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知っておきたい国際通信の基本的な仕組み

皆さんは、国際電話をかけたり、海外のウェブサイトにアクセスしたりするとき、その裏側で起きていることについて考えたことはありますか?

国際通信は、私たちが住む世界をより近くにし、グローバルなつながりを生み出してきました。しかし、その仕組みは少し複雑に思えますよね。この記事では、国際通信の基本的な仕組みを掘り下げ、その歴史、現在、未来について分かりやすく解説します。

本記事では、国際通信というエキサイティングな世界をご案内いたします!

国際通信の歴史:古代から近代まで

国際通信の歴史は、人類のコミュニケーションの歴史そのものです。古代から人々は遠くの相手と連絡を取る方法を模索してきました。

(1)古代の通信方法
古代の国際通信はどんなものだったのでしょうか? もちろん、今のような電気通信は存在しませんでした。古代エジプトや中国では、伝書鳩が遠方へのメッセージ伝達に使われていました。

鳩が帰巣本能を持つことを利用したこの方法は、驚くほど正確だったと言われています。また、煙や火を使った信号も使われていました。古代ギリシャでは、街と街の間で信号火を使った通信ネットワークが築かれ、重要なメッセージが伝えられていたそうです。

海上での通信には信号旗が使われていました。船同士や船から陸への連絡に、色や模様のついた旗を掲げて通信を行ったのです。遠距離通信の困難さが感じられる方法ですね。

(2)電信の登場と海底ケーブル
国際通信に革命をもたらしたのが、19世紀に発明された電信です。電気信号を使って文字を送信するこの技術は、遠方へのほぼ瞬時での通信を可能にしました。

電信が発明されると、国々は競って海底ケーブルを敷設しました。1850年、英仏間のドーバー海峡に初めて海底ケーブルが敷かれ、国際電信の時代が始まりました。1866年には、なんと大西洋を横断する海底ケーブルが敷設され、ヨーロッパと北米が直接つながったのです。しかし、海底ケーブルは高価で維持が難しく、多くの場合、電報を送るのにかなりの費用がかかりました。

(3)無線通信の誕生
無線通信の発明は、国際通信の分野にさらなる飛躍をもたらしました。1895年、イタリアのマールキ氏とロシアのポポフ氏がほぼ同時に無線通信の送受信に成功しました。その後、無線電信が発展し、電波を使って国境を越えた通信が可能になったのです。

1901年、イタリアのマルコーニ氏は大西洋越しの無線通信実験に成功し、無線通信の可能性を世界に示しました。これにより、ケーブル敷設が難しい地域でも国際通信が可能になりました。無線通信は、後にラジオやテレビの国際放送にもつながっていきます。

海底ケーブルと衛星通信:国際通信の主役たち

現代における国際通信は、主に海底ケーブルと衛星通信によって成り立っています。

(1)海底ケーブルの仕組みと進化
現代の海底ケーブルは、光ファイバーケーブルが主流です。過去の銅線ケーブルと比べ、大量のデータを高速で伝送できるのが特徴です。

海底ケーブルは、海岸近くの陸揚局から海中に敷設されます。陸揚局では、ケーブルが巨大なリールに巻かれ、慎重に海へと送り出されます。ケーブルは海中を走り、大陸間の通信を支えています。

ケーブルの中には、光ファイバーに加え、電源供給や補強のためのさまざまな層があります。海洋生物や自然災害からケーブルを守るために、特殊な素材で保護されています。

(2)衛星通信の原理

衛星通信は、人工衛星を使って地球上の異なる場所間で通信を行う方法です。通信衛星は、地球の赤道上空36,000kmにある静止軌道に配置されることが多く、そこから地上への送信と受信を行います。

衛星通信の原理は、電波の反射と増幅です。地上局から送信された電波は衛星のアンテナで受信され、増幅された上で、地上への送信アンテナに送られます。この反射機能のおかげで、地球の曲面を超えた通信が可能になるのです。

(3)光ファイバーとデジタル技術
光ファイバー技術とデジタル通信の組み合わせは、国際通信に革命をもたらしました。光ファイバーケーブルは、髪の毛ほどの細さで、電話会話から大量のデータまで、膨大な情報を高速に伝送できます。

デジタル通信では、音声やデータがデジタル信号に変換され、0と1のビットで表されます。このデジタル信号が光ファイバーを通って高速で伝わり、受信側で再び音声や画像などのアナログ信号に変換されるのです。

国際電話はどうつながる?

