見出し画像

【映画日記06】「悪い奴ほどよく眠る」

あらすじ(※ネタバレあり)

大手ゼネコンの汚職事件の裏で殺された父の仇を打つため、ゼネコン総裁の秘書となった男が、秘密裡に汚職関係者を次々と追い詰めていくが、自分の正体がばれたことをきっかけに追い詰められ、殺されてしまう。

実は……

少しずれるが、実はつい最近アニメ「推しの子」を見始めた。
「アイドルである母を殺された子供(というか、子供に転生したファン)が、犯人を突き止めて復讐するために、芸能界に入り込む」
というのがストーリーなのだが、

「そういえば、某配信サイトの見出しで、似たようなの見たことがあったような……あっ! 『悪い奴ほどよく眠る』だ!」

というわけで、ストーリーの構造を比較するのもありかなと思って見ることにした。
実際、「親を殺された子が、復讐のために敵地に入り込み、秘密裡に工作を企む」という点では、かなりストーリーの構造は似ているだろう。

気づいたこと

この映画を初見で見て、気付けることはそう多くはなかった。というか途中から話に没頭していてそれどころではなかった。
数少ない気付きは以下の通りだ。

・冒頭の結婚式のシーン。
ウェディングケーキ入刀の華々しい音楽が流れてくるなか、あるビルを象ったケーキが登場する。ビルの部屋の1つにバラが一本刺してあるのだが、それは汚職事件で投身自殺したある関係者の部屋なのだ。
ここの箇所は華々しい音楽と、汚職事件を示唆するケーキにうろたえる汚職関係者達の姿を合わせることで、悲壮感を増やす、という手法が使われている。

・佳子と兄の存在がカセとなる
この物語の主人公は、ゼネコン総裁の秘書・西という男だ。西は、総裁の懐に入り込んで汚職事件の証拠を暴こうとするのだが、秘書としての立場をより確実に堅実なものとするために、総裁の娘・佳子と結婚を選んだ。ファーストシーンは、その佳子との結婚式のシーンから始まるのである。
そして、この佳子という人物が、その後の西の行動のカセとなる。西は、昼間のうちは普通の秘書として大人しくしているのだが、夜になると汚職事件の解明のために行動をし始める。しかし、妻・佳子とその兄が、夜になってもなかなか家に帰ってこない西のことを訝しむようになる。とりわけ、兄の方は妹想いであるために、西への監視の目がかなり厳しい。佳子は足が不自由な身でもあり、そんな彼女を労わろうとするのは、兄としてごく自然なことなのだが、それゆえに西は、自身の野望のために行動することに葛藤を覚えていくようになる。
佳子の性格がとても良いところも、余計に西の葛藤を助長する。いかにもな箱入り娘で、社会の汚れにさらされていない無垢さ・純真さの塊のような佳子だからこそ、そんな彼女に隠れて、後ろ暗いことをやっている自分に、西は葛藤を覚えていくようになるのだ。こういった人物造形にも学ぶべき点はあるだろう。

・父親の嘘に騙される佳子
終盤、西は汚職事件を暴露しようとしていることがばれてしまい、姿を消す。総裁は裏切り者の西を追い詰めようと、彼の居場所を見つけるのに躍起になる。
西は、ある廃工場の地下に身を隠していたのだが、ある日、佳子と密会することになる。佳子に、総裁、すなわち彼女の父親が汚職事件の主犯であることを打ち明け、自分達が互いに愛し合っていることを確かめ、別れる。
家に帰ってきた佳子は、父親である総裁に「西と会ってきたんだな?」と勘繰られる。佳子は、夫・西のために口を閉ざそうとするのだが、兄が猟銃を持って西を殺しに行った、という総裁の嘘にまんまとだまされて、西の居場所を吐いてしまう。観客はこのシーンを見た時、総裁が嘘をついていることにはすぐに気づくのだが、肝心の佳子が気づいていない。もどかしさを覚えるシーンだ。

などなど……。もう少し気づいたことがあった気もするが、これくらいにしておこう。


おわりに

「推しの子」がきっかけで見始めた「悪い奴ほどよく眠る」だが、見てよかった。本当に面白い映画だった。やはり名作と謳われるだけある。単に面白いだけじゃなく、重厚だ。
今後、「推しの子」がどう展開していくのかはわからない。同じストーリーの構造を持っている以上、最後は、この映画と同じような結末を辿るのか、それともジャンプらしくハッピーエンドで終わるのかは、見ものである。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?