雑録(写真はりんご)
最近の疑問は、結局教養なんて必要なのか?である。
大学に来て、勉強に対する価値観が結構変わった。
特に、周りとの意識の違い。俺は少なくとも勉強・学問をするつもりで大学に来た。けれど、周りは違うようである。就職のために、来たという(もちろん全員ではない)。実は、母親もその目的で俺の大学の学費を払ってくれている。
変な話だ。就きたい職業から逆算して、学歴を決めていく。それができる現代のシステムは、パイプラインシステムと呼ばれているらしい。パイプラインのように、各々の人生の道が分かれている様子を言っている。小学校の頃、ライフプランなんかを書いたが、それはこのことを象徴していると思う。
勉強は、人生の選択肢を増やすためにするのだという意見はそろそろみんな聞き飽きたと思う。2000年代の時点で、島田紳助が地上波で発言していた気がする。
問題は、勉強それ自体に重きを置く生き方は、もうとっくに望まれていないということである。あるいは、勉強が手段化しているということである。
理系のことを先に述べよう。研究がお金になるイメージが強いのが理系である。コロナワクチンとか。理学部に人数が少なく、工学部に多いことが、そのことを象徴していると思う。
理学部というのは、「数理的真理探求」の学部である。文系で言うならば、「精神的真理探求」の文学部が対応する。一方、「便利なモノを作って金を得る」工学部には、「わかりやすく社会や心理を解説する本を書いて金にする」社会学部が対応する。理念と実践の対立があることが直感される。
読者は、ここで真理探求の肩身の狭さに着目してほしい。そこに身を置く人たちは、教育でしか食べていくことができない。実際、大学教授というのは研究者と教授を兼任する形になっている。
ここまでを伏線として、次に学校の話をしたい。勘の良い方はお気づきかもしれないが、主は、真理探究がしたい!でも、時間も金もねぇ!という人間なのである。
学校は、英語でschool、ドイツ語でSchule、フランス語でecole。
これらの語源は、ギリシア語のσχολή(スコレー)にある。
σχολήは「余暇」という意味で、古代ギリシアにおいて学問ができるのは、奴隷を持つ富裕層だけであったことから、こういったことが起きている。
現代では、法律で「子どもに教育を受けさせる義務」というのが、国民に課せられている。これはフランスで初めて導入された法である。
フランス革命が、まさにそのフランスで起こったというのは、偶然でもなんでもない。教育の研究をするなら、まずフランスの歴史を見よと言われるほどの思想家たちを排出しているからだ。社会契約論のルソーや公教育のコンドルセが代表的である。
簡単に言えば、奴隷やめようね、ってやつ。
けれど、今の日本の国民は見方を変えれば、国の奴隷である。子どもの教育のための奴隷とも、一部では言えるからである(困っている人に回される税金もちろんある)。結局、スコレーが語源になっているのは、全然現代でも正しい。大人たちが子どもたち全員のスコレー(スクール)を労働によって作っているのである。
こう考えると、真理探究、あるいは役に立たないが面白い学問をやることは、富裕層しかできなかった時代から、子どもたち、あるいは労働時間外の大人だけができるものになっている。
大学では、頭のいい教授たちが日々当たり前のように奴隷のいた富裕層たちの書いた書物を必死に研究なさっている。そして、それがとてつもなく面白かったりする。カントやヘーゲルの時代がそうだが、知識人のエリートに時間と場所を与えて学問をさせようとした時代がある。一部の天才に真理探究の行く末を賭けてみようというわけである。彼らの書物に触れてみれば、一生かけても彼らの全盛期の深い思考へは到達できないことをいやにでも悟ってしまうほどである。
子どもが勉強していれば偉いというのは、税金をちゃんと使ってくれてありがとう、の言い換えである。仕事につけば、学校でするような勉強というのはもはや褒められるものではない。褒められるのは唯一、その仕事の業績を伸ばすための勉強である。大人になっても勉強することを誇る人がいるが、それはご自身がだいぶ恵まれているということを自覚した方がいい。
結論としては、真理探求、あるいは金にならない学び、というのをやるには、相当な覚悟がいるということである。娯楽のほうが好きだと言うなら、そっちにいって何ら問題はない。結局、一般人は面白さ目当てでしか学問には励めない。もはや娯楽の一種である。
ファストフード。役に立つ教養。流行。
そういう役に立つものや刺激的なものを、ひたすらに消費していく社会だということは、否定のしようがない。ただ、自分の気持ちとしては、もう少し学問をしていようと思う。ファストにではなく、ゆっくりと時間を使って噛み砕いて。
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