狂愛ー2ー

ー神埼玲ー
(鬱陶しい…)
3ヶ月ほどみかげと付き合ってきたが、
いちいち愛が重いわりに、三夜連続で逢瀬を迫ると
「玲くんは私の身体しか見てないんだ…」
みたいに勝手に病む。

(そろそろ鞍替えだな。
いくら美しくても、思い通りにならない女は面倒だ。)
そう思った夜、GPS入りの御守を壊し、
電話で別れを告げてみかげのLIMEをブロックした。

その夜を境に俺は夜の街を遊びまわるようになった。
毎日女と遊び、シャンパンを飲み、三股して
一週間を回していく元のサイクルに戻った。
ホストにも復帰して店の売り上げ記録を更新した。
俺もみかげと一緒で顔だけは良い、クズだ。

順調に過ごしている内に一ヶ月が経とうとしていた。
そんなある日、あいつがやってきた。

ー白金みかげー
「何なのよ!!あいつも他の男と同じ、
顔目当てのクズだったのね!」
叫び散らしていたらと隣人に壁を殴られた。
(クソが…絶対あいつに復讐してやる…)
冷静になった後、乱れた髪を整えて
キッチンに入り、包丁を手に取った。
(一ヶ月…ちょうど一ヶ月後に滅多刺しにしてやる…)

その日から私は毎日、来る日も来る日も
包丁を研ぎ続けた。
そうして丁度3週間が経った時、
殺人兵器の如く鋭くなった包丁が出来た。

一台目のGPSは壊されたけど、
二台目のGPSは絶対に壊せない。
付き合っていた時から、
マイクロGPSを味噌汁に溶かしてきたからだ。

私はGPSでの監視が好きすぎて、
国立研究所でGPSの研究をしている研究者だ。
こんなものの開発なんて造作もない。
プライベートラボでも出来てしまう。
(ちゃんと殺したら、研究論文でも書くか。)

ピーンポーン…
間抜けな音が辺りに響く。
彼は警戒しているのか、反応は無い。
…ピピッ
カードキーも偽造済みだ。

そろりそろりと寝室に忍び寄った所で、
女の匂いを感じた。
(あいつ…女を連れ込んでいたのね)
勢い良く扉を開け、女を刺した。

「みかげ!何をするんだ!」
無駄だ、急所を刺した。もう脈はない。
「次はお前だ。玲、さよなら。」
玲の心臓を刺し、全身を刺した。
残ったのは全身傷まみれの屍だった。
「私、こんな肉の塊に恋をしていたのね。」
返り血の付いた服を着替え、早々に玲の家を後にした。

その日を境に、私は恋をしなくなった。
研究に没頭し、国から賞をもらい、
やり手の研究者として柔らかいベッドの上で死んだ。
神様のいたずらなのか、私が死んだ日は
ちょうど玲を殺した日だった。

ーーー
二人の死に方の対比が美しいですね。
一度くらい天蓋付きベッドで寝てみたいものです。
これで「狂愛」シリーズは終わりです。
次の更新は7/7日曜日18:00です。

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