第16話 どうしても子どもが欲しかった
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第16話 どうしても子どもが欲しかった
「ちぃちゃん、僕の遺伝子を残してくれる?」
その言葉に、私はすぐに即答できなかった。相手は奥様がいる。しかも、大手企業に就職しておりかつ、別の事業も展開している社長さんだ。どう考えても私のような一般人とは釣り合わない。
そして、先述した通り、彼には奥様がいる。
金持ちの考えは理解できないと思いつつ、彼の提示した条件は魅力的だった。
○自分の子どもとして認可はするが、一緒には住めない(奥様がいるので)ただ、週に2回〜3回は出張がない限り会える。
○家の手配(家賃も全額負担)、地域は某所限定されたが、そこは私にとって問題ではない。
○養育費月額30万(この時点で現在の仕事よりも多い笑)
○看護師としての仕事を続けるならば、ベビーシッターなどやとっても構わない。仕事を継続したとしても養育費は継続で支払いする。
○戸籍に関しては、養子縁組になる可能性あり。
唯一悩んだのが苗字だ。私は自分のありきりな苗字が嫌いで、いつか絶対に格好いい苗字になりたかった!なのに、付き合う人や元旦那は珍しい苗字でも全員失敗。やはり、私にはそういう星はなかったようだ。
もしこの方と子どもができたとしても、苦しいこのありふれた苗字だけは嫌で、何とかそちらの戸籍に入れないか相談した。私は法律関係はさっぱり調べる気も無かったので、そこは一任していたが、養子縁組でねじ込める算段になった。
苗字以外、彼に対して殆ど心配していなかった。最初のうちは。
私は子宮筋腫を持っているので、生理不順との戦いだった。結婚していた頃はストレスで半年以上生理がこない日もあった。仕事の時もそう。ただ、残念なことに、どれほど生理が来なくても、子どもができた!という行為は皆無だったので、
ああ病気なのか。来月も来なかったら考えよう、来月、また来月…と先延ばししつつ、心の中ではよ生理来てくれと祈ることが増えた。
「──で、信用するのは難しいと思うんだけど、僕は自分の代で遺伝子を殺したくないんだ。フィリピンの女性を何人か紹介されたけど、やっぱり日本人がいい」
彼の脳には私ではなく、日本人の女、という子宮しか映っていなかったのだと思う。それでもバカな私はどうしてもイケメンの彼との子どもが欲しかった。私は子どもが欲しい。彼は自分の遺伝子を残したい。利害の一致だ。これは歪んだ愛人とはいえ、立派な玉の輿だ。
彼を出会い系サイトでいきなり信用したわけではなく、彼の周囲には私と同じ某ゲームにはまる男性仲間が多数いた。そこから彼の素性や関わり方をリサーチしていた。結論としては、金持ちの道楽という楽しみ方をしており、一般人には理解しがたいゲームへの課金をしていた(と言っても自分も相当昔はぶっこんだけど)
「それで、子どもが欲しいのはわかりましたけど、なんで私? もう36歳ですし、ちょっと高齢出産でうまく行くとは……」
「年齢は気にしていないよ、僕だって50近いおじさんだし。ただ、ちぃちゃんとだったらいいかなって思ったんだ。あちこち若い女の子も紹介されたけど、若すぎるのはきついし、かと言って金目当ての人もあれだし」
彼がいきなりこんなぶっ込んだ相談をしてきたわけではない。奥様との間で子どもが全くできず、双方調べた結果、検査で致命的な問題があり可能性をゼロと否定されたらしい。それのせいで奥様はメンタルを病み、彼は真っ盛り30歳から夜の営みは無くなったという。
それから15年以上、彼はあれこれ子どもについて相談したものの、海外出張に行った時に日本の国籍欲しい若い綺麗な女いくらでも紹介されたが、食指が動かなかったらしい。
要するに、若い女は紹介されても日本人がいい、若すぎる日本人は会話的な問題や倫理面?の問題なのか敬遠。そうなると、自分の仕事で自活している私は丁度いい物件だったらしい。
「ちぃちゃん、子ども欲しい?」
「欲しいです!!」
