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好きなものを好きと言える強さ

好きなものを好きと言うには、強さが必要だと思う。今はだいぶマシになったけど、私は私の好きなものを誰かに話すという、ただそれだけのことも出来なかった。

中学生の頃。好きな芸能人を聞かれたとき、私は、何と言ったら嫌われない、正しい正解だろうか、といつも考えていた。否定されるのがこわくて、そもそも自分が何が好きなのかも、よくわからなくなっていた。みんなが「ジャニーズの○○くんが好き!と盛り上がる中で、「私はミッチーが好き!」と言っている先輩がいた。周りには同意する人は残念ながら一人もいなかったけれど、その先輩は好きと言い続けていた。否定されても好きを貫ける強さを、私はひそかに尊敬していた。

趣味も難しい。私は常に無難な「読書」と答えていたが、同じ会社の友人には「アニメ好き」がいた。会社には様々な年代の人がいるから、アニオタと公言するのは危険そうだなぁ、などと私は心配していたのだが、彼は、全く意に介さず堂々としていた。会話の中に面白かったアニメの話が出てくるし、ランチタイムには、アニメのアイドルの着せ替えゲームの画面をみせてくるくらいだ。ひいている人もいる一方で、彼の勧めるアニメにハマっていく人もいた。終始彼の姿勢は変わらず、好きなものは好き、ただそれだけだった。

そんな彼とその周りの人たちをみていて、あぁ、こんなもんなんだなぁと思った。ふっと力が抜けた感じがした。何かを好きって言っていいし、誰かの好きに対して私は好きじゃないと言ってもいい。それでも相手の存在を否定したことにはならない。すべての物事は、好きな人もいれば、嫌いな人もいる。いろいろな人がいて、知らない世界があるから、この世は面白い。

それからは、結構な勇気を出して、「好きなこと」「今ハマっていること」などを話すようになった。今のところ相手の反応はいたって普通で、「へぇ~、そうなんだ~」である。話が盛り上がることもあるし、そのまま終了することもある。それでいい。誰かに話したい、知ってほしい、共有したい、そんな風に思える人がいるのは素敵なことだ。まずはその気持ちを、大切にしよう。

好きなものを好きと言うには、強さが必要だ。相手との違いを認めること。自分の想いを信じること。世間の正しさに押しつぶされないこと。誰かの好きから、自分の世界が広がっていく。その連鎖を生み出せるようになりたい。

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