19歳の夏-暮れ
2023.8.31
19歳の夏が終わる。
きっともう少し暑さがだらだらと続くのだろう。
まだクーラーはつけているし蝉も鳴いてるけれど、それでも確かに夏が終わろうとしている。
本当に夏が終わってしまう前に、この夏を振り返ろうと思う。
薬が効いていたのか、ただただ夏だったからなのか、比較的安定していた。
どうしようもない世界のことや、心ない言葉に涙がぽろぽろしてしまうこともあったが、それでも私はちゃんと歩けてた。
夜に寝て朝に起きられるようになって、私はとても健やかに過ごしていたけれど、時々あの眠れない夜のことが恋しくなったりもした。
予定なんてひとつもなくて、決めていたのは髪を伸ばすことくらいだった。
ひたすらに惰性で時間をつぶした。
音楽を聴きながらパズルゲームをしたり、こたけの逆転裁判の実況を見たりしていた。
海にも夏祭りにも行かなかった。
それでもちゃんと夏で、そのことがありがたかった。
「こちらあみ子」を読んだ。
これがかなり大きく残っている。
あみ子を読んで、誰にもわからないようにひとりでこっそり泣いた。
読み終わってすぐ映画も観た。
私の中にも、画面の中にも、本の中にも、あみ子がちゃんと生きていた。
生きて、そこに存在していた。
あみ子、しあわせになってね。
ちゃんとしあわせになるんだよ。
私もしあわせになるから。
約束ね。
今ならちゃんと、ちゃんと幸せになれる気がする。
高校の頃に使っていたリュックを整理していたら「幸せになりたい」と書いた紙が出てきた。
あの頃から私はずっとずっと幸せになりたかった。
救われたかった。
今なら、それができるだろうか。
生活を大切にして、他のこともちょっとずつ大切にして、そうやってちゃんと生きられるかな。
まだもうちょっと怖いな。
ちゃんと生きるのも、幸せになるのも、もうちょっと怖い。
腕の傷跡を指でなぞって、どうしようもなく悲しくなったりもするんだ。
それでも、それでも、それでも。
変なところに見出してしまったアイデンティティは捨てて、ちゃんと幸せに向かって歩けるだろうか。
誰からも私を認めてもらえなくても、悪意に触れて心が強張ってしまっても、それでも、それでも。
これから色んなことを思い出してしまう季節がやってくる。
それでもちゃんと光を見失わずにいられますように。
“もしあなたに 迷う日がきたら
どうかそのまま 耳を澄ませて
波打つ世界の まんなかで
あなたの星を かかげて”