もちのろんだ。
ここまで読んだ人は、こいつら頭が狂ってるのか?と思われても仕方ない。
私は、父と昔約束をしていた。離婚して父を悲しませた後も、「俺はお前の子どもを抱っこするまで死ねないな」とぼやいてた父。親不孝は散々してきたが、父が元気なうちに、子どもを抱っこしてもらいたい。
父は遥か昔一度黄泉の国に行ったのに、そんなまた未練なんて残したら可哀想過ぎる。
それに、彼はやはり努力するイケメンだった。学業も見た目も文句なし。隣に並ぶとこちらが萎縮するくらいスマートで格好いい。何を着ても似合うし、立っているだけでオーラが違っていた。そんな自分とは違う世界で生きている人と、子作りができるのだ! これを幸せと言わずしてなんぞ。
それから、排卵日めがけての逢瀬が始まった。しかし、私はイク感覚がわからない、おまけに感じるポイントも不明、プロではないのでテクもない。海外で性欲発散させていた彼を満足させる方法は無かった。
そしてもう一つの問題。彼は酒とタバコが無いと生きられない。一緒に住むわけじゃないし、それはどうでもいいのだが、酒を飲むと勃起が悪くなる。むしろ、酒を飲んで百戦錬磨なお兄さん達にどうやって維持しているのか聞いてみたいくらいだ。
※妊活をする人がもしいたら、酒はやった後に飲むべし。先に飲むと脱水の危険もあり危ない!
そして彼のもう一つの性癖。これが私を苦しめた。
見た目は綺麗なSっ気キャラ。高身長細身の漫画に出そうなイケメンおじさま。スタイル維持の為に昔から護身術とジムに通っているので、ぷよぷよの腹はなく、引き締まって非の打ち所がない。
とある日、ラブホではないのに彼は白いバスローブを着たままトイレの上であぐらをかいていた。
「どうしました?」
「んー、なかなか勃たなくてねぇ。ちぃちゃん、おしっこするとこ見てて」
はい?
いやいや待て待て待て!そんなあっけらかんと見られたい欲求ぶちまけられても困る!そんなの、確かに仕事では仕方なく見てるけど、プライベートでも放尿なんて見たく無いし、ちょっとこっちが萎える!
「いや、ごめんなさい、そういうのはちょっと……終わったらきますね汗」
「残念。ちぃちゃんに見られたらもう少し勃ちそうな気がしたんだけど」
私はSじゃないぞ。なに、ここで辱められたいの?どうしよう、彼が勃たないと確かに毎度毎度この関係を維持してもらうのに申し訳ないし、ならばやっぱり見てるしかないの?
こういう時、言葉攻めってどうすんだ?いや、そんな慣れないよくわからない扉開けても困るだろ。頭の中で私は格闘していた。
結局どうなったか。
彼はMだった。確かに、エッチの時に積極性はなく、見た目は華やかで遊んでいる風味なのに、なかなかのMだった。
性癖の不一致ほど、子作りに影響の出るものはないと思う。せめて、彼がノーマルか軽いSであれば私も頑張れたと思うが、想定外の展開に結局薬(バイ○…の方なので法律的に悪いお薬ではないです)でトランスしないと勃起しないとか、色々問題が重なり、結局私の方からお役に立てなくてごめんなさい泣とお別れした。
彼は見た目は華やかなので、多分性癖さえマッチしたら素敵な遺伝子を残せたと思う。
あの寂しそうに私に語ってくれた子どもへの想いを、同じ日本人女性に提示して、あとはバイ○グ○に頼らずにいいエッチができたら何とかなるだろう。
彼は50過ぎていると思うが、男性側の精子は量が減っても検査と生活次第で後期高齢者になっても維持ができると言われている。
まして冷凍保存とか色々な方法もあるし。確か彼と話していた時にそんな事も言われた。
冷凍保存が年間(お金)どれくらいかかって、病院で調べるなら僕もいくし、僕もしっかり調べるから!と言ってくれたのは嬉しかった。びっくりするようなMでなければ。
人は見た目では判断できない性癖を抱えている。私がSっ気あればもっと彼と違う関係で楽しい時間を過ごせたかも知れない。
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