7/20 コーヒーと哲学

宗教は往々人を酩酊させ官能と理性を麻痺させる点で酒に似ている。そうして、コーヒーの効果は官能を鋭敏にし洞察と認識を透明にする点でいくらか哲学に似ているとも考えられる。酒や宗教で人を殺すものは多いがコーヒーや哲学に酔うて犯罪をあえてするものはまれである。前者は信仰的主観的であるが、後者は懐疑的客観的だからかもしれない。
寺田寅彦「コーヒー哲学序説

コーヒーと哲学、なんと心惹かれる響きだろうか! しかしまあ、ここに煙草を加えてもいいだろうが、経験から言って、これらに酔う者は自らを殺しかねない。しらふで生きなければならない。

人生はしらふでやってゆかなければだめだ。
大江健三郎『万延元年のフットボール

しかし寺田寅彦は良い文章を書くな。

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