マガジンのカバー画像

碧木和弥の詩(うた)

12
運営しているクリエイター

2021年12月の記事一覧

さいごの欠けた月

さいごの欠けた月

  まだ、指先が冷えて痛む。
 水仕事をしていたマンションから見える人通りが、描き消すように無くなった。車もごくたまに通る未明くらいの台数だ。それも、今は街の暗さで、音で分かるくらいだ。
 椅子に座って、煙草をくわえた。暖かく感じるライターの炎。一口目の旨さ。目に入った煙が染みた。
 ぐい呑みにぬる燗をいれて、舐めるように一口。ぐっと一口。
 「今年も最後の日か」
 つぶやいて、酒が体を温めるのを

もっとみる