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「竜胆-」Vol.12【祇園の夏、Ver.3】前半

プロの作家に文章指南を受けている。

余談は、下記に書きました。

では、日々の千本ノック。トコトコ行く。

昨日のメモを書いて、どんどんと書く。

⑴、素人のぼくがやってしまいがちなこと。小説とわず、自分勝手にじぶんのフォーマットを作り込んで「それがいい、それがぼくのオリジナルだ」と思いこんでしまうこと。(思い込み文章)

⑵、羅列の順序、

⑶、粉屋のドアを開けてからの三重表現、

ドアを開けた。(室内の空間の広さ、なかの物語がいまから始まるぞ!)

ドアを押した。(男はなにを見たんだ? 男の心理描写)

ドアに入った。(実際になにがあったんだ? 室内のモノの描写)

男が目を細めた。(柔道でいう技をかける手前、襟を掴む)

下記描写を丁寧にしていく。

⑷、目を細めた。(粉屋に入った男のくだり)

注記、今回の原稿は、先生が天気が晴れたままと勘違いしたまま進めてしまい、男が粉屋に入ったくだりでは外は晴れになる。

作者都合で、天気(状況)、時間(昼、夜)、登場(人物)を簡単に変えるのは、修行にならない。困ったときにはかつての文豪クラスの作家でもよくやっているのだが、修行なのだからそれは禁物!

ダクトから薫りが漏れている(に違いない、男の一人称(想像)も含まれる)。

ダクトから薫りが漏れていた。(前から漏れていた。三人称、)

⑸、最初の件で、男が「じっと」手を見つめる。「じっと」は書き癖。

もし、それが筆者の作為的な描写でも、読者はそんな部分、いちいち覚えていない。読者は読まない。

そこだけはわかってくれ!なる筆者の含み(ワガママ)はダメ!

⑹、その他の書き癖、「するどい」「するどく」

男の背中に水ふうせんが当たる場面。

①冷たい痛みがはじけた。

(文)プロ

②痛みが冷たくはじけた。

(文)プロ


「竜胆-」Vol.11【祇園の夏、Ver.3】

プロ(直し)

例1)もう夏だった。蝉の音がうるさい。
蝉の声は、地中からいっせいに湧き出したのだ。違いない。
それほどに蝉の音は耳障りに感じた。
(文)プロ
例2)蝉がうるさい。目覚めたら夏がきていた。
(文)蒼ヰ瀬名
例3)目覚めた。蝉だ。夏がきていた。
(文)蒼ヰ瀬名

高い太陽の陽が、アスファルトに照って、陽炎があがる。焼けた路地のうえで昨日の雨で湧いたミミズがひからびている。
きゃっ、路地で打ち水をする女は、ガイドブックを片手にあるく若いふたりのおんなに会釈をする。若いふたりは、黄色いのれんを一瞥し、たちどまらずにとおりすぎた。打ち水を終えた女は腰に手をあてからだをのばす。陽の傾きぐあいをたしかめるように手で額に日陰をつくって夏の青い空をみあげた。雲ひとつない。ドアに桶を立てかけて女はしゃがんだ。のれんの横にあるメダカがはいった甕をのぞきこむ。水面のじぶんがゆらゆらする。女は肩をすぼめた。
ゆらゆらとじぶんの顔がうつる甕のふちに、手をかけた女はそのまま顔をあげた。路地をくだった南の竹林に、ふるい木造のアパートがあった。そこに、きのう祇園祭であった男のへやがみえる。一重の目をほそめ女は、窓がはんぶんあいた二階の男のへやをみた。
人影は確認できなかったが女は二階の、傾いてでっぱった男のかどべやに、小さく手をふってみた。

しゃがんだ位置から男のへやがみえた。男のへやの窓がはんぶんあいていた。人影は確認できなかったが女は二階のかどべやに小さく手をふった。
古都の北にある禅寺からすぐの路地裏に、時間になると常連客でにぎわう女の店があった。

部屋の窓から、甕を覗きこんでいる女を眺めていたらいきなり手をふってきた。男は首を引っこめた。女に手を振りかえそうとした自分にハッとして、男は笑った。自分への照れ笑いだった。

夜どおし女と交わって男は疲れて果てていた。昨日から女と交わったままの、全裸の姿の男は背中をたおして布団に仰向けになった。ぼんやりと天井のしみをみつめた。
昨日の夜、祇園祭でたまたま出会ったふたりは知らぬまにくっつきそのままそういう関係になった。
昨日はあの女とどこであったか。男はおもいだせなかった。

男はしばらくは天井を見つめていた。唇の端がくすぐったい。笑い続けている自分がおかしかった。

畳と、布団の角が黒茶いろに汚れていた。女の月の血だった。男は部屋にかけ布団がないことに気がついた。昨晩は交わりすぎた。全身が砕けるようにいたむ。女と深くながく交わりすぎて、尻の割れ目のうえの骨につながる女と一晩じゅう繋がった根っこがまだ痺れている。尾骨が、割れるようにいたんだ。

男は腕時計をみる。三時を回っていた。服を着て部屋をでた。

男がアパートの階段を降りると、郵便受けに、封のない手紙が入っていた。女のまる文字だった。男は読まずにポケットにねじ込んだ。それから外便所で小便をし、手は洗わずにズボンで拭いた。

路地へむけて歩きだすとすぐに軽くうすいプラスティック容器でも踏んだような感覚があって男はシューズをあげる。陽にあたらぬ緑の湿った土いちめんに蝉の抜け殻ばかりがまかれてあった。

黒い艶のある小犬がしっぽをふって近づいてきた。男は、力のかぎり便所へと蹴りあげた。黒い小犬は、便器のパイプにはげしく腹をぶつけ、白い泡を吹いてぐったりした。首輪がついていた。

