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総合型・学校推薦型選抜(AO・推薦入試)に必須の“職業観”とは?

こんにちは。日本アクティブラーニング協会理事/人財開発教育プロデューサーの青木唯有(あおき ゆう)です。

これまで、総合型・学校推薦型選抜(AO・推薦入試)指導に多く携わってきた経験から、総合型・学校推薦型選抜に象徴される大学受験の変化から見えてくる様々なことを、本ブログにて定期的にお伝えしています。
このような情報や視点を、受験生だけでなく保護者の方にもご認識いただき、大学受験を通じて形成される豊かなキャリアについて親子で考える際のきっかけとしていただければと思います。
※2021年度入試からAO・推薦入試は「総合型選抜・学校推薦型選抜」と名称が変わりますが、本ブログでは便宜的に旧名称を使う場合があります。

志望理由書の内容を考える時、「将来どんなキャリアを形成するのか?」といった大学卒業後の自分の未来について描くことが求められます。その際、自分がどんな仕事をするのかについて、どうしても考える必要があります。

オックスフォード大学マイケル・オズボーン教授による「2011年に小学生になる子供達の60%が今はない職業に就いている」という予測は、機械化やAI化によって今ある多くの職業がなくなるという雇用の未来について、多くの人が関心を寄せるきっかけとなりました。
この予測を悲観的に捉えれば、選択する職業そのものが消失し熾烈な雇用競争にさらされる時代が予想され、そんな将来に不安を抱く人もいることでしょう。

ただし、テクノロジーによる創造的破壊は今に始まったことではなく、過去に目を向けると、既存の職業が奪われることに対する激しい抵抗の歴史があったことがわかります。
16世紀に世界で初めて発明された靴下の自動編み機は、「靴下の手編み職人の仕事を奪ってしまう」という理由で特許申請が許可されませんでした。
また、19世紀初頭、産業革命下のイギリスで起きたラッダイト運動はまさに象徴的な事例です。機械化が進み普及することによって自らの職が奪われることを危惧した職人たちが暴動を起こし、工場の機械を取り壊すなどの社会問題に発展したのです。
ところが、その後の近代化のプロセスを見ると、産業やビジネスにおける機械化は止まることなく推進され続け企業の生産性は飛躍的に向上します。その結果、失業するどころか、むしろ個々の給与は増えていきました。

こうした歴史を踏まえたとき、AI 化が著しく進む現代においてはどんなことが見えてくるでしょうか?
テクノロジーの進化によってなくなる仕事があるということは、逆にAIを導入・普及させるために必要な仕事やAIを活用した新しい仕事など、新たに生まれる仕事もあるはずです。
そう考えれば、これからは雇用環境が刷新され新たなチャンスが到来する時代となると捉えた方が、実は現実的でしょう。

では、時代における “職業観” とは一体どのようなものなのでしょうか?

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そもそも “職業観” とは、仕事に対する自分の価値観のことです。「給料のため」「家族のため」「社会のため」、、、一人ひとりそれぞれ異なるでしょうし、原則として良い悪いもないはずです。
ですが、どんな立場の人であれ時代の流れに抗って存在できる人間はいません。そして個々の価値観が形成される前提には、その時その時の社会的背景が必ず影響します。

前述のオズボーン教授の論文によれば、コンピューターに代替されない仕事に就くためには高度な知的創造性を要する職業、つまり「創造的、社会的知性を求める業務」が残るだろうと予測しています。
このような時代の大きな変わり目にあることを認識したとき、未来社会を生きる人は例外なく創造的、社会的知性を鍛える必要があると考えた方が自然です。

とは言え、創造性…?社会的知性…?どうやったら鍛えられるの…?

こうした話をすると非常に難しく感じ不安になるかもしれませんが、案外シンプルなことなのではないかと感じます。
それはつまり、これからの時代は「人間ならでは」の仕事が必要とされるということです。さらに言い換えれば「人間ならでは」の “人間” の部分を “自分” に置き換えるのです。

つまり、AIによって既存の仕事の多くが代替される時代においては、自分ならではの仕事、自分にしかできないこと、自分だからできること、これらを見つけていくプロセス自体が個人の価値観を超えて誰にとっても非常に重要になっていくのではないでしょうか。

そのためには、自分の個性を知ることです。
好きなこと、夢中になれることを見つけ続けるのです。

もちろん、自分自身の性質がどんなもので関心がどこにあるのかについては、予め設定された時間割どおりの学習や、教科書や参考書にある情報をシステマティックに勉強するだけでは決して見つからないでしょう。

最も有効な方法は、気になったことがあれば「まずやってみる」というスタンスです。

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自ら行動をおこせば、必ず、“これはものすごく面白いな” とか、“ちょっと自分には向いていないかもしれないな” など、体感的、直感的に掴める「自己に対する生の情報」が得られます。こうした自分に対するデータは、実は何にも変えがたい知見です。なぜならば、これらを蓄積し続けていくことで、徐々にではありますが確実に「自分ならでは」の領域が形成されていくからです。
それらはまさに、デジタル化やAI化が進む時代においてもテクノロジーに代替されない「人間ならでは」の強みを生かした資質となるはずですし、結果として自らの「職業観」に繋がっていくはずです。

実は、この一連のプロセスは、これまでの活動や行動の軌跡から自分オリジナルのストーリーを紡ぐことが必然となる総合型・学校推薦型選抜入試とまったく同質であり、従来型のペーパーテストでの選抜試験だけではなかなか得がたいものです。

と考えると、これからの時代、進路を決める際には、志望大学・学部の選択はもちろんですが、どのような入試形式を選ぶのかにおいてもその後のキャリアが大きく変わる可能性があるのではないでしょうか?


次回の記事は「志望理由書を執筆するための“文章力”の鍛え方」です。
お楽しみに。

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