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音楽は戻らないよ、前に進むだけ

数年前、ドラマ「カルテット」が好きで、
珍しくリアルタイムで視聴していた。
おもしろいし、ファッションやインテリアも可愛くて、ずっと見ていたかった。

Amazonプライムで発見して久々に見たくなり、
改めて見たら、名言だらけだった。

授乳中などにやむなく音を消し、
字幕で見ると、
わたしが視覚優位なのか、
ふだん聞き逃しがちなセリフも
すごく頭に入ってくる。

出産してから改めてこのドラマを見て、
印象に残ったのは家森の元妻、茶馬子。

「話の通じる順番で言ったら、猫、カブトムシ、妻」
元妻の理解できない行動を並べ立てる家森に、すずめは
「家森さん、ちょっと自分の考えに左右されすぎなんじゃないですか?」と言う。
その言葉にまず、ドキリとする。

家森曰く、冬でもサンダルを履いていて、常にスマホの画面が割れていて、ケーキ入ってる箱を渡したら普通に、縦に持つという茶馬子。

で、いったいどんなひとなんだ…と思っていると。
登場した茶馬子は、たしかに冬でもサンダルを履いていたけれど。
家森と結婚を続けていけないと思った理由を語る彼女は、至極真っ当なのである。
すくなくともわたしからはそう見える。

幼い息子が風邪をひいたときの対応について。
子どもが産まれても家森は定職に就かず、
保育園の費用すらままならないなか、
いまだに自分だけの夢を追っていたこと。
挙げ句の果てに、自分と結婚していなければ、という想像をされ、口に出されたこと。

息子と久々に関わる家森は息子にすごく優しく、素敵なパパに見える。
でも。
「ちょっと子どもと一緒におるだけで良いパパと思うの錯覚やで」
茶馬子のこのひとことに、どれだけ茶馬子がひとりで悩みながら子育てのほとんどを担い、奮闘してきたかが垣間見える。
そして、家森は家森で、脅されても茶馬子の居場所を秘密にするなど、彼のやり方で今でも護っているのである。

そして、もうひとつ。
いちばん印象に残ったのがすずめのセリフ。
真紀がある隠してきた過去を告白し、苦しい表情を見せたときの、すずめの言葉。

「真紀さんは奏者でしょ?
音楽は戻らないよ
前に進むだけだよ
心が動いたら前に進む
人って過去から前に進む」

すずめ自身にも、隠してきた過去があった。
それを抱えながら許しあって、
ただ目の前にいる人のことを自分で見て感じて、そして好きになって、前に進もうとするすずめや真紀が、すごく美しい。

過去の失敗に囚われがちなわたし自身にも、
元気をくれた。
そして、過去の失敗を抱えながら、
そこから学びながら、前を向くこと、
恐れないで人を好きになっていくことが、
人生の醍醐味かもしれないって思う。

「人を好きになることって、絶対裏切らないから」
坂元裕二さん、すごいな。



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