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小さいおじさん脅威論

 小さいおじさんという都市伝説がある。10センチとか20センチの小さいおじさんを見かけたり、遭遇したり、交流したりするらしい。概要はWikipediaを読めばつかめるだろう。

 2010年前後に芸能人がテレビで目撃談を話したことによって、爆発的に広まっていった。検索してみると、2005年の発言小町のログが出てくるので、広まった2010年以前から目撃談はあったことになる。

 正直、よくわからない都市伝説だよね。都市伝説の怪異って基本殺しにくるじゃん。口裂け女とかカシマレイコとか、メリーさん、テケテケ、赤マント、ひきこさん、さとるくん、あげればキリがない。そういうのが全てじゃないにしろ、人間に有害なものが多い。それなのに、小さいおじさんは目撃したり話しかけられたりする程度で、そこまでの有害性がない。どういう存在なんだろうね。人面犬とかも有害性が薄いけど、そういう系統の妖怪的な存在なのかな。それともなにか元ネタがあるのか。

 Wikipediaには幻覚説が記述されているけど、見間違えや夢や病気なんかの可能性を考慮すると、この手の話はできないので気にしないでおこうね。

 さて、小さいおじさんという存在は、おじさんの幽霊かもしれないし、小さいおじさんの形をした妖怪や妖精の類かもしれない。じゃあ、幽霊と妖怪や妖精の違いは何? っていうことは僕には荷が重い問題なので、専門家に聞いてもらうとして、もっと小さいおじさんに寄って考えていこう。

小さいおじさんデカくね?

 まず、小さいおじさんといっても本当に小さいのか? という点について考えたい。もちろん人間のサイズからすると小さい。間違いなく小さいおじさんだ。だけど10センチから20センチのおじさんというのはかなり大きい。手元に定規があるなら見てみるといいかもしれない。そのサイズのおじさん。デカくね? かなりデカイと思う。家に入ってくる異物、ゴキブリやクモや蚊なんかと比べるとめちゃくちゃデカイ。それが目の前に現れたらどうよ? ふと目を向けた先にさ、20センチのおじさんがいたら、間違いなくビビって固まるよ。どうしていいかわかわからない。混乱する。無視する? 話しかける? 排除する? それとも殺す? 小さいとはいえ人の形をしたものを殺せる?

殺すのに躊躇してしまうような小さいおじさん

 つまりさ、頻繁に家の中に侵入してくる害虫として考えるとデカすぎるんだ。このサイズ感は家の中に入ってくる害獣、ハクビシンとかネズミとかたぬきとか、そういった類の存在として考えなきゃいけない。非常に厄介な存在だ。よほど覚悟が決まってる人以外は哺乳類を殺すのに抵抗があるし、じゃあ、殺さなかったら、家の中に20センチのおじさんが定住してしまうかもしれない。いつ出てくるかもわからない小さいおじさんの恐怖に怯え続ける日々。夜中目を覚ましてトイレに行こうとした時、小さいおじさんがくつろいでいたら……そんなの嫌すぎる。

善いおじさんなら話し合いで解決できる

  しかし、小さいとはいえおじさんであるのなら、コミュニケーションが取れるかもしれない。話しかけて、交渉して、出ていってもらえれば万事解決。もちろん、話し合う過程で案外いいやつだということになれば、そのまま住んでもらってもいいかもしれないし、住まないとしても、ご近所付き合いに発展するかもしれない。物語が始まる予感!

分かり合える小さいおじさん

 善意のおじさんは交渉ができる。話し合いはどんな時も大事。みんな納得。みんなハッピー。ラブ&ピース。

悪いおじさん

 だけど、この小さいおじさんが悪意の塊だったら?

悪そうな小さいおじさん

 言葉は通じる。しかし、小さいおじさんは悪いおじさんだった。暴言ばかり吐いてくる。敵意むき出し。交渉の余地はない。どうやっても出ていってくれない。ここは俺のものだと所有権を主張する。ならば実力行使で排除しようとする。体格差があれば勝てる。だが、小さいおじさんは刃物で反撃してくる。思わぬ反撃。こんなおじさんのために命をかけるのか。しかし、話は通じない。穏便に解決する方法はない。やるかやられるか。デンジャーゾーンに突入だ!

