ずっと眠っていたい
中学時代の夢は科学者になることだった
高校に入り最初のテストを受けあきらめた
白衣の夢は幻となった
三年にあがると
古いビリヤード場で放課後を埋める
それが日課となる
何十回 何百回ポケットに入れても
心は埋まらないのに
繰り返し
繰り返し
球を突いていた
卒業して就職をする
何度か転職したけれど
変わらないのは
小さな会社で 小さな俺が
小さな利益を生むということ
部屋に戻るとメシとシャワーを済ませ
電気を消して横になる
今夜は眠れない
扇風機の風がぬるい
真っ暗な天井を見上げる
どこかしらない静かな海辺で
波の音を聞いていたい
叶わなかった夢と抱えた不安は
すべて焚き火にくべて
三年くらい
ずっと眠っていたい
※十年ほど前
某投稿サイトに上げた作品の再掲です