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映画『天鹿・渡鴉巡礼 - 森に還ったワタリガラス』

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ボブ・サム 奈良裕之ドキュメンタリー映画『天鹿・渡鴉巡礼 - 森に還ったワタリガラス』の制作秘話、映画では語られなかったエピソード、星野道夫さんへの想いなど。これを読むと映画が1… もっと読む
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「銀の心」に「金の心」

 星野道夫さんの書籍を初めて手に取ったのは今から20年程前。『オーロラの彼方へ』という未公開の写真と、星野さんの様々な著書の引用文からなる90ページほどの単行本でした。  皆が強く思いながらも、それをいざ言葉にしようとすると難しい心の形。それを星野さんは簡素でわかりやすい文章の中に、多くの人が「そうそう、それそれ」と共感できる表現を用いて綴っていました。  写真以上に星野さんの書く文章に感動し、僕は「一度星野さんに会ったみたい」と連絡先を探しました。そして、同書の最後のペ

ボブ・サム&奈良裕之ドキュメンタリー映画『天鹿・渡鴉巡礼 森に還ったワタリガラス』製作支援サポーター募集!

ボブ・サムさん、奈良裕之さんの巡礼の旅の映像を編集しています。 https://aoki-geki.com/weblog/1500/ 語りを行った翌日のボブさんは、いつもぐったりと憔悴しきっていました。 クリンギットのローブを羽織ると、複数の先祖の魂が憑依し、その魂がボブさんに物語を語らせるのだそうです。しかし、その魂たちはしばしば朝方まで帰ることなしに、ボブさんを眠らせてくれないないのだと言います。 東京、静岡、富山、熊野、天河、生駒、名古屋、神奈川、会津、札幌と巡

目標達成!ネクストゴールにむけて!! ボブサム&奈良裕之ドキュメンタリー映画『天鹿渡鴉巡礼 - 森に還ったワタリガラス』クラウドファンディング

ボブサム&奈良裕之ドキュメンタリー映画『天鹿渡鴉巡礼 - 森に還ったワタリガラス』クラウドファンディング、おかげさまで目標金額を達成しました。ご支援いただきました皆様本当ありがとうございます!只今ネクストゴールに挑戦中です。明日5日締め切り!完成披露オンライン試写会へのご招待特典もあります。ぜひご支援ください。 https://aoki-geki.com/weblog/1500/ 2019年夏、熊野の滝の撮影に行く途中、僕は足を滑らせカメラバックごと川に落ちて、胸まで水につ

白いワタリガラス

 映画『天鹿・渡鴉巡礼 - 森に還ったワタリガラス』の中で、ボブ・サムさんは白いワタリガラスの物語を語っています。  「かつてワタリガラスは白かった」!?  そして、白いワタリガラスが、なぜ黒くなってしまったのか。  その驚くべき言い伝えは、実はアラスカ先住民クリンギット族だけのものではなく、シベリア民話の中にも登場することを知り、さらに驚きました。 シベリア民話「大地の大きさを計ったワタリガラス」  星野道夫さんの『森と氷河と鯨 ワタリガラスの伝説を求めて』のあとが

ワタリガラスがこの世界にどのようにして光をもたらしたのか

2019年にボブ・サムさんが来日した際に語った神話『森に還ったワタリガラス』(Raven walks into the forest)は、こんな風に始まります。 ワタリガラスがこの世界にどのようにして光をもたらしたのか。これはクリンギット族の創世神話とも言われる物語『The box of daylight』(太陽の箱)の中で語られています。 神話の中でワタリガラスは、しばしば「トリックスター」と表現されます。 「トリックスター」とは「神話や物語の中で、神や自然界の秩序を

風の神話と星野道夫が綴るアンカレッジ時代のボブ・サム

『風はこうして家を見つけた - How wind found a home』 2019年夏、ボブ・サムさんが来日した際に語った物語のひとつです。 貝がらを耳にあてると、風の音が聴こえるのはなぜだろう・・・ 子どもの頃、誰もが抱くこんな疑問や、自然への好奇心を思い出させてくれるこのお話は、先祖代々受け継がれる神話を語り続けてきたボブ・サムさんが、はじめて自分で創作した物語だそうです。 (※この物語は、詩人・谷川俊太郎氏の訳で『かぜがおうちをみつけるまで』(スイッチ・パブ