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妹がツンデレ過ぎてまともな恋愛が出来ません! 第24話
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第24話「麻衣はツンデレらしい」
麻衣は俗に言う『ツンデレ』らしい。
まあ、それが何かって聞かれても上手く説明が出来ない。麻衣が行った修学旅行の後からツンデレが判明した。
そう、これは少し前のお話。
──────
麻衣はS女でイジメを受けているらしい……。
先日は制服、ジャージを汚され、机に入れたものを盗まれる、本を破られる、隠される、挙句に階段から突き落とされたこともあった“らしい“
……というのは、弘樹の妹の雪ちゃんが「同じクラスの綺麗な女の子が虐められてるの」って弘樹に報告してくれたことから発覚した。
俺は麻衣に何度か虐めを受けていないか確認したが、あの強気な口を割るのは難しい。
雪ちゃんと麻衣が仲良くしてくれたらなあ……とぼんやり考える。しかし雪ちゃんも元々は弘樹と義理妹の関係であり転校生だ。最初から女子の輪に入れなくて困っているらしい。
しかも、見た目ふわっとしているのに何か過去のトラウマがあって、自分から声をかけるのは苦手なのだという。
麻衣と雪ちゃんは似た者同士だった。──だったら尚更仲良くなれるのでは? と思い、俺は思い切って麻衣に「同じクラスの雪音ちゃんと話しかけてみたら?」と持ち掛けた。
勿論、返答は「何で?」だ。
他の女達に虐められているので、新しい女が出てきても警戒しか無いのだろう。
「櫻田雪音ちゃんはな、俺の親友の雨宮弘樹の妹なんだよ。苗字が違うのは家庭の事情だな」
「櫻田、雪音……その人、兄貴の事知ってるの?」
「いや、俺は接点ないかな。弘樹の妹って事しか知らねえ」
「分かった……。話しかけてみる」
珍しく麻衣が素直に俺の話を聞いた。流石に麻衣だって3年間誰とも仲良く出来ないのは辛いだろう。弘樹の妹が同じクラスに偶然居てくれて助かった。
そして修学旅行から帰宅した麻衣は雪ちゃんと無事に仲良く出来たらしく、ある日家に彼女を連れてきた。
何故か俺の顔を見て恥ずかしそうにしている麻衣。いつもと態度が違う。何かおかしいと思ったら、背後からひょこっと雪ちゃんが顔を覗かせた。
「こんにちはっ、マイちゃんのお兄ちゃん!」
「あぁ、噂の雪ちゃんか。こんにちは、どうぞ狭い家だけど」
良かった。弘樹の妹と仲良くしてくれるならこちらとしても話がしやすい。
あっちは雪ちゃんが相当ブラコンで困っているという話をよく聞いていたが、麻衣は俺に対して過保護なだけで、ブラコンではないと思う。
麻衣から俺の事を好きだという言葉は今まで一切聞いた事がないのだから。
うちはリビング件共同部屋と、寝室のふたつしか部屋が無い。だから誰か遊びにこられても場所が無いのが悩みだった。
俺が勉強机を陣取っているせいで、麻衣と雪ちゃんは寝室の方に移動し、何か真剣に語り合っていた。
年頃の女の子達の会話を邪魔しないようにジュースだけ持っていき、彼女達の横にそっと置いた。
「雪ちゃん、ゆっくりしていきな。俺は邪魔にならねーように外でも行ってるから」
ミニテーブルの上にジュースを二つ並べると、何やら真剣な表情で雪ちゃんが俺の顔をじっと見つめてきた。
「何?」
「マイちゃんが言うような男らしいところが無いってのは──」
「ゆ、雪ちゃんっ!!!」
「もごごごご……!」
雪ちゃんがどうやらとんでも爆弾発言をしそうになったらしい。慌てて雪ちゃんの口を塞ぐ麻衣の様子を俺は目を細めて見下ろした。
「へぇ~。麻衣“ちゃん“、俺のこと悪く言ってたわけ? いいのよ、いいのよ、どうせ俺なんておバカで彼女もいない帰宅部ですよーだ」
自虐的に笑いそう言うと、俺のオネエ言葉が初な雪ちゃんはケラケラ笑ってくれたが、笑わせたかったはずの麻衣は不満そうに口をへの字にしていた。
何が不満なんだ。お前にとって格好いい兄ちゃんじゃないからか? でもなあ、麻衣にとって俺が格好良くなる方法って……何かあるかなあ。羽球もやめちまったし、別のスポーツでも探した方がいいのか……。
結局、俺は出て行かなくてもいいと麻衣に言われたので、そのまま勉強机で漫画を読んでいた。
夕方になり、雪ちゃんは「楽しかった!」と手をぶんぶん振って、お邪魔しましたと元気に挨拶をして玄関を出て行った。
笑顔で元気よく帰る雪ちゃんを見送った俺は隣でしょんぼりと佇んでいる麻衣を見下ろす。
雪ちゃんが途中まで漏らした男らしくない──。その言葉の続きは何だったのか。聞きたいような、聞きたく無いような。
「麻衣、ごめんな。兄ちゃん、格好いいとこなくて」
「べ、別に……兄貴は、兄貴だし……それに……他の人に、格好良いとこ見せたらやだ……」
麻衣は何故かもそもそと俺がカッコよく振る舞うのを嫌った。
「何だよそれ。格好いいとこ見せられなかったら、俺はずっと彼女できねーじゃん」
「……」
一瞬だけ麻衣が困ったような眸で俺を見上げてきた。
麻衣は、俺のことが好きなのか?
いやいや、そんなわけない。
出張であまり居ない父さんと、ダブルワークで帰りが遅い母さんに変わって俺に飯作ったり、家の事やったり過保護なだけだ。
「麻衣は俺の事、どう思ってるの?」
普通に聞いたつもりなのに、麻衣は突然かあっと顔を赤くして、俺の鳩尾に強烈な一撃を放ってきた。
な、何か変な事言ったか俺!? ど、どうして麻衣はすぐに暴力で解決しようとするんだろう。
不意打ちの攻撃に膝から崩れ落ち、がくりと項垂れる。そんな俺を見下ろした麻衣の眸は明らかに動揺していた。
「別にっ……兄貴は兄貴だし……嫌いではないよ、だって、か、家族……だし」
「俺は麻衣のこと、好きだけどなぁ……」
一瞬だけ空気が止まった。あれ、俺、変な事また言ったか?
また麻衣からストレートが飛んでくるかと思い、俺は腹に力を込めたが想定していた攻撃は来なかった。
「あ、当たり前でしょ……だ、だって……家族……だし」
「家族として以上の感情があるのかって聞いてんの」
「う、うるさいなあ……その服ついでに洗濯したいから先にお風呂行って来てよ!」
「はいはい……」
完全に答えをはぐらかされてしまったが、こうなった麻衣に何を言っても答えてくれない。
このやり取りが、『マイちゃんはツンデレ』だと言うことを、俺は後に弘樹経由で雪ちゃんから教えてもらったのである。
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