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『鬼滅の刃』主題歌、MY FIRST STORY × HYDE『夢幻』 居なければいいのに、と思う存在をどうして受け入れるのか

 ONE OK ROCK・Takaの弟であるHiroがヴォーカルを務めるMY FIRST STORYが、HYDEとの共作で新曲『夢幻』を6月5日までにCD・配信それぞれでリリースした。同曲はテレビアニメ『鬼滅の刃~柱稽古編~』のオープニング主題歌だ。『夢幻』の歌詞では、自分が「♪永遠の意味 知らぬ君」を「♪憎い」と感じていながらも、いわば戦友として特別な感情を抱いている様が描写されている。この記事では音楽や譜面に言及しているのもあり、Music Videoなども併せて見てほしい。

 冒頭の歌詞「♪永遠の意味 知らぬ君に/答えを示す時だ」が歌われる際のメロディの1まとまりを基本として、その音の形がアレンジされたものの連なりで音楽が進んでいく。ここの歌詞で描かれるような物語が現実にあったとしても、永遠という難しい概念の意味を知らない君にそれを示そうとしており、君という弱き存在を手放さない強い姿勢が自分にはある。

 憎らしい気持ちや、君を超越したいという感情を抱き、そしてどの感情も自分が闘い続けるには必要なので、そこに葛藤を覚えている。憎い君への一種の愛情が、音符で見た時の緩やかな上昇音型や下降音型にも表れている。実際、歌詞で描写されるのは君の存在に限定されているし、音符でも「♪君さえ居なければ」は上昇音型、「♪答えを示す時だ」「♪待つのは誰」は下降音型というふうに、細やかでも感情の浮き沈みが音階の高低によって表現されている。自分の感情の動きと比例して、音が揺れ動いているのだ。

 君なんて居なければいいのに、と憎らしく思っているけれど手放そうとはしない。楽譜上の音も自分の気持ちに絡まり付いて離れてくれない。ヴォーカルの声域も楽譜で見ると音の大きな跳躍がない。歌が緩やかなので、君とは極端に毛嫌いするような関係ではないと伝わる。君に対する気持ちとして好きと嫌いとの境界線がはっきりしているというより、気になる存在として、憎らしく、かつ、永遠の意味を知っておいてほしいとさえ願っているようだ。

 この記事を読んでいるあなたも、誰かに対して、曖昧な感情の揺らぎの中で好きや憎悪を右往左往しているかもしれない。

『夢幻』の歌詞世界のように、白や黒ではない曖昧で複雑な色の関係は、自分にとってライバルである時もあるし、自己を見つめ直すきっかけともなりそうだ。その人の存在が自分を成長させるし強くもさせる。『夢幻』とは別に現実においても、そういう存在や関係を大切にしたい。

参考
ぷりんと楽譜『夢幻』バンドスコア

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