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雨の中で
無責任
気が使えない
何も他人のことを考えていない
素直じゃない
理解力がない
酷くお節介で出しゃばり
うざい
人を思いやれない
人としてダメ
これらの言葉は全て、かつて私に対して投げかけられたものだ。地面に唾を吐くように言われた言葉。
私なりには、努力をしていた。少しでもいい印象を与えることができるように、毎日一生懸命に生きていた。辛そうな人がいたら声をかけて、寄り添うように自分なりにやってきた。
でも、他人からしてみればそんなものはただの「お節介」に過ぎないし、「独りよがり」の行動だった。
そんなつもりは無い、一生懸命やってます。
そう言おうとしても、もう私を受け入れてるくれるような環境ではなかった。
土砂降りの中へ放り出されたような。裸足で、薄着で、傘もレインコートもない状態で。入口も固く閉ざされて、雨が轟々と降る闇の中に1人取り残された。
ああ、こうして1人になってしまった。ずっとこのままなのかな。それなら、もうすぐにでもいいからいなくなりたい。また誰かにこうして雨の中放り出されてしまうのなら、迷惑をかけるのなら。ひっそりとこのまま雨に溶けてしまいたい。
そんな時だった。
遠くから光が見えて、少しずつそれが近づいてくる。私の方へゆっくりと近づいてくる。近づくにつれて、5、6人の集団が傘をさしているのだと気付いた。
光が眩しくて、私は目をそらす。
「ねえ」
ゆっくりと顔を向けると、さっきの集団が私の前にいた。リーダーのような男性が私の顔を覗き込んでいた。
「向こうに僕らの家がある。雨宿りに使ってくれればいいから、一緒にいかない?」
「私と…?」
男性は微笑んで立ち上がり、手を差し出した。
「そう、君と」
「でも、私は……」
「大丈夫。僕らは君が優しくて思いやりのある人だって知ってるから」
どうしてだろう。初めて会うはずなのに、凄く懐かしい気持ちになった。私の事なんて、向こうだって知らないはずなのに。何を知ってるんだろう。
でも、私の目からは明らかに雨ではない温かい液体が溢れていた。
「はい、お願いします…………」
手を取ると、男性は私を立たせてくれた。そして、目が合うとにっこりと笑った。
周りの人達も暖かい眼差しを私に向けてくれている。それすらも懐かしかった。
雨は強くなっていく。
雷もなっている。
怖い。
けれど、私はすごく暖かくて、心強かった。
はじめて私を肯定してくれた人達が、そばにいるから。
【了】
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