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擬態するポップアップショップ

コンビニに擬態

atomosのコンビニ「atomos mart」が期間限定でオープンしたようです。

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日本らしいインターフェイスの「コンビニ」をコンセプトに、ファサードや什器や品揃えもatomos風に翻訳されています。芸が細かくて素敵です。

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https://media.atmos-tokyo.com/atmos-mag-journal/atmosmartpopupshop/

「コンビニ」にインスピレーションを受けた「AIR MAX COLLECTION」の発売からのアイデアのようですね。

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https://hypebeast.com/jp/2021/3/atmos-nike-air-max-japanese-convenience-store-inspired-collection-release-info


類似事例として2018年にはカルティエのコンビニ「カルチエ」もありました。これも素晴らしかった。

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https://www.wwdjapan.com/articles/699849

グローバルで展開するラグジュアリーブランドが、そのブランド名をカタカナにデフォルメしてしまう意思決定!

ネーミングだけでなく、外装内装を含むアートディレクションや多くの名店とコラボした商品も上質でした。

“日常をプレシャスに”というコンセプトで、「コンビニ」を特別な場所へアップデートしたようです。


銀座ソニービルには藤原ヒロシ氏がディレクションする「コンビニ」もありました。

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https://www.fashion-headline.com/article/19750


さらに遡る2013年にはマスターマインドのコンビニも。

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https://www.fashion-headline.com/article/6754


昭和レトロ喫茶に擬態

一方、「Starbucks coffee」が「スタアバックス珈琲」として昭和レトロ喫茶に擬態したこともありました。

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https://www.starbucks.co.jp/press_release/pr2019-3041.php


ゲーセンに擬態

そしてシャネルはゲーセンに。

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https://www.wwdjapan.com/articles/574084

エンポリオ・アルマーニもゲーセンを。

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https://www.fashion-press.net/news/48962

ゲーセンやアーケードゲームをモチーフにしたブランドは他にもありましたね。


お祭に擬態

シャネルは和モダンな夏祭りも。フェスではなくお祭り。

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https://www.wwdjapan.com/articles/707861

コンバースは絢爛豪華な夜祭シズル。

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http://www.shoesmaster.jp/news/2018/02/avant-converse-last-collection-at-shinjuku.html


ブランドが異業種に擬態するポップアップショップの事例をあげてみました。「カフェ」「バー」「花屋」など、あげていったらキリがありませんね。


世界観を拡張するためのモチーフ探し

グローバルブランドは特に、日本らしいモチーフを取り入れて、その模様を世界に発信することで、「オリエンタルで良質な違和感」を演出したいという狙いがみえます。

「祭」「寺社仏閣」「城」「古民家」「銭湯」など古風な文化的象徴から、「コンビニ」「回転寿司」「屋台」「カプセルホテル」「自動販売機」といった現代的装置まで、ブランドはモチーフ探しに必死です。

これはポップアップショップに限りません。


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細部にこだわり本気で遊ぶ

コレクションやパーティ会場の装飾だけでなく、期間限定店舗として細部へこだわり尽くすことで、メッセージに本気度が加わります。

遊び心あふれるアイデアなのに「細部にこだわり本気で遊ぶ」と、どこを撮ってもSNSの被写体だらけで話題がブーストするので、制作陣は手が抜けません。

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ブランドは協賛したい訳じゃない

「うちのブランドは協賛したい訳ではなく主催したいんです。」

とあるブランドの担当者にこんなことを言われたことがあります。しかもひとつではなく複数のブランドから。

街なかでインパクトのあることを企画するものの通常ルールでは実施できない場合、その場を管轄する団体やイベントへ協賛する体裁をとったうえで実施を調整していくことがあります。ですが、ブランド側からとにかく「協賛はNG」と言われてしまい着地できなかったことがありました。「協賛:株式会社〇〇」という表記自体がNG、と予め決められていたようです。

ブランドは自ら自由に主催したいんです。

明確にパーパスが定まっているブランドほど、実施内容や表現へのこだわりが強く、協賛やコラボレーションの許容範囲が狭い傾向があります。

ブランドはわがままです。他の団体やイベントに対して大きな方向性は合意しても、詳細表現が合致することはなかなかありません。

そんなわがままなブランドは、外部パートナーに頼らずに全て自分たちでやりたいように企画してしまうほうが都合がいいのでしょう。

大手コンビニとコラボしても制約だらけなら「自分でコンビニをつくってしまおう」ってなりますよね。


遊び心がブランドの懐の深さ

ブランドが独自のメッセージを自由に発信する場づくりにおいては、期間限定で別業態をモチーフにお店をつくってみる遊びがちょうどよいようです。「え!こんなのあり?」くらいを狙わないと話題にすらならない時代ですし。

少し話がそれますが、このGUCCIのBAGすごいですよね。

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これからの潮流は?

拡張していくブランドは、コンセプトやその意味づけにおいて、まだ手付かずのモチーフをこれからも探し続けるでしょう。

これからのモチーフの潮流はなんでしょうか?

過去を振り返ってみると、「前衛的な現代アートの作品の文脈」から「大衆ブランドの広告モチーフ」に採用されていく流れがある気もします。

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https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%AD%E6%9D%91%E6%94%BF%E4%BA%BA


エルメスが2019年に実施した「ラジオエルメス」(インターネットラジオ放送局)のような方向性も、拡がりが面白いですよね。

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https://www.fashion-press.net/news/52477


遊び心に溢れる意外な組み合わせのお店ができると、街の文化度にも奥行きをもたらします。

新たな切り口のポップアップショップをこれからもwatchしつつ、自分でも企画していきたいと思います。

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