秋日和

彼女が結婚する。

彼女とは不思議な縁で、学生時代から遊んでもらっている。私がハウルのようにドロドロの深淵にいる時に手を差し伸べて引きずり出してくれた。シスターフッドなんてポッと出のカタカナ言葉で言い表して満足することができないくらいの尊敬と、慈しみの念を持って接している。

彼女はとても聡明でかつ美しい人である。彼女がいなかったら私はタルコフスキーもナボコフもゆらゆら帝国も千葉雅也も知らぬまま、言語化できぬ苛立ちを抱えたまま、くそしょーもない人生を歩み、こんなはずじゃなかったとつまらんことでメソメソ泣いてるだけの人間になっていたかもしれない。

母が亡くなり、途方に暮れている時、彼女は一緒におせちを食べようと誘ってくれた。正月なんて家族とゆっくり過ごしたいだろうに、彼女の実家の離れで二人、取り止めもない話をしながらおせちを食べた。
彼女は覚えていないかもしれないけれど、その何気ない時間が私にとっては救いの時間だった。

その他にも、私が落ち込んでいる時に連れ出しては美味しいものを一緒に食べたり、煌びやかなショーを見たりした。私は普段口下手な上人見知りであり、自分の思っていることを気軽に言えないし話をしているうちに涙が出てくるくらいどセンシティブな人間なのだが、彼女にはあらゆることを話した。彼女は私の拙い話を決して馬鹿にせず聞いてくれた。意見が食い違っても説得力があって、なるほどと思うことがあった。

彼女ははにかみながら報告した時、世界で一番美しく幸せそうであった。彼女の選んだ人だから、間違いないだろう。そして心の底からの祝福と、変わらぬ交流を続けたいと思いながら、祝杯をあげた。
本当に、嬉しい。


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