館 スタジオA3

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