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フィクション集

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葵の小説です。長いのも短いのもあります。
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#シロクマ文芸部

見えたのは #シロクマ文芸部

 紫陽花をジュースにして飲むと見えないものが見えるようになるらしいからやってみようと思う…

葵
13日前
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116年後の第一夜 #シロクマ文芸部

「雨を聴くと、落ち着かない気持ちになるんです」  彼女は言った。彼女のうしろで、大きな窓…

葵
3週間前
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今日だけを歩いてきた君が #シロクマ文芸部

 青写真、とか。見たことなかったな。  どうとでもとれる感想を、君の唇が零す。  こんなに…

葵
4か月前
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戦場で、素直じゃない君と #シロクマ文芸部

「誕生日に欲しいのはあなただけ」  節をつけて言うと変顔された。 「なにその顔」 「あてて…

葵
7か月前
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メランコリー・ノスタルジー・ファンタジー #シロクマ文芸部

 文化祭の後片付けで夜八時まで学校にいた。  昼の底が朱く吹き抜けた。朱の上が黒冷えした…

葵
10か月前
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雲のいづこに #シロクマ文芸部

 ただ歩く。しっとりと重い空気を鼻先に、傘は頭上でぱちぱちと拍手する。こいつだけは暢気な…

葵
10か月前
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INHALE #シロクマ文芸部

透明な手紙の香り。それは朝の匂い。やや甘くて、すううっと光っている、冷えた風の香り。 朝、春、若さ。そういうものにこそ、私は消失を思う。 消失には2種類あって、吸収と、離散。 たとえば朝食のベーグル。もふもふしたあの生地は私の体内に吸収される。でも、ベーグルの真ん中、あの穴は。食べる前には、たしかにある。食べたあとには、空気中に溶け込んで消える。 世の中の全てのものが消えるなら、私はその全てを取り込んでしまいたい。手に入らないあの穴のために、私はベーグルが悲しくなる。

光ったね #シロクマ文芸部

手渡されたのは光る種。たくさん。 猫の眼みたいに金色で、グリンピースくらいの大きさで、掌…

葵
1年前
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