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 成人が20から18に引き下げられてはや2年、成人式というもの自体の概念も揺らいでしまったため、代替するものして20歳の集いなるものが開催されている。例年その類の式典は1月に行われるため、2023年が1回目で今年2024年が2回目となる。個人的には第1回目の方がパイオニア感があって好きなのだが、そればかりはどうしようもないことなので受け入れる他ない。成人の日という祝日は正式には1月8日であるが、山梨のような地方では、県外に出ている人が多いため、式典はその前日の7日に開催される。その都合で今回はかなり長い日数、地元に滞在することとなった。長い日数生活拠点を離れるということは、日頃の営みが停止するというわけであり、どうも調子が狂う。いつもよりだいぶ広い部屋やデスク、美味しい食事など快適さは申し分無い。自然にこれでもかというほど囲まれているし、水も美味しい。しかし、その快適さが良い方向に作用するわけでは無いということも改めて実感した。どうしても心のコンパスは心地よい方向を向きたがるし、何かと誘惑も満載である。自分の甘えのせいでは無いかと言われればその通りなのではあるが、このままではダメだと思いながら画面右上の数字だけが驚異的なスピードで変化していく。
 しかし、そんな自分の現状に打ちひしがれている時間こそ何も生み出さないのでは無いかという結論に3日目にして脳内で全会一致が出たので、ここでしか出来ないことを考えることにした。何もしてないのに内省ばかりしているという行為は実に謎めいている。幸いなことに普段仕事で家にいることが少ない父も実家に滞在していた。そういった経緯から、普段父のレコーディングやアレンジ・ミックスを担当しているエンジニアのプライベートスタジオを紹介してもらった。スタジオの中に入ると、自分の顔を鏡面で見ずとも、笑みが溢れているのがわかるぐらい、私にとっての絶景が広がっていた。随所に展開されている楽器や機材の数々、音楽に携わる人ならば誰もが知っているメーカーやブランドの物ばかりである。中でも私が一番目を奪われたのはUniversal Audioのアウトボードである。現在はソフトウェアプラグインで数万で購入できるものが販売されているが、実機は数十万円は下らない。それが自分の手の届くところに設置されているという状況は想像だけで心躍るものである。生楽器からソフトウェアプラグインまで私が手に入れたいと思っているもののほとんがそこにはあり、いつまででもこの空間にいたいとさえ感じた。非常に物腰柔らかく話やすいエンジニアの方で、私が投げかけた質問には何でも答えてくれた。今日はその内容を忘れないようにここに書き残しておきたい。

良い音作りに大事なこと

 まずは確実なゴールを作ること。自分がどんな音を聞いた時に心地よいと感じるのか、どの聞こえ方が自分にとっての”クオリティ”なのか、それらを確実に定義付けすることが必要である。それが定まっていることで初めてアプローチを考えることができる。その話を聞いた時に私は初めて形の見えない山を登り続けていたことに気がついた。というかそもそも山など存在していなかったというべきなのかもしれない。この考え方は何をする際にも大事な考え方だ。そしてその目標について真摯に研究を続ける必要がある。
 今日それを聞けたことで本当に行ってよかったと思った。2024年の自分の制作の励みになった。今年はもっと慎重に時間をかけて作品を仕上げていきます。



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