20230525 『学校へ行けなかった私が「あの花」「ここさけ」を書くまで』を読む

岡田麿里『学校へ行けなかった私が「あの花」「ここさけ」を書くまで』を読んだ。高校生向けの読者案内的な小冊子で存在を知り読んだ。この前に読んだ『栞と嘘の季節』もその冊子に載っていて、積んでいたのを思い出し掘り出して読んだのだったが、どちらも、時間を忘れて読める魅力があって、よく選ばれているものだなぁと感じる。

この、岡田麿里の本は、シナリオライターの自伝として読ませる程度に劇的であり、感動的でもあるのだが、良い話になりきらないところが、良い。

現実なんて、そんなにかっこいい台詞にもシーンにもならない。

つまりは、結構意図的に、反シナリオ的に構成された自伝なのだろう。感動的なエピソードも、決定的なエピソードにはならない。筆者に影響を与えたらしい人物たちも、どこかでスケールダウンされる。例えば、シナリオ的には明らかに重要人物たる恩師「下谷さん」について、「ここまでよくしてもらっておきながら、私は今、下谷さんの性格を思い出すことができない。良い先生だったのは間違いないが、顔もいまいちうろ覚えだ」。恩人的な監督である「アミノさん」について、「現在では、あの頃のようにアミノさんを神格化してはいない」。この、反シナリオ的、反キャラクター的な感覚が、彼女の才能の一端を担っているのだろうと感じる。

そういうわけで、今年の夏は「あの花」を見返そうと思うのであった。

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