見出し画像

短篇小説「ある不良少年」(二)

次に彼は自分の甘ったるい根性を叩き直してやろうと試みたのである。
彼は虫を一匹殺すのに、三十分も考え込んだ。
いくら人に舐めたマネされようとも、殴ろうなんて思ったことはなかった。後輩にもやさしく、ただただ彼は優しい心の持ち主である。

しかし、それを彼は邪心と思ったのである。不良にそんな心は必要ないと一人合点していたのだ。
蚊を殺すことから始めた。虚しい気持ちになりながらも殺り続けた。そして三日も続けると彼は、ああ僕は地獄送りだといきなり後悔し始めて、情けなくなって寝床でぽろりと涙を出したのである。おかげで彼の優しい心は死に際までこびりついていた。

その他諸々、彼は不良になるための工夫をこらしていった。
目付きを悪くしてみたり、一人称を俺と言ってみたり、遅刻してみたり、授業中に寝てみたり等々。
もちろん先生などからの風当たりは強かった。彼らは期待を裏切られたと勝手に絶望していたのである。彼らを絶望させるほど少年の悪行は日に日に酷くなっていった。彼は清々しい気持ちで己の汚い毛皮を破りとった。

ある時のこと、彼は焦げパンみたいになった顔色を自分でしたのに気にしていた。それを幼馴染に馬鹿にされた時である。彼はこれまでに無いほど怒り狂った。ぶち殺してやろうとも思った。夏の日のことで気が狂っていたのである。
そして、その幼馴染をぶん殴った。おかげで彼の父に今までの悪行とぶん殴った事がばれたのである。彼は父に顔が無くなるまでぶん殴られた。彼の父は、ぶん殴ったことを怒りながら、彼をぶん殴ったのである。父の矛盾に彼は憤怒に燃えた、かの狐の毛皮はこの憤怒によって跡形なく焼かれていた。
少年は実の父をぶん殴り、家を飛び出した。

風が当たる。その度に彼は人を殴った。
ぎこちない不安を感じながら、解放を喜んだ。
ある時...

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?