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『ノラら』第一章:紗英から見た世界 全15回(若津仰音・作)

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こちらは、長編小説『ノラら』の第一章目です。
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『ノラら』の あらすじ

『ノラら』は、三章からなる長編小説です。 一の章:紗英から見た世界(全15回) 二の章:堀…

第1回 (『ノラら』紗英から見た世界 )

すべての芸術は、 絶えず音楽の状態に憧れる。 byウォルターペイター 『ノラら』 第一章…

第2回 (『ノラら』紗英から見た世界 ) ~一体自分は何処でなら難なく生きられるのだ…

『ノラら』 第一章:紗英から見た世界 第二回 虚ろな気持ちになるために こんな回想を繰り返…

第3回 (『ノラら』紗英から見た世界 ) ~過去と現実の隙間に落っこちてしまった自分…

『ノラら』 第一章:紗英から見た世界 第三回 何故いつもギリギリになってから 行動するのだ…

第4回 (『ノラら』紗英から見た世界 ) ~若いというだけで、敬意を払う対象から外さ…

『ノラら』 第一章:紗英から見た世界 第四回 二人が死んで以来、何度も 母や父の夢を見させ…

第5回 (『ノラら』紗英から見た世界 ) ~労働の本質を考える。"月並み" の世界だか…

『ノラら』 第一章:紗英から見た世界 第五回 結局私が落ち着いた先というのが 派遣という働…

第6回 (『ノラら』紗英から見た世界 ) ~あなたはただ"本物の生きた人間 "だとインプットされている"つくりもの"かもしれない。3Dホログラムの物質化~

『ノラら』 第一章:紗英から見た世界 第六回 総務に居た女性に更衣室まで案内され、 そこでユニフォームである 上着を渡された。 縦長に狭い更衣室には、 もう既に従業員が六~七人いて、 それぞれがロッカーの前で 脱ぎ着しながら 暑いわねとかお先にどうぞとか 言い合っている。 特に話しかけられることもなく 着替えを済ませて廊下に出ると、 待っていた総務の女性が、 今度は就業場所へと案内してくれた。 更衣室の真向かいだ。 ドアを開けてもらい中へ入ると、 始業時間前ということで

第7回 (『ノラら』紗英から見た世界 ) ~"大衆ウケ" からの逸脱~

『ノラら』 第一章:紗英から見た世界 第七回 (吉岡さんは)扉を開けて、 すぐ目の前のロボさ…

第8回 (『ノラら』紗英から見た世界 ) ~感じるままに生きていると出会う~

『ノラら』 第一章:紗英から見た世界 第八回 その日から吉岡さんは、 私に付きっ切りで 仕事…

第9回 (『ノラら』紗英から見た世界 ) ~飽きるから続いていく~

『ノラら』 第一章:紗英から見た世界 第九回 球を拾いに行った背中は、 すぐさまこちらを振…

第10回 (『ノラら』紗英から見た世界 ) ~空の青さに焦がれていた~

『ノラら』 第一章:紗英から見た世界 第十回 ——母の病気が発覚する数ヶ月前に、 私達親子…

第11回 (『ノラら』紗英から見た世界 ) ~父と目と目を合わせながら話すなんてこと…

『ノラら』 第一章:紗英から見た世界 第十一回 程なくして私は父を連れて 紹介された病院の…

第12回 (『ノラら』紗英から見た世界 ) ~父の死~

『ノラら』 第一章:紗英から見た世界 第十二回 その日も私達は例外なく 蒸し暑い夏の朝を迎…

第13回 (『ノラら』紗英から見た世界 ) ~流れに抗(あらが)うという体験~

『ノラら』 第一章:紗英から見た世界 第十三回 私たちは病院で紹介された小さな会館で、 僧侶の読経も遺影も無い 簡素な通夜と葬式を施行した。 葬式代は父方の親戚が 皆で出し合ってくれた。 末っ子の父は、 やんちゃだが憎めない性格もあって、 昔から親戚中に可愛がられていた。 葬儀に駆けつけてくれた親戚達に 労(いたわ)りの涙を貰いながら、 父は焼き場で無事骨となった。 火葬炉から出て来た父の歳不相応な すかすかの骨を見てみんな驚き、 そしてまた涙していた。 私だけが父の死に