#2 自分がソーシャルスキルの研究を始めた理由 -「困った子」ではなく「困っている子」のために-
みなさんこんばんは、おにぎり先生です。
前回の記事(#1)はこちらから!
前回の記事や前々回の記事では、たくさんのスキ!をありがとうございます🍀コメントも、とても励みになりました。最近は研究も本格化してなかなかnoteを書く時間をとることが難しいのですが、時間を見つけて、自分のペースで更新していけたらと思います!
<はじめに…>
最近見たドラマで、「問題のあるレストラン」という作品があります。
私はこのドラマをリアルタイムでもみて、今でも何度も見直してしまうくらい好きなドラマなのですが(坂元裕二さん脚本のドラマの話は追々記事にしようと思います(笑))
このドラマの好きなセリフはたくさんあるのですが、その中でも第6話で烏森さん(演:YOUさん)という方が言った台詞にこんなものがあります。
泥の中で溺れている人に誰かが手を差し伸べなきゃいけない。目をそらしたりぶつぶつ言ってるだけじゃ泥の中の人は孤独になっちゃうから誰かが一緒に泥に入るの。あっちの仕事はそういう仕事。復讐って怒るだけじゃできない。ちゃんと楽しく奇麗に生きることも復讐になる。田中は楽しく奇麗に生きることを目指しなさい。私は怒る方をやる。
主人公でレストランを経営する田中さん(演:真木よう子さん)に、自身があっちの仕事(=弁護士※今回は田中さんの友人が被害を受けたセクハラ裁判を担当する)を頑張るから、あなたは暖かいレストランで頑張ってほしいというエールを送るシーンでした。
これって教育現場のことにも置き換えられるんじゃない?って思いました。
楽しくきれいな仕事の具体的な例は人それぞれの意見があると思いますが、「あっちの仕事=世の中のマイナスと向き合わなければならない仕事」は教育の世界を見ている皆さんなら想像がつかれるかと思います。
虐待、貧困、少年犯罪、ヤングケアラー…
私は非常勤職員という形ではありますが、世の中でこのような「生きにくさ」を抱えている子どもたちの指導をする経験をしています。
勿論その仕事はやりがいがあるし、子どもたちに寄り添えるし、こんな価値のある仕事はないと思っています。しかし、
世の中の人たちからみたら「あっちの仕事」ー誰かがやらなければならない仕事になってしまうと思うんです。
なんだろうなぁ。この言葉にしにくい気持ち。という歯がゆさを感じながら、今日の記事を書いていきたいと思います。
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今回の投稿では、
「なぜ私がソーシャルスキルの研究をするに至ったのか」について書こうと思います。
前回は20うんねん分の半生を只管自分語りで7,000字も費やしてしまったので(笑)できるだけわかりやすく、簡潔に記事にすることを心掛けて書きたいと思います。
1.ソーシャルスキルってそもそも何?
「ソーシャルスキル」
ーこの言葉を初めて聞かれた方もいるかもしれません。
簡単に言うと、「良い人間関係を築くための人づきあいのコツ」ですね。
思い浮かびやすいものであったら、
挨拶・話し方・聴き方・頼み方・断り方
教育用語を使うものならば、
アンガーマネジメント、感情のコントロール、ストレスマネジメント、アサーション…
今の若者が「ない!」と言われてしまうスキルばかり…(笑)なぜでしょう?…なぜなら「今の子供たちを取り巻く環境にはソーシャルスキルを学ぶ場がない」からです。
昔は地域社会のコミュニティも活発であったり、家族が多かったりと、日常生活でソーシャルスキルを学ぶことができていました。
しかし今はどうでしょう。「地域の教育力」は低下し、核家族化が進み(核家族が悪いということを言いたいのではありません)、今となっては新型コロナウイルスの流行で、人との接触が極力避けられてしまっているのです。
そんな状況で、子どもたちはどう「ソーシャルスキル」を学べというのでしょう。今の子どもたちはどう人と関わっていいのかが分からない子たちが多いと思います。だって、関わった経験が少ないのだから。
だがしかし、いじめや不登校、暴力行為といった背景には、「人間関係のもつれ」があります。それに必要なのは、やっぱり「ソーシャルスキル」なのではないかと思うのです。
だから私は、今道徳科という人間関係を学べる教科領域の中で、子どもたちがどう「ソーシャルスキル」を学べるかについて実践研究を行っています。
(編集後記)…研究発表じゃないので、すべて自分の言葉で書けるのが楽です(笑)
2.自分、ソーシャルスキルなかった!(笑)
「ソーシャルスキル」という言葉を知って勉強していくうちに、ある事柄が脳裏をよぎりました。
「自分、ソーシャルスキル今までなかったんじゃね?(笑)」
そう思い立ち、ちょうど大学院の授業で発達支援の授業を行っていたので、「良い機会!」と思って、スライドで自分の経験について振り返ることにしてみました。(ほんとうは、「気になる子」の事例を紹介し、論文で書かれている対応方法について紹介するという課題でした)
まず、私の得意なことです。カウンセリングの世界などでいう「クライエントの強み」というやつですね。
一方、苦手としていることです。カウンセリングの世界などでは「クライエントの困り感」なんていったりしますね。
そして、こんな生きにくさを抱えた私はどうなるか…!?
