10/2 恋と戦争

夏目漱石『こころ』の遺書を読んでいると、恋を戦争(例えば「要塞」や「騙し討ち」)の比喩で語るその恋の捉え方がおもしろいのだが、思い返してみれば日本史で習ったこの時代の戦争は、国を人物として描く風刺画に表現されているように、あるいは人格的な国家同士の、自我と自我のぶつかり合いとして想像されてはいなかったか。もしかしたら漱石は、恋と戦争に共通する本質として、自我と自我の衝突を見ていたのかもしれない。

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