文明大火 #ネムキリスペクト
そこは世界のすべてだった。王子の証である海水晶の嵌まった金の腕輪を光らせて、彼は世界のすべてを持って生まれた訳だった。なだらかな額は叡智を秘め、すぐれてかたちのよい眉と、雨の日の海のような深い眼は、彼の父の国のすべての人間に愛された。
そこは世界のすべてだった。広大な陸地だ。一周するのに七日間かかる。海水晶の採掘所を中心にして、静かな深い森。そこから流れ出る清い川は、七つの村落を緩やかにはしって、さいはては天と落ち合うまで続く海へとそそぐ。海は透明で、眼の届く限りはガラス