こうなりました(笑)※#1 お察しの通りです。
…#1からここまで読まれた皆さんには、「もしかして葵さんって発達〇〇なんじゃないか?」と思われた方もいるんじゃないでしょうか。私も読み手だったらそう思います。
これについては、#3以降で話そうと思っています!
脱線しましたが、
というわけで、私は自分の経験を客観的に分析して、自分(クライエント)のニーズは何だったのか?3つに絞って考えることにしました。
そして、今回のスライドでは、ソーシャルスキルの中でも、「誰かに助けを求めるスキル」「自分の意見を発信するスキル」などの力が混ざった、
「援助要請スキル」に着目しました。
私はこの大学院の授業を「自分の過去を振り返られるチャンスだ」と思ったので、本来であれば1本論文を読んで対応方法をまとめればいいものを、8つくらいの論文を読んで自分なりに「援助要請スキル」を獲得するステップを考えてみました。「こんなスキル知ってたら苦労しなかっただろうなぁ(笑)」と思いながら、2週間かけてスライドを完成させました。
3.援助要請スキル獲得のステップ
このステップについては、あくまで自分の意見です。実際に私がスキル獲得のための取り組みを行ったわけではないですし、様々な研究者の方々の意見を自分が順番にまとめただけにすぎません。
ただ、何年か大学で教育の勉強をしてきているし、児童に寄り添う経験も少ないですがあります。なので、ある程度の根拠をもって考えたということはご理解いただければと思います。
また、「こんな風な取り組みをしたらスキル獲得に繋がるんじゃない?」とか、「いやいや、このステップの前に重要なことがあるよ」というご意見がありましたら、ぜひぜひコメントにお寄せください!建設的な意見交流ができることを楽しみにしております。
まずは、援助要請スキルを指導する前に、現在の子どもたちの状況について知っておく必要があると思います。今の子供たちはこんなにも援助要請が苦手なのです。
続いては、相談の受け手(担任、カウンセラー)の姿勢。STEP1の実態を知った上では、やっぱりクライエントが自己開示しやすい環境をつくるってところから始まると思うのです。ここまでは、援助要請スキルに限らず、どんな悩みの相談についても必要なことだと思います。
ここまで来たら、次は「個」への働きかけ。研究によって次のようなことが明らかになっているので、スライドに書かれている支援は有効ということになります。
ここからは予防的介入についてですね。ソーシャルスキルトレーニング(SST)です!私も推進したい活動です!学校では特別活動の時間とか、朝の会や帰りの会などでも使うことができそうです。私はこのSSTを道徳で実施したいと考えています。しかし、道徳科の目的はスキル行動の獲得ではありません。教材に合ったスキルを選び、「道徳科の学習の深まり」を目的として指導要領解説にも位置付けられている「体験的な学習の工夫」として行われる手立てという形で取り入れるソーシャルスキル教育(SSE)は実現できると思っています。
STEP5は完全に開発的介入です。直接的ではなく間接的に援助要請スキルを獲得することもできることを示した論文です。
と、ここまで援助要請スキルのステップを踏んだ介入方法を紹介しましたが、実際自分はどのようにして困り感を乗り越えることができたのか…!?
