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無垢とガチャピン

君が昼過ぎに目を覚ますと、
二日酔いで頭はガンガンと痛み、
脱ぎ捨てられた服が、
ベッドの渦に巻かれていた。
昨夜の騒ぎが、
耳の奥でフラッシュに照らされ、
不自然な笑みを、
去年のミス・ユニバースのように浮かべる。
シャワーの中で、
見知らぬ贅肉に目をやる。
乾く喉にばかり水をやり、
君は花を枯らしてしまう。
そして、ムックとガチャピンでも、
老いた心を笑わすことはできないーー

石ころから金塊を生み出す、
そんな錬金術に命をかけ、
君の毎日はホラ話、
ワイヤーが丸見えのカンフー映画。
ご自慢の若い愛人は、
君の嘘をプロモートし、
君をカラカラのミイラになるまで、
稼がそうとしている。
当の君は砂の上に、
シャンパンで散文を書きながら、
マリアッチバンドのように、
陽気に情熱を歌い上げる。
しかし、ムックとガチャピンでも、
老いた心を笑わすことはできないーー

週刊誌がそれぞれ別の話題を、
止めどなく喋り続ける。
君に以前の注意力があったら、
誰が愚かか見抜けたのに。
通りには一人か二人、
エコーのような人間が立っていて、
聞こえてくるスローガンを、
飽きることなく復唱する。
若い頃の君だったら、
そんな蟻地獄から逃れようとしたのに、
今じゃ耳も遠くなり、
勇気もすっかり消えた。
その上、ムックとガチャピンでも、
老いた心を笑わすことはできないーー

君は汗だくの労働者を使い、
穴を掘らせる。
邪魔な動物は捕獲し、
そのまま壁に埋め込んでしまう。
君は自然から憎まれ、
怨霊からは呪われ、
頼みの政府からも、
コストで責められる。
「毎日毎日、
ぼくらは鉄板の上」ーーアハハッ、
店のオヤジとケンカし、
海に飛び込みたい気分。
とにかく、ムックとガチャピンでも、
老いた心を笑わすことはできないーー

興奮した坊主が、
君にこうわめく、
「私には見える、
お前が地獄に堕ちる光景が。
私が絵に描こう、
鬼がお前の舌を抜く様を。
私が歌にしよう、
針の山に立つお前の姿を」
恐怖とは、古くからある
ビジネス形態のひとつ。
君を脅かして、
嘘っぽい壺を買わせるのだ。
なにより、ムックとガチャピンでも、
老いた心を笑わすことはできないーー

妬みが空を覆い、
虚栄が市場に広がり、
道化の格好をした君に、
冷たい雨が降ってくる。
たった一晩生きるために、
でたらめばかり並べ、
君は息を切らし、
塀にもたれかかっている。
着飾れば着飾るほど、
醜くなっていく。
富を手にしても、
悪くなる一方だ。
何故なら、ムックとガチャピンでも、
老いた心を笑わすことはできないからーー

一匹の老いた亀が、
ダイヤモンドの甲羅を持っていた。
彼は千年以上も、
その池に棲んでいた。
密売人が金儲けのために、
亀を捕まえようとしたが、
生物学者がそれを阻止し、
亀を標本にしてしまった。
これが何の話かって?
「人生」についての話だよ。
人の生涯は密売人にでも、生物学者にでも、
そして亀にでもなりうるのだ。
ただし、ムックとガチャピンでも、
老いた心を笑わすことはできないーー

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