 警察に助けを求めても、おじさんは小さいのでどこかへ隠れてしまう。人間の集団には敵わないということを知っているのだ。あまりにしつこく警察に通報すると、今度はこちらが頭がイカれてると思われる。小さくて悪いおじさんは知能が高い。だから状況をコントロールするのがうまい。現代社会で生き残るすべを熟知している。そのおかげで外部に助けを求めるのは難しくなる。

 こんな状況下、家で寝ようものなら大惨事は免れない。寝ている人間は無防備だ。小さいおじさんがカミソリを持って首筋をスパッとやるだけで終わり。小さいおじさんがフォークで目玉をブスッと刺すだけで終わり。小さいおじさんは人間の弱点なんて熟知している。食べ物に毒を混ぜることもできる。靴に割れたガラスやカミソリを仕込むこともできる。家にいる間、休まる瞬間なんてない。消耗戦では確実に負ける。やるか、やられるか、逃げるかしか選択肢はないのだ。

悪のおじさんとの対決

 では、やるとなった時、人間は小さくて悪いおじさんに勝てるだろうか?

ヤル気のありそうな小さいおじさん

 真正面で戦えば勝つことはできる。やはり体格の差が大きい。進撃の巨人を想像すればいい。圧倒的体格差を覆すことは難しい。人間側も多少のダメージはあるかもしれない。だが、小さいおじさんをやると覚悟を決めたのであれば倒せる。倒し得る。負けることなどあり得ない。人間と小さいおじさんの間にはそれだけの差がある。大差。覆すことなどできない。必勝。それがこの対決。負けるはずなどないのだ。

 だか、本当にそうだろうか? 人間は痛みを感じる。小さいおじさんを手で掴んだ時、隠し持っていた刃物でブスっとやられれば落としてしまう。小指をぶつけただけで動けなくなってしまうのが人間だ。思った以上に貧弱。あまりに弱い。小さいおじさんを甘く見過ぎだ。やるかやられるかの戦いになれば、小さいおじさんだって正々堂々と戦うはずもない。ゲリラ戦に移行する。家の中に隠れ、罠を仕掛け、奇襲をかけ、弱点を突き、精神攻撃を行い消耗させる。それが弱者の戦い。簡単には勝てない。勝たせてくれない。小さいおじさんだって命を賭けている。甘くはない。楽勝なんてものはない。殺し合いだ。命と命の取り合い。そういう戦いになる。

 本当に勝てるか? 人間は小さいおじさんに勝てるか? 勝ち得るか?

 チャイルドプレイをご存知だろうか? 1988年にヒットしたアメリカの映画だ。連続殺人犯の魂が乗り移った人形がたくさん人を殺す。いわゆるスラッシャー系のホラー映画だ。

チャッキー

 チャッキーは小さい人形なのに人々を殺しまくる。人間が本気で戦えば負けようがない。それだけの差がある。しかし、チャッキーは殺す。殺しまくる。なぜか? 人間が人形を舐めているからだ。人形は動かない。人間を攻撃しない。殺し得ない。脅威にはならない。無視していい。そういう認識だから、チャッキーは殺せる。殺し得る。

 つまり、小さいおじさんを舐めてはいけない。おじさんは人間を殺し得る。強敵だと認識すること。そうしなければ足元をすくわれる。簡単に負けるだろう。体格差があって自分が有利だと思っている時点で舐めているのだ。殺し合いを舐めている。そんなもんじゃ決まらない。気持ちが大事なんだ。

いつか、その日が来る前に

 小さくて悪いおじさんとの対決は簡単ではない。命を賭けた勝負だと覚悟した方がいい。いつか、小さいおじさんとの対決が来る時に備え、防具を用意しておくといいかもしれない。アキレス腱や首筋や目や下半身を守るがあれば、悪いおじさんに優位に立てるだろう。非常食も用意しておけば毒に怯えることもなくなる。

 人類が悪いおじさんに負けないために準備を怠らないでほしい。いつか、必ずその準備が無駄にならない日が来る。備えて欲しい。

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