では、実際に国際電話をかけると、どのようなプロセスを経て相手につながるのでしょうか?

(1)国際電話番号の仕組み
国際電話をかけるには、まず国番号を知る必要があります。国番号は、国や地域ごとに割り当てられた番号で、国際電話をかける際に最初にダイヤルします。例えば、アメリカは1、日本は81、イギリスは44となります。

国番号の後に、相手先の電話番号をダイヤルします。電話番号は、国によって桁数や形式が異なります。

(2)国際電話がつながるまで
国際電話をかけると、まずは国内の電話網に接続されます。その後、国際電話専用の交換機に接続され、国番号に基づいて相手の国へと信号が送られます。

相手の国では、同様の交換機を通して信号が受信され、そこから国内の電話網を通じて相手先に電話がかかります。

海底ケーブルや衛星通信に加え、複雑な交換ネットワークとルーティングによって、国際電話は相手につながるのです。

(3)VoIP技術の影響
近年、インターネット回線を使って音声通話を行うVoIP (Voice over Internet Protocol) 技術の影響で、国際電話のかけ方にも変化が起きています。VoIPサービスを使えば、インターネット回線を通じて世界中どこでも低料金で通話ができるようになりました。

SkypeやWhatsAppなどのアプリは、このVoIP技術を使って国際通話を可能にしています。今や、従来の国際電話だけでなく、さまざまな選択肢があるのです。

インターネット時代の国際通信

現代では、国際通信の大半はインターネットデータのやりとりです。ウェブサイトの閲覧、動画ストリーミング、オンラインゲームなど、国境を越えたデータ通信が私たちの日常を支えています。

(1)パケット通信とルーター
インターネットでの国際通信は、パケット通信と呼ばれる方法で行われます。データは小さなパケット(小包)に分割され、ルーターと呼ばれる機器を通してネットワーク上を中継しながら目的地に向かいます。

ルーターは、データの宛先を確認し、最適なルートを計算してパケットを送り出します。国際通信では、ルーターが国境を越えてデータを中継していくのです。

(2)データセンターとハブ
国際通信のハブとなるのが、データセンターです。データセンターは、サーバーコンピュータが大量に設置された施設で、インターネット上のデータの中継や保存が行われます。

データセンターは、世界中に設置されており、国際通信の要所を担っています。インターネット企業は、大規模なデータセンターを世界各地に配置し、効率的なデータ転送を実現しています。

(3)ネットの中立性
インターネットは、オープンで中立なプラットフォームであることが理想とされてきました。しかし、国際通信では、さまざまな規制や制限がかかる場合があります。

ネットの中立性とは、すべてのデータが平等に扱われるべきという概念です。しかし、国際通信では、特定のデータが優先的に扱われたり、アクセスが制限されたりする場合があります。例えば、一部の国では、政治的な理由からインターネットの検閲や特定サイトへのアクセス制限が行われています。

携帯電話の国際ローミング

海外旅行中でも携帯電話が使える国際ローミングサービスは、現代の国際通信を象徴するサービスの一つです。

(1)国際ローミング協定
国際ローミングは、携帯電話ネットワーク間の協定によって成り立っています。携帯電話会社は、国際ローミング協定を結び、自社の顧客が海外でも携帯電話を使えるようにします。

海外に行くと、携帯電話は現地の携帯電話ネットワークに接続します。ネットワーク側は、電話機のSIMカードの情報を確認し、ローミングが許可されているかをチェックします。許可されていれば、現地のネットワークが一時的に接続を許可し、電話機を使用できるようになります。

(2)ローミング料金の仕組み
国際ローミングには、通常、追加料金がかかります。ローミング料金は、携帯電話会社と現地のネットワークプロバイダー間の取り決めによって決まります。国際電話と同様に、国によって料金は大きく異なります。

