20240111 樋口一葉を読む

最近、樋口一葉を読んでいる。「たけくらべ」と「にごりえ」は、大学生の頃にも一度読み、その頃は私もとがっていたので「現代語訳で読むなどありえない」と考えていたのだが、現代語訳で読まなかったためか十分に解釈できなかったのだろうと、古文の勉強をそれなりに積んだ今では推測されるのだが、読んでもさっぱり良さがわからなかった。そして改めて読み、まあ確かに良い小説である。なかなかグッとくる、のだが、一方で掴みきったというような印象がなかった。しかし、続けて「十三夜」を読み、樋口一葉の「主題」が腑に落ちたような気がした。「十三夜」が一般にどう読まれているのかは知らないが、実のところ、「たけくらべ」と「幼なじみの恋」という主題を共有していると言えよう。そして、さらに一般化すれば、「にごりえ」も含めて、これは、世塵にまみれ汚れてしまった(これはつまりは成長であり、大人になることである。何に汚れるのか? 不幸に汚れるのだ)者の、取り返しのつかないあの頃の恋、汚れなき子供にしか持ちようのない密着した親しさのあったあの頃の恋、その恋の象徴する超俗的で純粋なあの頃そのものへの憧憬、だろう。そういった、私に共感しやすい主題が突如見いだされて、じんときた読書経験であった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?