路地にでるアパートの塀と電柱におなじ貼り紙があった。男は路地に顔をだして周りをみる、するとそこらじゅうに迷い犬の貼り紙があった。男は一歩さがって便所をみた。

男は携帯をだして電柱の貼り紙に電話をした。

五分もたたないうちに小さな女の子を連れた母親がやってきた。親子は男にふかぶかと頭をさげた。

男はしゃがんで少女の目線になって抱いていた艶のある黒い小犬をだいじそうに返した。男が小犬の腹をさすると小犬がキャン、と吠えた。心配そうな顔をする親子に男は指でちかくの動物病院を教えてやった。母親はことわる男を無視してポケットに札を一枚ねじこんだ。親子は黒い小犬を抱いて去っていった。電柱の貼り紙に唾を吐いた。

男はアパートの塀にもたれかかりポケットから札と手紙をとりだした。札はポケットにねじこんだ。男は手紙をよんだ。こうかいてあった。
「昨夜は(朝までかな。笑)、とても楽しかったです。よる、あなたのへやの窓からランタンがみえた店、それが私の店です。布団を汚してしまいました。ごちそうします。一度、お立ち寄りください。まどか。」

男は路地にでた。

夏の熱さが、肌にねばついた。古都の盆地のねばり気だった。

夏休みがはじまったばかりの子どもらが水が干あがった路地ではしゃいでいた。門の前でベビーカーを片手にビニールプールを膨らませている父親がいた。ふたりの子どもがありえない勢いの水鉄砲で撃ち合いをしていた。ほかの子らは水ふうせんを投げあっていた。後ろから、あっ、と声がきこえた。男は山を描いて飛んできた水ふうせんを、柔軟にひざを使って、力を吸収するようにうまくキャッチした。

それから男はあごで空をさした。子どもらはポカンとしていた。男は水ふうせんを頭に乗せた。子どもはまた首をかしげた。男は空を指さし、子どもらがみあげている青い空にむかって思いきり水ふうせんをほうり投げた。五、六人のなかのひとりが、男の意味がわかったといったように目を輝かせ、水ふうせんの着地点を目指して上空をみ、あんぐりと口をひらきながらふらふらと、路地をさまよう。水ふうせんは空をどこまでもあがっていった。一番高いところでとどまって、やぶれそうなほどうすい膜のなかに太陽をつつみこんだ。それからゆっくりと下降をはじめた。

ふらふらと着地点で待ちかまえている子どもの頭のうえで、水ふうせんはいきおいよく、べちゃっ、と弾けた。とくに男の子らは目を輝かせて、ぼくにも投げてと男のところに集まってきた。

これはもっと面白いぞ。そういって男はピッチャーのように振りかぶって中腰でまちかまえる脳天めがけて水ふうせんを手加減なしで容赦なくなげつけた。

ベチャ。みんな腹をかかえて笑った。男は路地に唾を吐いてまた手紙の主の女の店へとあるきはじめた。

男の背中に痛みが冷たくはじけた。背中がぬれた。男が振りむくと子どもが走って逃げていった。背中をぬらした水がひんやりした女の愛液のようになって男の股をぬらした。下腹部が隆起した。男は昨晩の交わりをおもいだす。いまごろアザになっているかもしれない。

ポツ、ポツ、と雨がふってきた。さっきまで雲ひとつない空がくらくなりはじめた。

黒い雨雲で空が覆われた。夜のようにくらくなった。

(注記、ここからプロの先生は、昼間のままと勘違い、ご愛嬌で)

ベルのついたドア横にある、夜の営業でつくはずの銅製のランタンの灯がついていた。この店だ。男はポケットに手紙を仕舞った。

ドアの前に立つ。ガラス越しに、白いエプロンが動いていた。ドアの向こうは夏のまぶしさに白く飛んで、暗い室内ははっきりとは見えない。

(文)プロ

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からでも店のガラス越しに、エプロンを腰に巻きつけた女が、狭いカウンターのなかで食器を洗っている姿がみえた。(元の文、蒼ヰ瀬名)

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昨日、祇園祭であった女に違いない(と思った)。
ドアの横から蛇腹のダクトがつきだしていた。コーヒーを煎った薫りが漏れていた。男はのれんをくぐってドアを押した。カラン。ベルが鳴った。
レジの横に業務用の焙煎機があった。
レジを抜けると、カウンターの止まり木が四席だけの小さな店だった。
男は室内の暗さに目を細めた。
カウンターの背後の段に、カップが並んでいる。厚手の民芸調のカップに清水焼、そこに薄い白磁の高級そうなカップも混じっている。
カップの種類が確かめられるほどに、室内の暗さに目が慣れた男は、もう一度、白いエプロンを巻いた女を見た。
狭いカウンターに立って、食器を洗っている。
満席だった。女は顔をあげた。
男が帰ろうとすると、一番奥の、洒落た京友禅をきた老人が、傘がないしいま帰りますからどうぞといって男に席をゆずった。

男は礼をいって奥の席に黙って座った。ピアノのジャズが流れていた。
五分も経たぬうちにほかの三人の客もかえっていった。
女の店の作りは、路地に面した壁側に、ガラスがいちめんに貼られた洒落た店だった。
女の店の前に、男に水ふうせんをぶつけた子どもが集まってきて店のなかにいる男と女を囃したてた。女は男にメニューを渡すと、おれはここに飲みにきたんじゃないというふうに、勢いよくメニューを閉じた。
元の文)一番大きなカップの写った写真を指さした。


2022/01/10/Mon_1:41_Vol.10.ver.2


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