国際ローミングでは、通話料金だけでなく、データ通信料金にも注意が必要です。海外でデータローミングを使用すると、通常より高額な料金がかかる場合があるからです。そのため、海外に行く前にデータローミングの設定を確認したり、現地のSIMカードを購入したりするのが一般的です。

(3)eSIMと新しい潮流
最近では、eSIMと呼ばれる技術が国際ローミングの形を変えつつあります。eSIMは、物理的なSIMカードの代わりに、端末に組み込まれたデジタルSIMです。eSIM対応端末では、海外に行った際に現地のキャリアのプランをデジタルで購入し、すぐに利用できるようになります。物理的なSIMカードの交換が不要になるのです。

国際通信を支える暗号化技術

国際通信の安全性を確保する上で、暗号化技術は欠かせません。

(1)古典暗号から現代暗号へ
暗号の歴史は古代エジプトまで遡ります。暗号は、昔から機密情報を保護する手段として使われてきました。有名なのは、ジュリアス・シーザーの使用したシーザー暗号です。

現代暗号は、コンピュータの登場によって大きく進化しました。複雑な数学的アルゴリズムを使った暗号化技術が開発され、機密情報の保護や認証に使われるようになりました。

(2)SSL/TLSプロトコル
インターネットの安全な通信を支えているのが、SSL/TLSプロトコルです。これは、インターネット上でデータを暗号化し、安全に送受信するためのプロトコルです。

ウェブサイトのURLが「https」で始まるのを見たことがあるでしょう。この「s」は、SSL/TLSプロトコルが使われていることを示し、安全な通信であることを意味します。

(3)量子コンピューターと次世代暗号
しかし、コンピューティングの世界に新たな脅威が現れました。それは、量子コンピューターです。量子コンピューターは、従来のスーパーコンピューターでは太刀打ちできない計算能力を持ち、従来の暗号を破る可能性があります。

そのため、ポスト量子暗号と呼ばれる、量子コンピューターでも破られない暗号の開発が進められています。国際通信の安全性を確保するための研究が、今この瞬間も行われているのです。

国際通信の未来:5G、6G、そしてその先へ

国際通信は、テクノロジーの進化とともにさらに発展していくでしょう。

(1)5G通信
第5世代移動通信システム(5G)は、国際通信の未来を形作る重要な技術です。5Gは、高速・大容量・低遅延の通信を可能にし、国際通信の容量と速度を飛躍的に向上させます。5Gがもたらす国際通信の進化には、次のようなものがあります。

・8Kの高画質動画やVRコンテンツの国際配信
・クラウドコンピューティングのさらなる発展
・遠隔医療や遠隔教育などの進歩

(2)6G通信と衛星インターネット
さらにその先の未来、6G通信の時代になると、衛星インターネットの活用が期待されています。6Gでは、より広帯域で遅延の少ない通信が求められるようになり、衛星インターネットが重要な役割を果たすでしょう。

6G通信では、静止軌道や低軌道の衛星ネットワークが、地上での通信を補完する形で展開される可能性があります。これにより、地球上のどこにいても高速インターネットにアクセスできるようになるかもしれません。

(3)量子通信
さらに未来の通信技術として、量子通信が挙げられます。量子通信は、光子の特性を利用して情報を暗号化し、送信するものです。量子コンピューターでも解読できない安全な通信を実現できると期待されています。

量子通信の実用化にはまだ時間が必要ですが、将来的には安全で超高速な国際通信を可能にするかもしれません。

まとめ:国際通信の過去、現在、未来

いかがでしたでしょうか? 国際通信の歴史から未来の展望まで、広大な旅路を辿りました。

テクノロジーが進化しても、国際通信の根本的な目的は変わりません。それは、地球上の人々をつなぎ、コミュニケーションを促進することです。今や、国境を越えたつながりは私たちの日常生活に溶け込んでいます。

過去、人々はハトや信号火を使って遠方とコミュニケーションを取ろうとしました。今、私たちは瞬時に世界中の情報にアクセスし、ビデオ通話で海外の友人と笑い合っています。未来、どんなテクノロジーが私たちの国際通信をより豊かなものにしてくれるのでしょうか。

この記事が、皆さんの国際通信への好奇心を刺激し、テクノロジーが進化しても変わらない「つながり」の大切さを感じるきっかけになれば幸いです。

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