それは、#3以降でお話しできればと思っています。
4.最近のソーシャルスキル教育
昔は「構成的グループエンカウンター」なんてものが流行っていました。
「ソーシャルスキルトレーニング」も何も最近流行したものではないです。1999年には「ソーシャルスキル教育で学校が変わる」という本も出ていたくらいですから。(しかし教育現場ではなかなか取り入れられていません…なんででしょう?(笑))
近年では、SSTの領域を広げ、「人間関係を円滑にするためには、ソーシャルスキルを学ぶ前に感情について学ぶ機会も必要だ」として、「社会性と情動の学習(ソーシャルエモーショナルラーニング)」(SEL)が注目されています。
私も、学部時代、発達障害をもった子どもたちにSELを実施するというボランティアを経験したことがありました。「分からないことは教えてあげればいい」ー当たり前のことですが、今の子供たちは感情に関する学習をして、「自分だったらどんな気持ちになるか」と考えられた方が、実感しやすいのかもしれません。
他にも、アサーショントレーニングであったり、ピア・メディエーションであったり、いろいろなソーシャルスキル教育があります。詳しくはこちらの論文がまとめてくださっています。ご参考にされてみてはいかがでしょうか。
5.困った子はいない、困っている子がいる。
私の命の恩人である脚本家・坂元裕二さんの言葉にこんなものがあります。
「すごく簡単に言うと、多数派か少数派かっていったら少数派のために書きたい。それが一番大きいですね、僕は。こんな風に思う人は少ししかいないっていう人のために書きたい。ああ私だけが思っていたんじゃなかったんだって。10元気な人が100元気になるための作品はたぶんたくさんあるけど、僕はマイナスにいる人がせめてゼロになる、-5が-3になるとか、そこを目指してるから。」
NHKのプロフェッショナルに出演された時のお言葉です。
なんてすべての生き方を暖かく包み込んでくれる方なんだろう…坂元さんについても早くnoteに書きたい!魅力を伝えたい!!と思っておりますが(笑)
私がソーシャルスキルの研究を始めたのも、似たような気持ちがあったからです。
「人間関係で生きにくさを抱えている子どもたちの力になりたい」
周りから、「あの子、ちょっと変だよね」とか「浮いてるよね」とか、「困った子」として見られてしまう子どもたちっていると思うんです。私も実際、そうみられる子どもであったと思います。
しかし、大学の授業でこんな言葉を教わりました。
「困った子はいない。困っている子がいる。」
その子たちも、したくてそうみられる行動をとっているわけではないと思うのです。ただ、どう行動すればよいか分からないだけ。
私はたとえその子が行動できなかったとしても、「その子はそういう風に生きているんだ。否定してはいけないんだ」とただ肯定すればいいだけだとも思うのですが、現実はそう優しくない。学校は人と関わる場所だから、グループ活動や清掃活動、委員会活動などで必ず人と関わる場面が出てくる。社会に出ると学校ではサポートを受けていた人間関係の困難にいっぱい出くわします。そんなときにソーシャルスキルを知らない人たちはどうなるのでしょうか。
ソーシャルスキル教育は、そんな子どもたちの生きにくさに寄り添う可能性があると、私は確信しています。
ソーシャルスキル教育を学校現場に強制したいわけじゃない。でも、国語の授業の話し合い活動で会ったり、算数での学び教え合い活動であったり、理科の実験の問題解決場面であったり、総合のグループワークであったり、ソーシャルスキルを学べる場面はたくさんあります。
ほんの一言でいいのです。話し合いをうまくするための「コツ」、グループワークで協力するための「コツ」。是非教えてあげてほしいなと思っています。身近な場面で、いつでもソーシャルスキル教育はできるのだから。
という自分の研究にかける思いを綴って、今回は以上にしたいと思います。
この度は長文をここまで読んでいただきありがとうございました!
自分の記事を読んでくださった方が、少しでも前を向いて生きていけますように。
失礼します。
おにぎり先生
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