太古の詩人の古い炎(古典のブルース)
「雨が降り続けば、堤防は決壊」
メンフィス・ミニー
1
私を燃やしているのは、
太古の詩人の古い炎。
私を燃やしているのは、
太古の詩人の古い炎。
その炎は、私の「記憶」を燃やし尽くすまで、
消えないだろう。
輝かしい炎だが、
夜のように冷たい。
輝かしい炎だったが、
夜のように冷たかった。
そのメラメラと揺れる光は、
生と同時に死をも、浮かび上がらせる。
黄ばんだ紙のインクの炎に、
私の目は釘付け。
黄ばんだ紙のインクの炎に、
私の目は釘付けだった。
それは、言葉に意味を与えるのか、それとも、
意味から言葉を奪うのか?
私を燃やしているのは、
太古の詩人の古い炎。
私を燃やしているのは、
太古の詩人の古い炎。
そして私を凍りつかせるのは、
「現代詩」の似たり寄ったりのブリザード。
2
神がみんなに話しかけたとき、
彼らはどこに行っていたのか?
神がみんなに話しかけたとき、
彼らはどこかに行ってたに違いない、
テレビに出てくる億万長者(または、文化人)を、
神と見間違うなんて。
エミリー・ディキンソンは消えた、
すべての劇場や学校から。
彼女は消えてしまった、
あらゆる劇場や学校から。
彼らは彼女から言葉を奪い取り、
詩人を「感性だけの抜け殻」に育て上げる。
ジャンクヤードではスクラップたちが、
目をバッチリと開かせている。
ジャンクヤードではスクラップたちが、
目をバッチリと開かせている。
彼らにとって、「考察」を続ける工場は、
死ぬのには、つまらなすぎるのだ。
私を燃やしているのは、
太古の詩人の古い炎。
私を燃やしているのは、
太古の詩人の古い炎。
Microsoftや、イーロン・マスクにだって、
その炎を買収することはできまい。
3
窓から忍び込んだ大鴉が、
パラスの胸像にとまっている。
窓から舞い込んだ大鴉が、
パラスの胸像にとまっている。
近くを通る人々は、
「鐘の音」にさえ、背筋を凍らせる。
「虎よ、夜の森の中で、
輝き燃える虎よ。
虎よ、夜の森の中で、
眩しく燃える虎よ、
どんな『深淵』か、はたまた『大空』で、
お前の眼の中の炎は燃えたのかーー」
それは、草の葉に広がる、
広大な宇宙のよう。
それは、草の葉に広がる、
広大な宇宙のようだった。
その葉とは、友よ、子供たちが突きつける、
大人たちへの「問い」なのだ。
私を燃やしているのは、
太古の詩人の古い炎。
私を燃やしているのは、
太古の詩人の古い炎。
いにしえの彼らは持っていたのだ、
「護衛を交代させる勇気」を。
4
私が探しているのは、
太古の詩人の古い炎。
私が求めるのは、
太古の詩人の古い炎。
私は彼らの肖像画を描き、サムネにし、
彼らの言葉を盗み、クオートにする。
想像力でおいてのみ、
人は真理を語ることができる。
想像力でおいてのみ、
私たちは真実を話すことができる。
宗教家の示す終末は掻き消される、
メンフィス・ミニーのブルースによって。
いつかエミリー・ディキンソンは私の庭に、
帰って来るに違いない。
彼女はきっと、私の庭のどこかに、
戻って来るはずだ。
彼女の炎がもう一度光り輝いたら、
「世界を燃やし尽くして」と頼んでみよう。
私を燃やしているのは、
太古の詩人の古い炎。
私を燃やしているのは、
太古の詩人の古い炎。
そして、それは雄叫びをあげるのだ、
「詩を装った沈黙に、言葉を奪われるな!」と。